これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

笹木式『北風と太陽』

2017年03月30日 20時01分31秒 | エッセイ
 明後日から4月だ。春先は着るものに困る。さすがに分厚い冬服は着ないが、淡い色彩の薄物では寒い。
 娘が中学生となった年、入学式には、やせ我慢して化繊のツーピースを着ていった。ちょうど、ソメイヨシノが満開のとき。桜と同じピンクのジャケットの下に合わせる、ピンクのワンピースは半袖だった。



「よし、ヒートテックを着ていこう。どうせ見えないし」
 この手はよく使う。まずは素肌に白い長袖のヒートテックを着込み、その上から半袖のワンピースを重ねる。見た目は野球部員のようだが、上着を着てしまえばわからない。着ぶくれするわけでもなく、寒さに震えることもなく、春らしい装いが楽しめる。
 まあ、ちょっとした詐欺かもしれないが。
「体育館は冷蔵庫みたいだから、80デニールの分厚いタイツにすれば、もう完璧でしょ」
 浅知恵が功を奏して、式典では暖かく過ごすことができた。
 ところが、中学校からの帰りがいけない。予想以上に日差しが強くて暑いのだ。日傘は持ってこなかった。太陽がジリジリ、ジリジリと容赦なく照り付けてくる。
 私は『北風と太陽』という物語を思い出した。太陽と北風は、どちらが先に旅人のマントを脱がすことができるかの競争をする。先に北風が、力任せにマントを吹き飛ばそうとしたが、旅人がしっかり押さえていたから脱がせなかった。今度は太陽の番。旅人にアッチッチ~の日差しを降り注ぐと、彼は暑さに耐えきれずにマントを脱ぎ、太陽が勝つという話だ。
 まさに今、上空ではその勝負が行われているのではないか。しかし、私はこの上着を脱ぐわけにいかない。たとえ汗だくになっても、熱中症になっても、自宅付近で見苦しい姿を披露するのは御免である。
 ご丁寧にも、タイツは真冬仕様。額にも背中にも汗が浮かんできたが、意地でもジャケットを着たまま十分の道のりを歩いた。
 どうにか家までたどり着いたとき、頬は赤くほてり、汗で袖の裏地が腕に貼りついていた。しかし、私は耐えたのだ。
 天を仰いでニヤリと笑った。
 北風さん、太陽さん。
 この勝負、引き分けですね!


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雪の富士急ハイランド

2017年03月27日 22時24分27秒 | エッセイ
 春休みを利用して、20歳の娘と富士急ハイランドに行った。目当てはもちろん絶叫マシーン。ドドンパは動いていないけれど、フジヤマ、ええじゃないかには何度も乗りたい。せっかくだから、高飛車にも乗ってやるか。高速バス、フリーパス、宿泊がセットになったお得なプランに申し込んでみたが、直前になって、天気予報では「山梨県は雪」などと言っている。
「雪? 嘘でしょ。3月も終わるっていうときに」
 天気予報は外れるときもある。家にいても暇だし、キャンセルの手続きも面倒だし、ひとまず行ってみることにした。
 高速バスは楽だ。乗り換えもなく、ただ座っていればいいのだから、いつの間にやら眠っていた。停留所のアナウンスで目覚め、窓の外を見て驚いた。



「うわ……。本当に雪だ」
 目的地に到着した。思った通り、乗りたかったフジヤマやええじゃないかは運行していない。客はまばらで活気はないが、ひとまずホテルでフリーパスを受け取った。



「ははっ、なんだこれ。『超大大吉。人生最高日だよ!』って書いてある」
 富士急特有のおふざけは好きだ。絶叫系が全滅でも、ここで遊んでいこうという気になるから不思議である。
「お母さん、スケートができるみたいだよ。やったことないから行ってみよう」
 そういえば、娘を連れてスケートリンクということはなかった。私は何度かやったことがあるが、転ばずに滑れる程度のレベルだ。久々に練習するのもいいだろう。



