夢見るババアの雑談室

たまに読んだ本や観た映画やドラマの感想も入ります
ほぼ身辺雑記です

「闇草紙」ー鬼を燃やすー

2024-06-07 14:08:02 | 自作の小説

かつて寺には鬼が居たのだと言う

それは昔むかしのこと

眠らない子供相手にどうしてそんな怖い話を聞かせたものか

話してくれたのは誰だったか

添い寝してくれて

ーーーーーーーーーーーーーーーー

それはそれはな 山奥にあった村なのじゃよ

もうせんに住む者もいなくなり この世から消え去った村

米がとれない 途中で腐る

麦も虫に食われて

何も育たない

雨も長いこと降らぬ

食べるモノなく飢えて死ぬ者が多かった

飢饉・・・

もう弔う元気ある者もおらず そこいらに死人が転がっておる

村はずれの寺のお坊様は 死体を拾っては寺の裏庭に埋めて読経する

自分とてろくに食べてはおられぬだろうに

えらいお坊様だと村人は皆感謝しておった

有難いことだと

少しずつ野菜もできるようになり 麦も米も

長い飢えの苦しみが人々から遠ざかっていく

 

ところがな ところがじゃよ

小さな子供や赤ん坊がいなくなることが続いた

神隠し・・・

子供が消えた親がそういうことで納得できようこともなく

案じたお坊様も見回りなどしておられたと

 

それでも子供は消える

村人たちは とうとう気づく

安心して子供がついていく人間

疑うことなく

村を歩いていても誰も不思議に思わないのは

それは

 

村人たちは誰も まさかと思った

信じたくはなかったのだ

 

しかし 

村人たちは聞いてしまった

闇に沈む暗い暗いお堂の中から微かに聞こえる声 言葉

物音

「うまし うまし」

美味じゃ美味じゃ 南無・・・・・

お坊様の声だった

 

お堂の戸を開けて松明を掲げた村人たちは見た

お坊様の口には赤ん坊のものらしき小さな手

 

 

飢饉の折に お坊様はひもじい気持ちに負けて

弔うために運んできた死体に口をつけた

それから

子供ほど美味しいことを知ってしまった

新しい死体ほど美味しい

そうして生きているものは その肉は臭くもなくただうまいのだと

 

飢饉が終わっても・・・お坊様はその味が忘れられず

食べ頃の子供を捜してさらってくるようになった

村に赤ん坊が生まれると この子はどれほど美味しかろうと

その気持ちを抑えられず

 

ただどれだけいとしんで大事に食べても 食べ続けていれば無くなってしまう

もっと食べたい もっと食べたい

 

うまいのじゃ うまいのじゃ

 

恥ずかしげもなく繰り返すお坊様

その姿は村人たちには鬼に見えた

お坊様の姿を借りた鬼だと

村人たちは持っていた松明でお堂に火をつけた

 

そうして村人たちは この子喰らいの鬼がいた村を捨てて出ていった

 

ただ言い伝えは残る

遅くまでお外にいてはいけないよ 鬼が来るよ

夜になったら大きな声で泣いてはいけないよ

鬼に食べられてしまうよ

恐ろしい恐ろしい鬼が来るのだよ

 

だから おやすみ

早く 早くね

いつまでも起きていてはいけないよ

 

ーーーーーーーーーーー

 

添い寝語りの物語は 細かな部分は繰り返されるたびに違うけれど

村の中の道を子供を求めて彷徨うお坊様の後ろ姿が目に浮かぶ

少し背中をかがめて いつでも見つけた子供に声をかけられるようにして

小さな子供は お坊様の衣の中に隠されて

「お前は愛〈う〉いね 愛〈う〉いね」

かぷり かぷり かじかじ

 

お堂を燃やされてお坊様は死んだのかしら

鬼は本当にいなくなったのかしら

 

 

 

