これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

人生のピーク

2017年02月26日 21時51分31秒 | エッセイ
 ブロ友さんのブログに「人生のピークは中学一年生のとき。勉強は一切せず、ただただ授業中、先生を含め、みんなを笑わすことに徹していた」とあった。彼のいうピークとは、人気のことなのだろう。
 さて、人気を基準とするなら、私のピークは就職後の数年間である。職場の平均年齢は50歳前後だし、オジさんの多い職場だったから、22歳の女性というだけでちやほやされる。若ければ、特に美人でなくてもいいのだ。〇〇委員の選挙があれば、何もできないのに2~3票は入り、誰かとぶつかっても「今日はいいことあった~」と喜ばれる始末。誰かに何かを尋ねれば、ニコニコしながら「やっておくからいいよ」と言われたりして、ずいぶん甘やかされていたような気がする。
 やがて結婚し、子どもを生んで復帰すると、普通の職員になる。こちらの主張を通すために戦い、失敗すれば文句を言われるけれど、そのほうが気楽だ。私より若い女性には、露骨に態度を変える男性もいるが、自分も通った道だと思えば腹も立たない。
 人生の尺度は人気だけではない。もし経済力だったら、ピークはこれから来るはずだ。毎年4月にベースアップするから、定年退職を迎える60歳までは上昇し続ける。そこがピークになるだろう。年金生活者になったら、贅沢せずに質素に暮らしを楽しみたい。
 もし文章力だったら今はダメだ。底辺レベル。ろくに勉強していないし、本も読めていない。書く時間も不足しているから、似たような作品ばかりになってしまう。でも、退職後は時間がたっぷりある。小説は難しそうなので、ぜひ紀行文に挑戦してみたい。日本各地の絶景を言葉で表現したり、郷土料理の個性を描写したりと、考えただけでワクワクする。70歳くらいでピークを迎えられるといいのだが。
 最後に体力。これは今がピークかもしれない。若いときから体が弱かった。すぐに風邪をひき、熱を出したりお腹が痛くなったりする。週に一度は休息日を設け、ゆっくり休む必要があった。ところが、蒸しショウガに出会ってから変わった。風邪って何? というくらい丈夫になったし、毎日出ずっぱりでも疲れない。母の見舞いで那須に行き、帰りはジムに寄って汗を流し、月曜から金曜まで勤務したあと、入試の採点で土日がつぶれても平気だ。頭のてっぺんから指先、つま先に至るまでエネルギーが満タンで、自分でも驚いている。
 明日は振替休業日で仕事なし。午後からエッセイ教室に行く。さて、午前中は何をしよう。
 そうだ、お台場のガンダムは? 撤去前に、もう一度見なくては。



 3月5日までですよ、みなさん!


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安さのからくり

2017年02月23日 20時30分38秒 | エッセイ
 友人の凛が、よく予約サイトの一休を使って、ホテルやレストランを利用している。
「安くてお得よ。定価で払うのがバカバカしくなっちゃう」
 それは知らなかった。
 ちょうど銀座方面に行く用事がある。オシャレなホテルの贅沢ランチを、割引価格でいただきたいとスケベ心が働いた。そうだ! 一休を試してみよう。
「どこがいいかな」
 たまには帝国ホテル以外にしたい。たとえば、ペ〇ンシュラはどうだろう。検索すると、いくつかのプランがヒットした。
「なになに、ダブルメイン豪華4品コースランチのドリンク付7245円が5700円? よし、これでいこう」
 たしかに凛の言う通り、お得な料金だ。どうやったら、1500円の値引きができるのか気になった。
 からくりは、行けばわかる。
「いらっしゃいませ」
 キラキラした笑顔のベルガールに迎えられ、気分よく豪華な館内に足を踏み入れた。席に案内され、娘と2人でメニューの説明を受ける。おしゃべりしていたら、グラスにスパークリングワインが注がれて、素敵なランチの始まりだ。店内はそこそこ混んでいるが、前菜がすぐに運ばれてくる。