 雪は遠慮なく降り続き、髪もマフラーもコートも濡れてしまった。加えて、リンクにも雪が積もり、予期せぬ場所でブレーキがかかる。でも、滑り方の基本は忘れないものらしい。膝を軽く曲げる、右に左に体重移動させて進むなどの動作が、自然に思い出せた。
「ひいい~、先に行かないでよ」
 一方、娘はときどきドテッと転んで雪だらけになっている。手袋もびしょ濡れだ。それでも、1時間もすればそれなりに上達し、形にはなってきた。真央ちゃんや、高橋大輔の偉大さがわかったらしい。
「さて、お昼にしよう」
 富士宮やきそばと



 FUJIYAMAカレーをいただく。



 これはライスボールになっており、山肌の部分がカリカリでイケた。
 食後は観覧車である。
 明らかに親子連れなのに、私たちはカップル用に案内された。ハートの電飾と、並んで座るシートに苦笑いする。悪天候のせいか、フジヤマのレールが霞んで見えた。



 スケートリンクの人口は徐々に増えている。考えることは皆同じだ。
 ホテルのチェックインが始まる15時には上がり、温泉に直行した。富士急ハイランドリゾートホテル&スパは、温泉やレストランが充実しているし、館内にカラオケやボウリングも楽しめるところがいい。
 翌朝。
 12階で朝食をとる。ここから見える景色はなかなかのものだ。





 また絶叫系は運休だろうと高をくくっていたら、高飛車だけは動いたらしい。偉い!
 パークの反対側には富士山が見えるはず……。



 ……いませんね。



 ちなみに、部屋から見えるバスステーションはこんな感じ。雪に埋もれた車は、どうやって脱出するのだろうか。



 宿泊者には、隣接している美術館「フジヤマミュージアム」の入場券がもらえる。ここで、たくさんの富士山の絵に出会えた。フラッシュを使わなければ撮影も可能だ。
 私が、一番素晴らしいと思ったのは、草間彌生さんの「七色の富士」である。



 絶叫マシーンがなくても、富士山が見えなくても、何とかなっちゃう富士急ハイランドでした。


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昔の仲間

2017年03月23日 22時26分24秒 | エッセイ
 その日は最高気温が18度まで上がった。とても3月とは思えない暑さだ。
 私は日傘を差して、西新宿のビル街を歩いていた。昼すぎの日差しは強い。