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週半ば

2024-06-05 16:04:07 | 子供のこと身辺雑記

庭の中でも薔薇と紫陽花と咲き揃う好きな一角です

結構 次から次に咲いてくれる赤い薔薇

 

 

 

どくだみの花

 

南天の実は赤いけれど 花は白い・・・

 

南瓜の花

葉で隠れておりますが^^;

 

鉢植え時代は紫色の花だった紫陽花

 

紫陽花は家の中にも飾っています

この季節限りの贅沢です

 

午前中は施設でお世話いただいている姑を予約した介護用タクシーにて病院まで送り迎え

快晴で気持ち良い朝でありました

 

姑は会うたびに小さくなっていくような気がします

以前は車椅子は窮屈じゃないかと思えるようであったのに・・・・

今では車椅子の中にこじんまり・・・・・

施設の玄関からガラスのドアを通してエレベーターの中がテレビで見えます

 

いつもお願いしている介護用タクシーの運転手さんも ほぼ私と同世代

将来いつまで歩けるかな 運転できるかなーなんてね 

寂しい話題になることも多いです

 

 

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堂場瞬一著「ブラッドマーク」 〈講談社文庫〉

2024-06-04 17:47:54 | 本と雑誌

 

 

人生半ばを過ぎた探偵はこの先のことも少しは考える

 

体力も落ちた 若い頃のようには走れない

それでも事件はやってくる

 

大好きな野球からみの仕事

ある選手をチームに入れるべきか否かの調査

けれどその調査中 誘拐事件が起きる

そして身代金を届ける役目に

 

さらわれた子供リリアン

その子供と調査中の選手との関係

人には誰しも過去がある

探偵にも

 

逆恨みされることも多々ある

それでも探偵は仕事を続けていくのだろう

おそらくは

 

 

 

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樋田毅〈ひだ つよし〉著「彼は早稲田で死んだ」〈文春文庫〉

2024-06-02 20:42:16 | 本と雑誌

 

 

1972年早稲田大学の中で革マル派のリンチに遭い死んだ学生がいる

著者は当時 この亡くなった学生と同じ早稲田大学の学生だった

 

やがて社会人となり記者となり

それから心にかかっていた事を本にされてきた

「記者襲撃赤報隊事件30年目の真実」

「最後の社主朝日新聞が秘封した御影の令嬢へのレクイエム」

学生運動のあれこれが新聞を賑わせた時代があった

当時子供だった私は どうして勉強する為に入ったはずの大学で勉強もせずに

何を革命ごっことか闘争に明け暮れている

果ては陰湿で愚かなリンチ殺人もあり

一体何をやっているんだー

そのように思っていた

 

これはその荒れた時代に大学生であった著者が自分の体験と 当時の事件に関わった人々にも話を聞いて書き上げた本

何故殺したのか

自分たちと違う考えの人間を敵と見做し 攻撃対象とし襲い掛かる

暴力的な人間

理想の社会を作るんだ

そういう考えは しかし偏った思想から未熟で悲惨な事件も起こす

革命に犠牲はつきものだ

邪魔する人間は敵だ

そういう時代があり 無駄に まったく無駄に奪われた命がある

己たちの危険思想に気づけず 偏った思想のまま生きている人間もいる

正義は人により異なるかもしれないが

歪んだ思想にとらわれたまま生き続けている人間もいる

 

リンチにより殺された青年には・・・殺されるべき理由など何ひとつなかった

 

 

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柚木裕子著「月下のサクラ」 〈徳間文庫〉

2024-06-02 11:02:19 | 本と雑誌

 

 

希望する部署への試験に失敗

しかし失格と言い放った黒崎は森口泉を彼女が希望する部署へ入れてくれた

泉の中に何を見てくれたのか

かつて死んだ友人がいる

泉は自身が信じる正義のもと 仕事をする

捜査支援分析センター 配属されて早々署内で事件が持ち上がる

金庫の金が盗まれている

そうして疑わしい人物が浮かび上がる

だがーその人物は死んだ

公安がその死体を発見している

 