 ピアノとヴァイオリンの演奏も始まった。繊細な旋律が心に響く。絵画の修復のように、ハートにへばりついた汚れが、はがれ落ちていく気がする。
「あの高いところで弾いているんだね。やっぱり生演奏は違うわぁ」
「うんうん。メロディーの中に聴かせたいって想いがこもった感じ」
すべり出しは上々だった。
 突然、背後でガチャガチャというカトラリーのぶつかる音が響く。驚いて振り返ると、私の背中から1mほどの場所に食器棚らしきものがあった。これでは、やかましいはずだ。
「なんかうるさいと思ったら……。設計ミスじゃないの?」
「こっちもうるさい。耳元にスピーカーがあるよ」
 ピンときた。ここはハズレの席だから安いのだ。そういうわけか。
 2皿目はアイナメを使った魚料理。



 見た目が美しく、ソースもなめらか、まろやかで、実に美味しかった。ソースをパンですくい取ると、バターをつけるよりイケる。娘が先に食べ終わり、フォークとナイフを4時の方向に揃えて置いたせいか、ウエイトレスが皿を下げに来た。
「おすみですか?」
「えっ、まだです」
 私はカトラリーをハの字に置いているのに、何を考えているのか。まだに決まっておろう。
「失礼しました」と彼女は手を引っ込めたが、どうにも納得いかない。
 そのあとは、もっといけない。待っても待っても、メインの肉料理が来ないのだ。隣のテーブルも、そのまた隣のテーブルも、食事を終えて空になったのに、こちらは「おあずけ!」と言いつけられた犬のようにじっと待つ。相変わらず、背中ではガチャガチャ、スピーカーはブーブー騒いでいた。
 ピアノとヴァイオリンの演奏がまた始まった。待ち時間が長くて、2クール目に入ったらしい。2曲、3曲と流れても、肉料理は来ない。25分経過後に、ようやくウエイトレスが「お待たせしました」と近づいてきた。



 バイトか派遣か知らないが、安さの理由その2は、教育されていないスタッフが担当するところにあるらしい。待ちくたびれて、食欲がうせた。
 値段が安ければ気にしない、という人にはいいだろう。多少安いくらいで、悪い席に座らされ、4流のサービスを受けるなら、私はお断りだな……。
 ピアノの旋律が、ビリー・ジョエルの名曲を奏でる。「オネスティ」だ。
 うーん、このタイミングでオネスティ(誠実)か……。
 皮肉な偶然に苦笑いをした。


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マスクの新しい使い道

2017年02月19日 21時39分42秒 | エッセイ
 決して暇人ではないが、週2回はジムに行くことを目標にしている。スカッシュで汗を流し、スパでリラックスするのが至福のひとときなのだ。
 仕事帰りに寄ることもある。前の日に持ち物を準備するが、一度、トレパンを忘れてしまった。更衣室で着替えの最中に気づいたものだから、「今日はやめよう」という気になれなかった。
「今日はチノパンを履いてきたから、これでやればいいんじゃない?」
 かくして、Tシャツにチノパンを組み合わせた、いい加減な格好の女がスカッシュコートに立ったというわけだ。裏起毛だから暑かったこと、暑かったこと。
 今日はトレパンこそ忘れなかったものの、髪をまとめるゴムが見当たらなかった。
「あれっ、昨日はあったのに。どこに行ったんだろう」
 おそらく、ロッカーに置き忘れたのだ。これには参った。ゴムがないと、髪が邪魔で球が見えない。卓球の愛ちゃんも美誠ちゃんも、「これでもか、これでもか」というくらい黒ピンで前髪をとめているのは、視界を最高の状態に保つためと思われる。スポーツ刈りにする気はないが、ときに髪は疎ましい存在となる。
「うーん、何かないかなぁ」
 バッグの中を探してみた。輪ゴムの一つくらい見つからないものか。
「ややっ、これはどうだ?」
 使い捨てのプリーツマスクが目に入った。感染症を防ぐため、満員電車でつけるようにしているが、ジムのあとは自転車で帰るだけ。役に立ちそうな気がした。
「えーと、ゴムのところを切り取って……」
 耳にかけるソフトなゴムを引っ張ると、少々抵抗されたあとに「ベリッ」と剥がれた。反対側も同じようにしてもぎ取る。これを輪にしてみたら、髪くらいとめられるのではないか。