 目指すはカジュアルなイタリアンレストラン。今日は久々に、大学時代の友人たちに会うことになっている。店の入り口が見えてきた。ウインドウの前には、人待ち顔で立っている男が一人。
「おーい、大熊くーん! ひっさしぶりぃ~」
「あっ、砂希ちゃん。ご無沙汰」
 やはり、今回の企画を立ててくれた大熊であった。サークルの同期は10人以上いる。とりあえず、連絡先のわかる8人に声をかけてくれたのだが、仕事があるだの返事がこないだので、4人で小ぢんまりと集まることになった。まずは幹事をねぎらう。
「お店の予約、ありがとね」
「いやいや」
 大熊はまめな男で、8年前にも同窓会を開いてくれた。待っている間、その話を振ってみる。
「んー、俺は途中でサークルやめたから、本当はそういう立場じゃないんだけどね」
「えっ、そうだっけ? 全然おぼえてないよ」
 大熊の告白は衝撃的だった。卒業して27年も経つと、自分のこと以外は忘れるものらしい。
「おーい」
 声のする方を振り返る。今度は、四宮が手を振りながら登場した。四宮とも、8年前の同窓会で会っている。そのあとも、別件で顔を合わせているから、全然久しぶりという気がしない。相変わらず背が高い。
「お待たせ~」
 最後に、美怜がやってきた。今回、集まるきっかけを作ったのは彼女である。岡山に住んでいることは知っていたが、息子くんが東京の大学に通うことになり、引っ越しを手伝うために上京してきた。大熊がそれを見逃すはずはなく、「美怜ちゃんが来るから集まろう」となったのだ。
「卒業以来だね」
「うんうん」
 27年経っても、見た目は変わっていなかった。ごく自然な様子で歳をとっている。
 美怜が言葉を続けた。
「アタシは途中でサークルやめてるから、悪いかなって気もしたんだけど」
「えっ、そうだったっけ?」
 打ち合わせたわけでもないのに、3人揃って同じリアクションをする。やはり、人のことは忘れるものなのだ。いや、もしかして、自分のことも忘れているかもしれない。
 心配になり、四宮に聞いてみた。
「ねえ、アタシも途中でやめてる?」
「ううん。最後までいたと思う」
「よかった」
 逆にいえば、途中でやめてもやめていなくても、分け隔てなくつき合える間柄なのはすごい。一緒にいる時間が長かったせいか、私たちの結びつきは強いようだ。
「じゃあ、中に入ろう」
 飲み放題と料理を注文し、しばし歓談する。仕事、家族、先輩、後輩、子ども、来られなかった仲間の近況報告などなど、話のネタはつきない。
「最初は林も来るはずだったんだよ。でも仕事が入ったからダメだって」
「林くんは、ひとり社長だって言ってたけど」
「そう。全国各地に飛んでいって、イベントで商品売ってるよ」
「自由人だなぁ」
「あいつは自由だよ」
 そこで、隣に座っていた大熊が、ニヤリと笑って話しかけてきた。
「砂希ちゃんだって、気に入らないことがあれば、好き勝手言って自由でしょ」
「え?」
 そこで思い出した。20代の私は、文句たれでケンカばかりしていた。カチンときたら、ガーッと噛みつき、あとさき考えずに言いたい放題。心をえぐるような暴言も、平気で口にした。見かねた先輩から、「怒りたくなったら、まず深呼吸しなさい」とたしなめられたこともある。
「あの頃は、力で押し切るやり方しか知らなかったんだよね。痛い眼も見たし、言われる方の気持ちもわかったから、今は大人になったよ」
「本当に? 信じられないな」
 強行突破するより、協力しながら進んだ方が、よい結果が得られる。そのことに気づいてからは、言葉に気をつけるようになったし、腹も立たなくなった。怒りの感情は、気質からではなく、習慣から生まれるものらしい。今では、怒り方を忘れてしまったくらいだ。
「俺はね、怒りたくなることがあっても、笑いに変えちゃえばいいと思う。怒りと笑いは、結構近いところにあるから」
 大熊は、哲学を好むだけあって、実にいいことを言う。私も、信じられないことが起きたときは、ブログに書いてネタにする。そうすれば、「なぜ私がこんな目にあうのか」などと、マイナス思考に陥らずにすむのだ。この点は一致した。
 美怜は、息子くんの一人暮らしを心配しつつも、成長の機会ととらえている。中には、「淋しくなるから遠くに行かないでほしい」と子どもを手放さない親もいるけれど、美怜は強い。頼もしい。
 四宮は転勤で単身赴任中。家事も仕事も背負って忙しそうだが、決して弱音を吐かないし、いつも前向きに生きている。ちゃっかり趣味の時間も確保する要領のよさは、私も見習いたい。
「じゃあ、そろそろ行こうか」
「本当に楽しかった。ありがとう」
「また集まろう。連絡する」
「元気でね」
 また会えるという前提なら、さらりとお別れできる。仲間に挨拶し、私は都庁前駅に向かった。



 27年は長い。私も仲間も、みんな成長した。
 でも、昔の自分も嫌いじゃないな。


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心臓に悪いプリン

2017年03月19日 21時15分17秒 | エッセイ
 玉子が余っている。火曜になれば、生協からさらに2パック届けられるので、何かに使わねばと考えた。
「そうだ、プリンを作ろう」
 簡単に作れて美味しいレシピを探してみた。
「これはどうだ?」
 以前、娘に買ってやったお菓子作りの本に、「とろとろプリン」なるレシピが載っていた。