公安が関わる死

泉には苦い思い出がある

黒崎は他の事にも気づいていた

怪情報の為に謹慎を命じられた黒崎

黒崎が依頼していた情報を泉が受け取りに行く

 

息子の罪を隠すために巨額の金が必要となった父親がいる

公安が仕留めたかった一味

署内の金庫の金を必要とした男と直接話そうとした泉は襲われて・・・・・

 

泉を救う為に一致団結する刑事たち

 

解説は文芸評論家の西上心太さん

 

シリーズ前作「朽ちないサクラ」は杉咲花さん主演で映画化され2024年6月21日全国公開だそうです

 

 

 

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中山七里著「能面検事の奮迅」 〈光文社文庫〉

2024-06-01 19:24:41 | 本と雑誌

 

 

過去の失敗から 感情を見せなくなった検事がいる

誰に対しても態度を変えず ただ真実を見極めようとする

不破検事・・・おかげで検察事務官の惣領美晴は・・・とてもとても仕事がしにくい

不破検事の真意が掴めない

何を考えているのか まったく感情は読めず

 

不破は疑惑を持たれた高峰検事も取り調べることになるが

不破独自の視点で高峰の過去へとたどり着く

ある場所を使わせたくなかった・・・・・それゆえの・・・・・

妹のことを案じながら死んだ娘

愚かで未熟な若者たちは彼らなりに守ろうとした

支えようとした

 

犯した罪は裁かれねばならない

だがしかし

 

不破の彼なりのはからい温情に岬氏のみが気づいていた

 

解説はミステリ評論家の千街晶之さん

 

 

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庭から

2024-06-01 14:04:13 | 子供のこと身辺雑記

残念ながら我が家の庭の土は 紫陽花の紫色は出ないようです

鉢植えの時には紫色だった品種も・・・庭植えにするとピンク系に

 

でも まあ薔薇とのバランスもいいから いいか^^;

本当は紫陽花の紫色が好きなのですが こればっかりはねえ

青い色が咲く紫陽花用の土を買うとか 土の性質を変えることも試してみようかな

 

薔薇達が再び咲き始めました

四季咲きとは よく言ったもの

 

柘榴のお花さん

 

今年は葡萄がやたらと実をつけてくれています

油断すると 他の木の枝にからまったりしているので

できるものは方向転換させています

 

 

 

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「闇草紙」ー縛めの糸ー

2024-05-28 20:57:16 | 自作の小説

とろとろ 眠りは誘う

ーそんなに眠いなら もう潔く眠ってしまえよーと誘ってくる

眠りに身を任せようか・・・このまま・・・

いつしか瞼は落ちて・・・・・夢を視〈み〉ている

 

うかうかと夢を見る

これは現〈うつつ〉か それとも・・・・・・

 

小癪な女がいたものだ たかが娘っ子

甘く口説いてやっても意に添わぬ

この女の父親も気にいらぬ男であったよ

躓かぬうちに邪魔な石は取り除くに限る

潰してやったわ

 

頼る者もいない娘っこ

どうとでもできると思ったに

 

甘々帝までもが 娘っこの美しさを耳にし 入内させよなどと画策を

 

面倒な

帝には我が娘をあてがっているというに

何をしても言うことを聞かぬゆえ

悪い噂を立ててやったわ

あれは人を呪っておると

そういう忌むべき者よと

 

それでも我が物とはならぬと頑な女はな

自ら死んだそうな

 

主〈あるじ〉亡き屋敷は見る影もない荒廃ぶり

余興に嘲笑ってやろうと見物に来てみた

 

ざまあみろ 言うことを聞かぬからだ

この儂に逆らうなどと

 

今頃は地獄にでもおちていようか

牛馬に踏まれておればよい

 

牛車を降りて外からボロ屋敷を眺めてやった

きらり 何かが触れたか・・・・・

何が 起きた?