「おっ、大丈夫、大丈夫」
 グルグル巻きにし、髪をまとめてコートに向かった。またもや変な女の登場である。だが、40分間動き回っても、ゴムはびくともしなかった。ボールを追って、運動不足の体が右に左に動く。髪が邪魔だとこうはいかない。急場をしのぐにはいい判断だったと思う。
 残された可哀想なマスク……。



 マスクは、感染症やアレルギーの予防という本来の目的以外に、いろいろな使い道がある。防寒、すっぴん隠し、照れ隠し……。
 女子生徒の皆さん。
 体育の時間に、髪をゆわくゴムを忘れたときには、ぜひ思い出してくださいね。


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ひんやり「秩父氷柱アート」

2017年02月16日 20時59分10秒 | エッセイ
 冬は寒い。だが、その寒さが観光資源になることもある。
「わっ、なにこれ。つららだって」
 ネットサーフィンをしていたら、「秩父三大氷柱」というフレーズに出会った。私は埼玉県出身なので、秩父には何度か行ったことがある。山があって、夏は暑く冬は寒い場所だ。だが、その寒さを逆手にとって、氷柱で観光客を集めることができるとは。アッタマい~い!
「よしっ、面白そうだ。行ってみよう」
 チャチャッとバスツアーに申し込む。土曜のライトアップコースはすでに満員だったが、日曜の平常コースには空きがあった。ウホウホ、間に合った。
 集合は午前11時に西武秩父線の芦ヶ久保だ。ここからすぐの場所に、あしがくぼの氷柱がある。観光の目玉として人工的に作っていると聞いたが、果たしてどのようなものか。
「へええ」



 鍾乳洞の石筍が雪に代わったような盛り上がり方だ。



 ぷくぷくしていてラブリー。クラゲに見えないこともない。
 ここの氷柱は、始めてから4年目というから、この先洗練されることだろう。斜面の頂上では甘酒や紅茶をふるまっていた。紅茶をいただきながら、陽光に反射するクラゲたちを鑑賞した。
 すぐにお昼の時間になる。バスツアーには、昼食と温泉がついていてウレシイ。
「えっ、豪華」



 参加費用は7000円である。昼食代だけで結構いっちゃうのでは? と感じるメニューだった。糖質がやや過剰であるものの、アツアツの切り込みうどんで体が温まる。
 美味し!



 昼食後は尾ノ内の氷柱を見に行く。ここも人工的に作られたものであるが、道路が渋滞していて、予想以上に時間がかかった。
 渓谷にかかった吊り橋が、歩くたびに揺れるので、高所恐怖症の方には無理だろう。



 ポストカードの写真と比べてみると、今年は基準の5割程度の氷柱しかないとわかる。日中が暖かいので、氷が溶けてしまうのだとか。



 ちなみに、暖冬だった去年は、もっと少なかったそうだ。
 でも、光の加減で、「氷柱の国のアリス」みたいな写真が撮れたから満足だ。









 ライトアップ時のポストカード。これが見られる時間帯は、駐車場が2時間待ちというから凄まじい。



 ラストは三十槌(みそつち)の氷柱である。
「ここには天然の氷柱と、人工の氷柱があります。天然の方はつらら、人工のほうはひょうちゅうと呼んでいます。比較してどうぞお楽しみください」
 バスガイドの説明に、うんうんと頷いた。



 これは天然ゾーンであるが、たしかにつらら……。



 繊細な姿が水に映り、自然の生み出した芸術にうっとり見とれた。



 私はここが一番好きだ。



 まあ、糸のようなつららが春雨に見えないこともないが……。
 人工ゾーンは、先の氷柱と大差ないので割愛しちゃおっと。
 秩父のシンボル、武甲山。



 最後に、武甲温泉で汗が出るまで温まり、18:40頃芦ヶ久保で解散した。
 コスパもよく、退屈しなかったバスツアーに感謝する。
 今度は、凍死しそうなくらい寒い年に参加したい。