 作り方は簡単だ。このときは、そう思った。
 まず、Mサイズの玉子1個と牛乳150ml、グラニュー糖大さじ2を用意する。



 グラニュー糖を牛乳に入れ、人肌に温めて溶かす。これを、ほぐした玉子に少しずつ加え、泡立て器で混ぜたらザルで濾す。



 3つの容器に注ぎ、キッチンペーパーで泡を取る。



 天板にお湯を注ぎ、160度に温めたオーブンで10~12分蒸し焼きにすれば出来上がりだ。
「うわあ、もう完成? 早ッ!」
 しかし、プリンがとろとろ過ぎる。竹串を刺してみたら、液体がドローとついてきたので、再びオーブンに戻した。
「あと5分やってみよう」
 5分はすぐ経つ。ブザーに呼ばれて中を見たが、さっきと変わっていない。
「ええい、もう10分でどうだ」
 押し込むように、オーブンの扉を閉めた。
 玉子には、熱を加えると固まる性質がある。とろとろプリンは、牛乳の比率を大きくすることで、口の中でとろける柔らかさに仕上げる反面、玉子の力は弱くなっている。
 待ち時間では、ひたすら心細い。余計なことを、あれこれ考えてしまった。
「本当に固まるんだろうか」
「もしや、牛乳の量を間違えたのでは」
「失敗したら、私が責任とって片づけるしかない」
「この無駄な時間、どうしてくれるのよ、キイイ~」
 ピッピッピと終了の音がして、ドキドキしながら扉を開ける。



 端が焦げてしまったが、今度は大丈夫そうだ。竹串を刺したときの手ごたえが違う。周りが液体だと「スカッ」という空疎な反応となるが、固体ならではの抵抗感があった。器を傾けても、プリンは流れない。あとは冷まして冷蔵庫に入れるだけだ。
 オーブンの性能の違いか、容器の素材や形状の違いか、わが家の場合は160度で25分かかるらしい。
「ふう~、今度はカラメルを……」
 小鍋にグラニュー糖50gと水小さじ1を入れて火にかける。



 砂糖は加熱によって液体と化し、ドロドログツグツ煮え立ってきた。縁から色がついてくるので、木べらでかきまぜる。やがて、茶色になってきた。
「そういえば、べっこう飴もこうやって作ったな」
 小学生のとき、理科の実験でべっこう飴を作った。熱いうちに、茶色の液体をアルミホイルにあけて冷ますと、美味しい飴に早変わり。ただし、今作っているのはカラメルだから、火を止めたらて大さじ1の湯を加えなければならない。小鍋は「ジューッ」と怒ったような音を立て、沸騰するのをやめた。こちらもでき上がり。



 プリンが冷えた。あとは、上からカラメルをかけるだけだ。
 ここでも一抹の不安がある。
「まさか、べっこう飴になっているんじゃ……」
 おそるおそる小鍋をのぞいてみたが、こちらは固まっていない。「はあ~」と胸をなで下ろした。
 やっと完成。