 

これは何の香だろう

甘やかな不思議な香り 漂ってくる

何も見えない

昏い 昏い

 

今の今まで明るかったはずだ

面妖な

 

「明かりをお持ちします」

この声は何処からだ

 

確かに明るくなった

 

儂はいつ建物の中に入った

ここは誰の屋敷だ

御簾の奥にぼんやりと ぼんやりと 人らしき影

 

「おいでなさいまし お待ちしておりました」

 

いやいや かような女人は知らぬ 知らぬ

歌を贈ったこともないぞ

ぴいいい。。。。んと 不思議な音が聞こえる

指に何か絡んでいる

これは 細い細い これは

 

「お一人では お寂しかろうと少し集めてみましたの」

 

裾から何かが上ってきている びっしりと? びっしりと

この小さなモノは 小さなモノたちは・・・・・

「そのモノたちは大変飢えております 生き餌を待っておりましたの

悪しき血でも 血は血 肉は肉」

 

御簾をあげて女が姿を現す

それは美しい しかし額には2本の角ある異形の者

 

体が蜘蛛に覆われていく

小さいが無数の蜘蛛たち

わらわらと登ってくる

体が動かぬ 動けぬ

透明の糸が全身に絡んで 縛っている

た 助けてくれ 助けてくれ

 

気味が悪い この蜘蛛たちをどうにかしてくれ

目ざわりだ 邪魔だ

 

「姫様の父君を殺し 姫様を死においやったそちらこそ 邪魔者

消えていただきます」

異形の女は冷たく笑って姿を消した

 

後には・・・波のように押し寄せる小さな蜘蛛たち

ああ もう顎までも登ってきた

頬にも目にも

ああ目の中にも蜘蛛が

 

どうしてこうなった

何故儂が 儂が

これは夢か それとも

 

 

 

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台風1号発生とか

2024-05-26 19:02:24 | 子供のこと身辺雑記

長男が仕事帰りに買ってきてくれたお弁当

 

網野名物ばらずし

とり松さんの商品とか

 

説明書きに 京都・丹後地方の一部にのみ古くから伝わる全国でもここだけの独特のおすしですーとあります

鯖をおぼろとし 数々の具と共に当地方でまつぶたと呼ぶ長方形の木筒に段々に重ねて作り木べらで四角に切って切り分けます

ーなのだとか

具だくさんでね 何処か懐かしい味がして とても美味しかったです

長男は仕事で京都へ行くと 時々お菓子とかお惣菜とか「目についたから」と 買ってきてくれます

 

トイレの電球がつかなくなったので ついでに点滅怪しい〈笑〉洗面所の電球とまとめて買いに行ったら・・・何故かご近所の電気屋さんのレジ横で売っていた

「いなり餅」

味付きおあげにお餅を入れて電子レンジで600W1分加熱で出来上がり

お店の方いわく「おいしいですよ よく売れています」

ついつい電球と一緒に買ってしまった♬

長男にも押し付けてみた

炭水化物かぶりの夕飯

 

 

台風が来るから枇杷はとっといた方がいいーと 午前中に電話を寄こした夫は しつこく夕方 枇杷とったかーと念押しの電話を寄こした

袋かけをした夫 気になっているらしい

洗濯ものを取り入れたあと 袋を外してもいできた

一部は仏壇のお供えに

亡き母も好きだったので

生前 枇杷が熟れ始めると 父は味見をして確認してから 母に食べるようにと幾つかもいできてましたっけ

よくケンカもする夫婦でしたが 父は母が美味しいと言って食べる姿を見るのが好きなのでした

 

雛祭りという品種の紫陽花です

外のふち飾りの赤色がどこか山アジサイの「紅」を思わせる品種です

 

シルクサファイアという品種の紫陽花です

咲き始めは白で しだいに優しい桃色になります

 

品種名を忘れてしまった紫陽花

ちょっとだけ色がついてきました

蕾を持ってから 色合い変化を毎日楽しみに眺めています

 