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三度目の正直 赤坂迎賓館和風別館

2017年02月12日 22時37分32秒 | エッセイ
 めでたく、迎賓館和風別館の参観証が送られてきた。3度目にしてようやくである。「やりぃ~」と大きな音で指パッチンをしたくなった。
 いつも留守番ばかりの夫も誘い、家族3人で出かけることにした。
 和風別館の定員は20名。しかし、数えてみると13人しかいない。7人はキャンセルということなのだろうか。どうしても見たい人だけが申し込めばいいのに。
 係員の男性がスタンバイして見学が始まった。
「おや、今日は子どもがいますね。中学生かな」
「大学生ですっ!」
 娘が子ども扱いされたことに怒り、目を吊り上げていたが、そもそも若い人がいない。文化財には興味がないのか。それは残念なことである。
 和風別館は昭和49年に建てられたもので、エリザベス女王が最初の客だったとか。
「女王自ら植えた木がこれです」



 イギリス勢としては、サッチャー首相やダイアナ妃も滞在したそうだ。ちなみに、ゴルビーことゴルバチョフ大統領も植樹をしたという。
 木の隣に生えている、キノコのようなものは外灯か?



 何でこんな形にしたのかしらと笑いがこみ上げてきた。
 細い道を抜けると、別館が見えてくる。



 空も青くて何より。派手さはないが、落ち着いた佇まいに、日本らしいおもてなしの姿勢が感じられる。
 庭の池には鯉が93匹いるそうだ。



 別館公開前は、人の出入りがないのをいいことに、稚魚を狙った鳥が飛んできては食べ放題をしていたらしい。だから、自然繁殖することはなかった。
 だが、一般公開されるようになって、狩場に人間という邪魔者が入り込んでくる。鳥たちは警戒し、池に来る回数が減ったものだから、子どもの鯉が育つようになったのだとか。何が幸いするのかわからない。
「皆さま、こちらにお進みください」
 最初は靴を履いたまま、黒い床に敷かれた赤いカーペットの上を歩く。
「賓客が来るときは、このカーペットを取りますが、皆さまはカーペットの上をお歩きください」
 見学者が、賓客と同じ場所を歩かないように工夫をしているのだろう。夫は説明の意図が十分理解できなかったようで、靴のつま先がカーペットからはみ出していた。すかさず、係員がそれを指摘する。
「あのう、カーペットの上でお願いします」
 手のかかるオヤジで申し訳ない……。
 次に入口で靴を脱ぎ、館内に上がる。
「皆さま、スリッパに履き替えてください」
 ここでもやはり、見学者とVIPは区別される。賓客はスリッパを履かないが、見学者はスリッパを履くから、水虫持ちであろうが、足の臭い人であろうが、床を汚す心配はない。一国の指導者やその家族を招待する場所では、細部まで気配りをしないといけないのだろう。
 主和室は、18人までが食事をとれる部屋である。
「あれが通訳の椅子です。賓客は食事をしながら話しますが、通訳に席はありません。彼らは食事もせずに2時間話しっぱなしです。実にハードなお仕事ですね」
 ごちそうを前にして、自分の分はなしというのは哀しい。そうか、通訳にならなくてよかった。というか、なりたくてもなれなかったけど。
 このあと、食堂や茶室なども見て、見学は45分程度で終了した。
 少人数で説明つきのツアーは楽しい。家族3人、満足して本館に向かった。
 係員が「京都迎賓館はもっと広くて豪華です」と説明したことを思い出す。
「じゃあ、次は京都まで行かなくちゃ」と新たな目標ができたことがうれしい。


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食い逃げ御免

2017年02月09日 22時08分03秒 | エッセイ
 ちょっとした用事で、某大企業に行った。
「お昼は社員食堂で召し上がりませんか? 皇居が見えてキレイなんですよ」
 この会社からはペニンシュラが近い。たまには、落ち着く場所で贅沢なランチをと思ったが、すぐに考え直す。ペニンシュラにはいつでも行かれるが、この機を逃したら、社員食堂にはもう行かれないだろう。希少価値では勝負にならない。
「どのメニューも、だいたい500円くらいです」
「じゃあ、ぜひお願いします」
 そんなわけで、女性社員に連れられて昼時の食堂に入り込んだ。
「学食と同じスタイルです。麺類はあちら、一品料理はこちら、定食は左手にあります」
「わあ、どれにしようかしら」
 私は基本的に定食が好きだ。鶏の照り焼きがメインになっているセットを選んだ。ご飯は大盛り、普通、少なめがある。少なめは70円と書かれているのが目についた。
 それにしても、人の多いこと、多いこと。席数も多いが、ときには満席になることもあるらしい。どの社員も慣れた手つきでお料理を取り、トレイを持ってスイスイ歩いていく。
「あれ? 箸……」
 初めての場所は勝手がわからない。周りを見ると、みんな箸や水を載せているのだが、一体どこにあったのだろう。
「大丈夫ですか?」
 さきほどの社員が戻ってきてくれた。彼女は蕎麦にしたので、場所が離れていたのだ。
「お箸はここです。お茶もありますよ。取りましょうか」
「ありがとうございます」
 彼女に手伝ってもらい、窓際の席に移動する。