 お腹をすかせた夫に食べさせた。



「うん、美味しい。でも、カラメルが甘すぎるな。砂糖を減らした方がいいんじゃない」
「へいへい」
 あー、できてよかった……。


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2017 ホワイトデー

2017年03月16日 20時49分50秒 | エッセイ
 出勤すると、プレゼントの包みが置いてあった。
「あら、誰からかしら」
「ゴッド先生です」
 近くにいたフラワー先生が、そっと耳打ちする。
 そうか、今日はホワイトデー。バレンタインデーに安物の義理チョコをバラまいたので、お返しをいただいたわけだ。箱の大きさからして、本当に倍返しで気が引けた。
「私も」
 そのフラワー先生からは、カントリーマアムのレアな「ずんだ味」を、シャネル先生からもチョコおかきなんぞをいただいた。ちょうど、通勤ラッシュをくぐり抜けてきたところだから、ティータイムにはもってこいである。
「おはようございます」
 ニューマン先生が出勤してきて、こちらからもチョコが、タッキー先生からは「僕は和菓子にしたよ」と包みを渡される。これは大漁。バレンタインの威力は絶大である。しばし、お菓子談議に花が咲いた。
 そういえば、学生時代に、バレンタインのお返しを拒否する男子がいた。「製菓会社の陰謀にはまるものか」と抵抗していたわけだが、イベントと割り切って楽しめばよかったのに。やがて、彼にチョコレートをあげる女の子はいなくなった。
「ただいまぁ」
 帰宅して、食べ切れなかった戦利品をバッグから出していると、夫がゴディバの箱を持ってきた。
「はいこれ」
「ありがとう」
 山盛りになり、食べきれるか心配になってきた。



 以前に、ゴディバのチョコが美味しかったと言ったせいか、夫はゴディバ以外のチョコを買わない。男性には保守的な傾向がある。たまには冒険してもいいんだけど。
 娘が23時にバイトから帰ってきた。大きな紙袋を持っている。
「バイト先のオジさんにチョコあげたら、今日、お返しもらった」
「へー」
「バウムクーヘンにしようと思ったら、店がつぶれていたからケーキにしたって。消費期限が今日なんだよ。どうしよう」
「げっ」



 おそらく、そのオジさんの好きなケーキなのだろう。バレンタインに、20歳の女の子からチョコをもらったのが嬉しくて嬉しくて、飛び上がって足の裏で拍手したくなるくらい嬉しくて、喜んでもらいたい一心からお返しを選んだに違いない。
 可愛いなぁ。
「図書カードも入ってた」
 中身を見たら、2000円と書いてある。そこまで念入れる?
「明日、仕事行く前に食べていってよ。3分の1ずつね」
「ひー」
 思いがけないノルマが課されたが、「図書カードを使って」というノルマはないらしい。
 チッ。
 翌朝、弁当を作り終えると、血糖値を上げないためにキャベツの千切りを食べる。このあとはケーキだ。
 消費期限は過ぎたけど、一日くらいどうってことない。
 カスタードクリームに載った甘いフルーツと、歯ごたえのある香ばしいタルト生地のコンビネーションを楽しんだ。バリバリバリ。
 娘はすました顔で「美味しかったです」と伝えたらしい。


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ひと足先に墓参り

2017年03月12日 21時34分13秒 | エッセイ
 来週の3連休は混むだろうと予測して、今日、母と墓参りをすることにした。
 高尾にある某霊園には、偶然にも、母の両親たちと私の義父が、少々離れたところに眠っている。一度で2世帯分の墓参りができるから、こちらにとっても都合がいいのだ。
「えっ、行くなら言ってくれればいいのに。俺だって都合つくから」
 影響を受けてか、一回しか父親の墓参りをしたことのない夫まで、参加するようになったのが面白い。要介護の義母がいるから、夫の兄弟は墓参りどころではない。自分がやらねばと思っているなら、ちょっとは大人になったと言えるだろう。とっくに、還暦過ぎているけど……。
 墓参りのあとは、母と中華を食べた。夫は出かける用事があるようで、恨めしそうな顔をしていたが、先に出発していった。
 アワビやズワイガニ、和牛などはもちろん美味しかった。だが、一番期待していたのはフカヒレの姿煮である。



 関東地方の冬は、かなり乾燥する。静電気パチパチ、お肌ボロボロなのが悩みの種だ。フカヒレでコラーゲンを補充できれば、ボロボロからプルプルになるかもしれない。
「うっま~い♪」
 デザートは金箔つきのマンゴープリン。一説によると、金箔にはコラーゲンの生成機能をアップさせたり、肌のターンオーバーを整える作用があるという。わずかこれだけの量で、そんな効果があるかは疑問とはいえ、ゼロよりましであろう。