紫陽花の星てまり

家の中でも眺めたくて 花枝を切って花瓶にさしています

 

まだお天気が良いうちにと 毛布や枕など寝具類を洗濯

外は少し風が強くなってきています

 

 

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堂場瞬一著「罪の年輪 ラストライン6」 〈文春文庫〉

2024-05-25 12:35:34 | 本と雑誌

 

 

50代半ばとなった岩倉は 後輩指導の為にも捜査一課に戻ってこい・・・

などと言われ悩む

現在の立川の街も気に入っているのだ

 

そうした中 起きた事件は 被害者も加害者も高齢者というもの

自首してきた三嶋の言葉から 岩倉は彼らの学生時代に起きた事件に思い至るが

 

どうにもすっきりしない気持ちで事件に取り組むこととなる

己の今後の人生

付き合っている女

 

自分はどうしたいのか

どう生きていきたいのか

何才になろうとも人は生き方に思い悩むのだ

 

やがて被害者の長年の許されぬ性癖が明らかとなり

 

家族にせめての安心感を与えんがために・・・・・存在を消してやりたかった

孫娘までもが その毒牙にかからぬように

 

教職にある者がしてはならぬこと

教師は・・・生徒の信頼を裏切る行為をしてはならない

 

「家族のために」

貧乏くじをひかされたような人生の中でも懸命に生きた男がいる

残り短い命なら せめて安心を遺してやりたいと思ったか

 

事件解決後

岩倉は捜査一課に戻る選択をした

まだまだ警察で生きていく

 

 

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玄関近くの庭から

2024-05-24 15:04:15 | 子供のこと身辺雑記

 

そろそろおしまいの紫陽花のシャンデリア

右端の葉っぱだけになっているのは 花が終わった紫陽花の空海

これは紫色の変化がたのしい品種でした

 

ずうっと玄関前に置いていた紫陽花はフェアリーアイという品種です

 

まだまだ蕾をたくさん持っているカーネーションは 母の日に長男がくれたもの

 

なんかごちゃ混ぜになっている玄関前の花壇

 

姫林檎「長寿紅」の足元には球根を植えています

だたいま百合が育ち中~

薔薇のバレンシアも蕾を持っているから じきに薔薇と百合の競演も楽しめそうです

 

花があればいいーと 開き直って 好き勝手にいけているお花さん

基本も決まり事もあったものじゃない・笑

 

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「闇草紙」ー蜘蛛ー

2024-05-23 11:29:15 | 自作の小説

山歩きの途中で道に迷って おまけに雨も降りだして最悪な気持ちでとぼとぼ元気なく歩いていたら 頭を枝に打ち付けた

首を振って手で枝を払ったら・・・その先に家が見えた

 

ぼうぼうの雑草が生えた庭

声をかけてみたが返事は無い

誰もいないのか・・・それとも空き家なのか

軒先を借りて雨宿りすることにした

雨は止みそうにない

足が疲れていて 大きな石の上に腰掛ける

何やらうとうと・・・眠気に襲われる

雨があがるまで寝て過ごすか

 

こくん 首が落ちてくる

ああ こんな寝方をしたら あとで首が痛いぞ・・・などと思った

 

「もしもし」

声が聞こえる

「もしもし あなた こんなところで眠っていては危ないですよ」

声は言う

「この山は熊も出るのです どうぞ おあがりなさいまし」

声は続けた

「どうか 家の中でお休みになってくださいまし 何もございませんが」

声に誘われ 家の中へ

 

布団が敷かれていた

「ここでゆっくりなさってくださいましな」

 

それを不思議とも思わず遠慮なく横になる

 

 

ところが 横になってみれば 疲れているはずなのに眠りに落ちることができない

ぎゅっと瞼を閉じて眠ろうとはしているのだが

それがどうしてわかったのか 再び声がかけられる

 