「おお~」
 言われた通り、窓の外にはいい景色が広がっている。
 私が選んだ定食はこんな感じであった。



「いただきま~す」
 見た目は質素だが味はいい。欲をいえば、鶏肉はもうちょい小さく切ったほうが食べやすい。みそ汁も無難な仕上がりだ。好みで小鉢などを追加して、もっと豪華にすることもできる。
「ん? そういえば……」
 ワタシ、お金を払ったかしら? 払ってないよ。
 血の気が引くようだった。まさか、レジに気づかなかったのだろうか。いくら初めての場所だからといってレジをスルー? それって無銭飲食でしょ。犯罪だよ、マズい!
「そちらの学級数はいくつあるんですか?」
 私の焦りに気づくこともなく、女性社員はにこやかに話しかけてくる。すっかり、うわの空で返事をした。情けないけれど、こうなったら彼女に相談して、レジまでお金を払いに行こう。
「〇〇ちゃん、ここいい?」
「いいよ、空いてるから」
 間の悪いことに、女性の同僚が隣に座ってしまった。とても相談できる雰囲気ではない。困った。
 無銭飲食が、こんなに居心地の悪いものとは知らなかった。今では、定食の味もわからないくらい動揺している。世の犯罪者たちは、相当頑丈な心臓を持っているのだろう。私には無理だ。
 一気に口数が少なくなってしまった。女性も隣の同僚も食べ終わり、席を立つ。
「出口で清算しますので、現金のご用意をお願いします」
 彼女の視線の先を見ると、レジが3つ並んでいた。
「なるほど、食後に支払いをするシステムなんですね」
「はいそうです」
 こういう情報はもっと早く教えてほしかった。犯罪者にならなかったことは嬉しいが、そんなこんなでお昼を食べた気がしない。
「460円です」
 清算後は、やたらとすがすがしかった。使用済みの容器とトレイは、ベルトコンベアーに載せる。洗い場につながっているのだろう。なんと合理的な。前払い制度しかないと思いこんでた自分が恥ずかしい。
 まあ、これも社会勉強だ。
 懲りずに、他の社員食堂にも行ってみたい。


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開かずの踏切

2017年02月05日 21時35分00秒 | エッセイ
 9月からスポーツクラブに入会したので、今月で5カ月目になる。
 最初の頃は、スカッシュの前に準備体操をして、スカッシュのあとはプールに入ったり、自転車こぎやジョーバなどのマシンにまたがったりしていた。しかし、今では何の準備もせずにスカッシュを始め、終わったらスパで温まって終わり。筋肉痛を防ぐため、多少はマッサージをしてごまかす。手抜きしている自覚は十分あった。
 今日は娘がいないため一人で出かけた。雨が降りそうな雲行きだったが、自転車で行った。一人だと、スカッシュは20分で汗だくになる。あとは汗を流してスパにドボン。1時間以内に戻ってこられるところが魅力だ。
 着替えてクラブを出る。自転車のサドルは濡れているが、雨はやんでいる。ラッキー!
 また降り出さないうちに帰らねば。家に帰るには、私鉄の踏切を越えなければならない。踏切が開いているときと、閉まっているときの確率は五分五分だ。今日はどうかなと自転車を走らせ、異変に気づいた。
「カーンカーンカーン」
 踏切は閉まっていたのだが、通過するはずの場所で、なぜか電車が止まっている。上り電車が通り過ぎるための警報なのに、それが駅でもない場所で立ち往生するとは尋常でない。事故か?