 こちらも美味しくいただいた。
 ゆっくり食事をしたので、終わったら4時になっていた。急いで電車に乗り、地元の駅で食材を買う。早歩きで帰ると、すぐに夕飯の支度だ。私はお腹が苦しいので、夫の分だけでよい。
 台所に立っていたら、足に違和感をおぼえた。
「あれ? なんか左の膝が痛いなぁ……」
 気のせいではない。たしかに、お皿の真ん中あたりがシクシクする。これはどうしたことか。
「フカヒレ食べたのに」
 コラーゲンは美容だけでなく、関節痛などを和らげる効果もある。気休めに屈伸運動をしてみた。かがんだところで、問題の膝から「ポキ」という小さな音が聞こえ、笑いそうになった。
 おそらく、昨日、準備運動もせずに40分間スカッシュを続けたのがいけなかったのだろう。
 これからは、ウォーミンブアップとクールダウンをセットにして、ケガを予防せねばと反省した。
「さて、この膝どうしよう」
 そうそう、ひな祭りのとき、座敷に座ると膝が痛むからと、母が持参したイスがあったっけ。



 まさか、私が使うことになるとは!


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インターネットがつながらない!

2017年03月09日 22時18分29秒 | エッセイ
 職場から帰宅し、パソコンに向かった。夕食までの待ち時間を使って、ネットサーフィンをしたかった。
 ところが、インターネットエクスプローラーのアイコンをクリックしても、「ネットワークに接続されていません」のメッセージが出て、一向につながらない。無線LANのルーターは起動しているのに、どうしてだろう。
 夫のPCで挑戦しても同じだった。無線がダメなら有線でと考え、ケーブルをつないでみた。それでも結果は同じだ。となると、昨日まで元気に活躍していたルーターが壊れたのかもしれない。
「しょうがないな。エッセイでも書くか……」
 だいぶ前に、マッカーサー記念室に行ったときのエッセイがまだだった。写真はあるから、あとは文を書くだけ。でも、どこを切り取って、どう膨らませるかで悩んでいた。加えて、姉からのひと言が大きく影響している。
「マッカーサールーム? 私も行ったことあるな。……あそこは出るんだってよ」
 一般公開されていない施設だから、普段は明かりが消えている。何かが潜んでいると言われれば、そうかもしれないと頷いてしまう雰囲気だった。
「夜に書くのは怖いな。今日はやめよう」
 そんな具合で延ばし延ばしにした結果、すでに1カ月以上経過している。ネットがつながらないのなら、思い切って書くしかないだろう。
「ん? もしや……」
 私にこれを書かせるために、通信障害を起こした者がいるのではないか。
 その前の夜、夫がテレビで、芸能人の恐怖体験を見ていた。私もついつい見てしまい、番組が終わった後も、その話題で盛り上がったのだが……。
「あれ、キッチンからパチッパチッて音がする」
 普段は聞いたことのない軽い音だ。まさか、ラップ音?
 音はすぐにやんだ。すっかり忘れていたが、これが原因でネットがつながらなかったりして。
 何の根拠もないけれど、マッカーサー記念室のエッセイを書いたら、インターネットが復旧するような気がした。交渉する相手がどこにいるかもわからないまま、念を飛ばしてみる。
-わかった。あなたのことを書いてほしいから、邪魔しているんでしょ。
 もちろん返事はない。でも、きっと間違っていない。
-そりゃ、ずっと放置していて悪かったけどさ。書いたら直してよ。
 私はワードを立ち上げ、文章を入力し始めた。
「君は、マッカーサーを知っているか」
 3行くらい書いたところで手が止まる。
「うーん、何か違うかも……。君じゃなくて、おまえさんにしてみるか」
 誰かに誘導されているのか、自分の文章に違和感をおぼえて書き直した。
「彼は、ってのもおかしいよね。そうだ、奴さんがピッタリかも」
 普段は絶対に使わない言葉が、次々と浮かんでくる。感じるまま、ひらめくままに続けていったら、「どう書こうか」と悩んでいたのが嘘のようにまとまった。
(完成したエッセイ「マッカーサーのいた部屋」はこちらから)
 再び、念を送ってみる。
-できたよ。ネットをつなげてちょうだい。
 やっぱり返事はないが、ルーターのコンセントを差し込み、さっきと同じ動作を繰り返す。
「おおっ、つながった~!」
 思った通り、インターネットが復旧した。ブログにアップしたあと、「気に入った?」と問いかけてみた。実のところ、結構自分好みの作品に仕上がったと思う。
 それから、おあずけになっていたネットサーフィンを始めた。さっきまで「ネットワークに接続されていません。接続されていないんだってばよ!」と表示されていたとは思えない滑らかさだ。
 やはり、邪魔されていたのではないか。
 さらに、図々しく念を送った。
-頑張ったんだから、何かご褒美ちょうだいね。
 その成果があったのか、今日は職場に卒業生が3人やってきた。全員イケメンの男子だ。
「久しぶりにみんなで会おうって話になって、ついでに先生にも会いに来た」
「わ~、ありがとう!」
 警察官になり、巡査として派出所勤務をしているコウジは、給料がものすごくいいと喜び、首から下げたバッジを見せてくれた。美容師を目指して専門学校に通うアツシは、クラスで2位、学年で6位の成績をとったとか。機械技師になりたかったはずのレイヤは、全科目追試で「頑張らないとヤベー」と叫んでばかり。
「仕事が終わったら、カズヤとダイキも来るんだよ」
「先生も元気でね」
「うん。さようなら」
 しばらく話して、彼らは去っていった。まさかまさかの再会で、ご褒美にふさわしいシチュエーションだった。また念を送ってみる。
-ありがとう。
 今日はいい日だ。