「お眠りになりにくいご様子 子守歌代わりに昔語りはいかがですか

少しお喋りさせてくださいましな」

半分眠ったような うつつのような

声のみ流れていく時間

声は・・・語った

 

ーその昔 一匹の蜘蛛がおりましてね

ええ姿形が気味悪いからと 昔むかしから嫌われものの存在でございましたよ

踏みつけて殺されたり 石で潰されたり

けれど ここに不思議な姫様がおられましてね

雨の日に床を這う蜘蛛を 袖でくるんでお部屋にいれられたのでございます

「これから嵐になりそうだけれど ここなら濡れずにすみますよ」

それは優しくあたたかな・・・そして美しい響きの声でございました

その蜘蛛もそりゃあうっとりしたものでございます

薄暗い部屋の中すら輝いて見えるほどのお美しさ

 

その姫様は静かに孤独に暮らしておられました

お父上は高位の身分のお方でしたが 邪な心の政敵の為に 地位を追われて失意のうちにご病気となり世を去って

 

姫様の美しさを聞きつけた殿方からは 幾人からもお文をいただきもしましたが

姫様は お父上を陥れた側に連なる方々が許せなかったのでございます

 

むしろ誰からも忘れられ 打ち捨てられて世を去る

そんなことを願われておりました

ただ一つの希望として

 

そんな姫様なのに

どなたかを呪っているなどと酷い噂を流されて

 

ええ ええ おおかた姫様に相手にされなかった殿方のどなたかが流されたものでございましょう

自分のモノにできないなら いっそ罪におとしてやろうと

歪んだ醜い心の者はいつの世だっておりましょう

他人を陥れる者は己の心の薄汚さに気づくことはありません

その魂の泥まみれさにも

 

姫様は捕えられる前に いわれなき罪で その身を裁かれる前に

喉をついて

苦しい息の下

近づいていった一匹の蜘蛛に こう言いました

「そう 看取ってくれるの お前  物語のようには簡単に死ねないものね

もうこの家には食べるものも無いでしょう

どうか この流れる我が血をお飲み 

少しは足しになるでしょう

もう 何もしてあげられないから」

 

姫様は静かに微笑んで・・・そうして その命の火は消えてしまいました

 

小さかった蜘蛛は 姫様の血を飲んで 己の命の糧として その姿を変えました

蜘蛛はねえ

自分を可愛がってくれた姫様の仇をうちたいと思うようになったのでございます

 

その思いは その身に毒を有させるようになりました

毒糸を吐き 噛むことでも毒を

 

それで 姫様を陥れた人間たちへは復讐できました

 

姫様は戻ってはきません

あの方には二度と会うことはかなわないのです

ますます蜘蛛は寂しいばかり

 

ただただ寂しいばかり

 

そんな蜘蛛が いるのでございますよー

 

 

夢を見ていた

かなしい さびしい なにより哀れな

夢からさめれば そこは山の中

見上げる木の上に何か光るもの

あれは・・・蜘蛛の巣か

そこから涙の糸のように滴が落ちてくる

ぽとん ぽたぽた

それが顔に当たって目が覚めたのか

 

蜘蛛の巣が 美しい網目もようが ふらふら揺れる 

あっちへお行きよ と言うように

 

その通り歩いていったら・・・・・

見慣れた場所に戻ることができた

 

寂しい蜘蛛に助けられたような

不思議な気分だった

 

 

 

 

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庭から

2024-05-23 11:09:14 | 子供のこと身辺雑記

そろそろ薔薇も終わり・・とはいえ まだまだ咲いているコたちもいて 

 

柘榴には蕾がついています

 

これはトワイライトドリームという品種の紫陽花

少しずつ色が変化していきます

 

こちらの紫陽花の品種は星てまり

 

 

この紫陽花の品種は「雛祭り」です

縁が赤いのが特徴

これも少しずつ色が変化していきます

 

 

品種名を不憫にも忘れてしまった紫陽花さん

漸く花が色づいてきてくれました

 