 (写真は本文と関係ありません)
 私は迂回路を探した。右に細い路地があるから、そこに入って別の踏切を探そう。ここから多少離れれば、開いている踏切があるはずだ。だが、周りの歩行者や自転車を見ると、Uターンするのは私しかいない。
 マジ?
 明らかに異常事態が起きているのに、なぜ、この人たちは黙って待つことができるのか。5分待っても踏切が開く保証はない。10分なのか30分なのか、復旧作業が終わる時間はわからない。
 若いカップルが、ニヤニヤしながら遮断機をくぐり抜けてきた。小学生が母親に「危ないからいけないんだよね」と言いつけている。気持ちはわからなくもないが、私は真似しない。渡れる踏切を探せばいいだけの話だ。
 走ってからわかったことだが、すでに電車は上りも下りも運転を見合わせていたらしい。あちこちに電車が止まり、すべての踏切が騒がしくシャットアウトされていた。
 クソ~、踏切がダメなら立体交差まで走る!
 ここは地元だ。どこに何があるかはわかっている。何が何でも雨が降る前に帰る。ペダルをこぐ速度を上げ、立体交差にたどり着いた。線路の下を走り抜ける。上りがキツかったけれど、「これで家に帰れる」という安心感が勢いを取り戻した。
 15分遅れで家に到着した。強制的に、自転車こぎの運動をさせられたから、コートの中には熱気がこもっている。こんなときに限ってフリースを着ていた。暑い暑い、汗だくだ。
「今日はついていなかった」などとは思わない。
 サボりがちの運動ができたし、エッセイのネタもゲットした。雨にも濡れなかった。
 夕飯は麻婆豆腐。さあ、ハイネケンで乾杯しよう。


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歳三愛

2017年02月02日 21時43分52秒 | エッセイ
 30代で浅田次郎の『壬生義士伝』を読み、大泣きした。それまで、新選組は単なる人斬り集団に過ぎないと思っていたが、大きく見方が変わった。
 40代で司馬遼太郎の『燃えよ剣』を読んだ。名前しか知らない土方歳三に興味を持ち、どんな人だったのかと検索してみたら……



 正直いって、こんな美男だったのかと驚いた。今は「イケメン」という一言で片づけられそうだが、二枚目、色男、美丈夫などの、ちょっとレトロな表現が似合う。
 このときから、私には「歳三愛」が芽生えたようだ。
 東京都日野市は歳三の出身地である。たまたま新聞に「新選組のふるさと歴史館」なる施設が紹介されていたので、「きゃっほ~」とダンスするような足取りで遊びに行ってみた。
 入場料は200円。しかも、有効期限が14日間と長いところが珍しい。
「おおっ」
 エントランスを飾っているのは、東京都立日野高等学校の生徒の作品であった。



 この歳三は、190,800本もの爪楊枝でできている。黒、灰色、白などで色付けした爪楊枝を、一本一本差し込んで、幕末を代表する美男子を作り上げたというわけだ。表情も衣装も、肖像画の歳三を上手に再現できている。きっと、歳三ファンの女子や、伝説の剣豪に憧れる男子が、愛情込めてせっせと差し込んだのだろう。
 近くには、江戸の町並みを背景にしたフォトスポットや



 歳三とのツーショットが楽しめるセットもある。



 うふふふふ~♡

 常設展と特別展の「剣客集団のその後」を見て回り、落ち着いたところで撮影タイムにした。
 この施設は、衣装体験ができるところが素晴らしい。当時の衣装は一枚も残っていないそうだが、資料などを参考にして製作したと聞いた。浅葱色のダンダラ羽織は、背にも「誠」の文字が入っている。




 鉢巻きにも「誠」の文字があり、ギュッと額に締めて、歳三の隣でパチリ。



 着付けは館内のスタッフが手伝ってくれた。感謝感激。タートルネックを着ていたものだから、隠すのに一苦労した。
 ちなみに、歳三と同じ黒の洋装も着ることができる。双子のように、おそろの衣装を着て並んで写るもよし。
 みやげに歳三の一筆箋を買う。クリアファイルもあり、どちらにしようかと悩んだ。
 私の入場券は、2月11日までが有効期限となっている。
 日に日に膨らんでくるのは、「洋装も着たかったな」という想い。
 爪楊枝アートや、歳三とのツーショットを目当てに、また行っちゃうかもしれない。


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