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高齢者と祝うひな祭り

2017年03月05日 22時04分49秒 | エッセイ
 今年もひな祭りパーティーをした。



 3月は何かと忙しいこともあり、集まったのは7人だけ。退院して10日経過した母が、元気に来られただけでもよしとしよう。
「床に座るのがつらくなってね。椅子を持ってきたよ」



 我が家では、もっぱら座卓を使用する。75歳を迎えた母には厳しいようで、申し訳なく思った。
 料理のイチ押しはすき焼き小鍋。去年も食べたから、ひな祭り定番にしたいものだ。フタに「割下を直接肉に10ccほどかけ、残りは鍋全体に回し入れる」などと書かれた紙がセットされているので、この通りにやればいい。
「もう火をつけていいの?」
 母が小鍋をのぞき込んで尋ねたが、まだ割下が入っていない。
「作り方が書かれた紙があったでしょ。読んだの?」
「読んでない」
 何と、ジジババ夫の高齢者トリオは説明を読んでいなかった。しかも、さっさと捨てていた。年寄りには難しかったか。
「あ、僕も読んでなかった……」
 高校生の甥も、恥ずかしそうに申し出た。スマホ老眼にはまだ早いのだが。



 6分後にはグツグツ沸騰し、甘辛いあの匂いが充満してきた。肉の柔らかさに舌鼓を打ち、いやいや舌ドラムのほうが賑やかでピッタリだよと思い直す。
 うま~い。
 ローストビーフに



 オードブルも用意したが、量が多かったようだ。



 これに寿司も加わったから、最後にはお腹いっぱいで動けなくなった。
「ごちそうさま。椅子は置いていっていいかな」
「いいよ」
 次は身軽で来られるように、母の椅子を預かる。ゲストを見送り、椅子を片づけようとしたら、目立つところに貼ってある注意書きのシールが目に入った。
「ご使用の際には、必ずカバーをはがしてください」
「…………」
 思い切り、ビニールのカバーがついたままではないか。やれやれ、全然書いてある通りにしないんだから、と天を仰ぐ。カバーを破き、埃よけの袋に入れて収納した。
 そして今日はお雛様をしまった。
 今年はしゃれた菱餅を用意したので、お雛様も喜んでくれただろうか。