 

シルクサファイアという品種の紫陽花

最初は白からじわじわ色変化

今年 庭植えしたコなので どういう色になるか ドキドキです

〈酸性土かアルカリ性土かで咲く色が変わる品種なのです〉

 

買ってきた紫陽花は すぐに一回りか二回りほど大きな鉢に植え替えて 数年鉢植えで育てておいて 庭植えにする・・・なんてことをしておりますが

無事に庭に落ち着くコ

元気だったのに 庭植えにして数年経ってから枯れてしまうコ

色々あります

 

それでも紫陽花が園芸店の店頭に並ぶ季節には 目移りしつつ幾つか買ってしまいます

試行錯誤を繰り返しつつ・・・

無事に咲いてくれると とてもうれしいです

 

 

 

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望月諒子著「大絵画展」 〈新潮文庫〉

2024-05-20 07:47:15 | 本と雑誌

 

 

 

 

 

「大絵画」シリーズは「フェルメールの憂鬱 大絵画展」〈2016年〉

「嗤う北斎」〈2020年〉とあります

 

ーポール・ニューマンとロバート・レッドフォードに捧ぐーという一文が本作は掲げられております

かの「スティング」〈1973年 アメリカ映画〉

興味を持たれた方はこちらのサイトさんをどうぞ↓詳しいです

スティング (映画) - Wikipedia

最初に観る時は 騙されること請け合いのコン・ゲーム

誰がはめられているのか・・・

痛快 ごきげんな娯楽作に仕上がっております

 

そうこの小説も騙しのお話なのです

誰がはめられて騙されカモられているのか

騙す側は誰なのか

それはどういう動機で・・・と

いい家のぼんぼんながら長男の甚六で 母親に心配かけっぱなしの男は儲け話にひっかかり にっちもさっちもいかない羽目に

 

過去の借金ふくれあがり どうにかしなきゃとスナックのママは これも騙されて・・・追い込みかけられる身の上に

 

この二人と同じく どうにも追い詰められた立場にあるらしき男は とんでもない盗みの計画を実行する

しかし本当の目的は絵を盗むことではなかった

ある男への復讐

さて復讐は首尾よく成功するのか

それとも?!

 

こいつら みんなグルだった?!

 

新潮文庫版は カラーで物語に出てくる数々の名画も掲載されております

狂ったように高額に絵が買われていた時代もありました

 

丁寧かつ詳しい解説は 村上貴史さん

 

 

 

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薔薇と帽子と

2024-05-20 07:36:08 | 子供のこと身辺雑記

四月から咲き始めた薔薇はそろそろ終わり

つる薔薇やミニバラは別として また蕾をつけているコたちもいるけれど

今年最初に咲く花たちはおしまいの時期で 一旦休めさせたくて まだ咲いているコたちも切ってきた

でも惜しがって〈笑〉花瓶にさしたりしている

この薔薇の品種は「ヒストリー」

雨降りの庭も明るく照らすように咲いてくれます

この季節 愛読書はNHKテキスト「趣味の園芸」です

数年前のものや去年のものなども読んで遊んでおります

特に紫陽花や薔薇が好きな私

5月号は薔薇特集 6月号は紫陽花特集を組むことがね 毎年多いんです

ついつい偏って買っているような気がします

 

ところで今朝は粗大ゴミを捨てる日でした

一応帽子もかぶって歩いて行ってきました

この帽子ね ダイソー〈百円ショップ〉の店頭にあったの

即決で買いました

粗大ゴミ当番の日に丁度いいからーという私に 一緒にいた娘はやや苦笑気味

その娘は帽子専門店で あれこれ試して長考・吟味してから買っておりました

 

ーうんうん 若い頃は私も専門店で「ああだこうだ」言いながら選んでましたっけ

旅行用とか街歩き用とか あれこれ用途別に

迷うのも若いうちですって

などと色気なしババアは思うのでした

 

 

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