 友人の娘は、毎年お雛様に手紙を書いているのだという。小さなメモに、ひと言ふた言書いて、お道具の箪笥にしまう。この引き出しは飾りではなく、ちゃんと開閉できるところが偉い。



 メルヘンチックな発想がいたく気に入って、私も娘に勧めたことがある。でも、「手紙って何を書けばいいの?」と聞かれ、「好きなことを自由に」と答えたら、「特にないからいいや」と断られた気がする。現実主義者には、魅力のないセレモニーなのかもしれない。
 今だったら、どう答えるかな?
「おじいちゃんとおばあちゃんが、ボケずに元気でいられますようにって書いてごらん」などと言いそうだ。
 私もまた、まぎれもない現実主義者……。
 お雛様、来年またみんなで集まることができますように。


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のろいの昼食

2017年03月02日 20時43分36秒 | エッセイ
 小学生の私は、給食の時間がストレスだった。「いただきます」から「ごちそうさま」までの時間の短いこと短いこと。おしゃべりもせず、せっせと口を動かしているのに、食べ終わるのはいつも最後。ふざけながら食べている子の容器が先に空っぽになる。なぜ?
 全員が食べ終わるまで「ごちそうさま」にはならず、席に座って待たなければならない。早く遊びに行きたい子たちが私に向かって、「まだ?」「いつまでかかるの?」という視線を送ってくる。これが苦痛で仕方なかった。
 ある日、先生が「九九をおぼえられた人から順に給食にしましょう」と言った。これはチャンス。九九など簡単だ。さっさとクリアして、給食を食べ始めた。今日は慌てなくても平気だろう。
 一番遅かったのは近所の男の子。勉強が苦手で、何度やっても途中でつっかかる。その子以外はみんな給食にありついているから、とうとう先生も折れた。
「給食の時間が終わっちゃうから、続きはまた今度にしましょう。さあ食べちゃって」
 時計を見るとあと5分しかない。まず、彼はコッペパンを右手でつぶし、ゴルフボールくらいの大きさに縮めた。2回に分けて口の中に放り込み高速で咀嚼する。ポークビーンズは容器に口をつけて一気に流し込んだ。それからスプーンを左に一回転。せわしなく動く唇の中に野菜が吸い込まれた。最後にもう一回転。シュッと果物も消えた。まるで手品だ。
「すげえ、1分しか経ってない」
 九九の失敗はどこへやら、クラス中の児童が一斉に尊敬のまなざしを向けた。そして、ポカンと見ていた私は、またビリッケツ……。



 大人になった私は高校教師をしている。給食はないから、専ら弁当を持っていく。弁当は自分でメニューや量を調整できるところがいい。食べるのに時間のかかる豆類や硬いものは避け、パッパと片づく唐揚げや煮物などを弁当箱に詰める。
 しかし学校の昼休みは40分と短い。担任を受け持っていたときは、ときどき昼食時に保護者から穏やかでない電話がかかってきた。
「あのう、江原の父です。」
「ああ、朝方、欠席連絡をいただきましたね」
「はい、発熱と言いましたが、あれは嘘です」
「えっ」
「実は、子どもが学校に行きたくないと言いまして、どうしたらいいんでしょう」
 この手の相談は多い。親は子に振り回されて悩み、助けを求めてくる。解決策うんぬんよりも、まずは話を聞いてほしいようだ。親子の会話はなく、子が何を考えているのかわからず不安になっている。
「お話はわかりました。仲良しの子たちに、学校においでよとラインしてもらいますね」
「ああよかった。それなら安心です」
 電話を切ると、急いで弁当の残りを平らげる。急げ、あと7分だ! フルーツを飲み込んだところで予鈴が鳴った。歯磨きしている時間はない。教材を抱え出席簿を引っつかんで教室に向かう。
 走れ! 走れば間に合う!


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 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
 「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
コメント (6)
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