これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

実践『夜だけ美容断食』

2015年04月30日 22時09分03秒 | エッセイ
 昨年11月にこの本を買った。



 宮本洋子『夜だけ美容断食』
 これは、人気エステサロンの女性オーナーが考えた美肌術で、夜は洗顔のみで化粧水も美容液も何もつけないシンプルスキンケアである。寝ている間に、お肌の老廃物を排出し、肌本来の力を取り戻すというものだ。
「以前より肌の状態がよくなった」人100%という挑発的な文字にも惹かれた。
 石けん素地100%の純石けんを準備して、12月からスタートした。まずは、純石けんを泡立て、ティースプーン1杯の牛乳で伸ばす。純石けんは洗浄力が強いので、牛乳を混ぜることでマイルドにするのだ。これで顔を洗い、ぬるま湯で流すだけ。簡単なのはよいが、翌朝つっぱってカサついた。
 うむむむむ。
 朝も、純石けんプラス牛乳で洗う。紫外線からお肌を守るため、洗顔後には化粧水とクリームを塗り、お肌にバリアを張るらしい。塗ればしっとりするが、夜に何もつけないと、またカサカサに逆戻りだ。
 私は牛乳の量がいまひとつわからず、いつまでたってもこのサイクルを繰り返していた。「3週間でみるみるクスミや乾燥がなくなり、自然な美白肌になる」とあるが、1カ月たっても実感がない。
 うむむむむ。 
 それでもやめなかったのは、このスキンケアが楽で安上がりだからだ。「まあ、そのうちピカピカになるでしょ、見てなさい」と、何の根拠もなく信じていた。
 私はコンタクトレンズユーザーなので、朝晩はアイボンで目を洗浄する。このとき使う計量カップを見て、ある日、ビビッとくるものがあった。

 このカップで牛乳を測ればいいんじゃない!?

 予感は的中。10ccの線まで牛乳をつぎ、控えめに泡立てた純石けんに混ぜると、カサつきが収まってきた。



 今まで、洗浄力が強すぎたのだろう。ポイントは、石けんに牛乳を混ぜるのではなく、牛乳に石けんを混ぜるつもりで洗うことだ。さらに、こすらないように気をつけて、なでるくらい優しく手を動かすとよい。
 1月末から要領をつかんだせいか、今では睡眠5時間の日が続いても、お肌だけは張りがあって元気だ。小ジワも大ジワも、目立たなくなってありがたい。
「以前より肌の状態がよくなった」人100%は、ウソではなかった。
 出会えてうれしい本のひとつである。


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ワイン愛

2015年04月26日 12時01分59秒 | エッセイ
 先日、「ホビークッキングフェア 2015」のチケットをいただいた。
 一度も行ったことはないが、ホームページには、パンや豆腐、米、飲料、寿司などの販売や試食、ワークショップなども実施するとある。開催場所の東京ビッグサイトまで、姉を誘って出かけることにした。



「ヨーグルトいかがですかぁ~」
 会場入口で、早速ヨーグルトの試食に出くわした。新商品なのだろうか。ありがたくいただくことにした。



 甘さ控えめのためか、酸味がやや目立つけれど、さっぱりして夏向きのだった。
 ぬれ煎や甘納豆はスルーして奥に進むと、テーブルやイスの並んだブースがあった。壁には、個性豊かな流線型のボトルが並んでいる。
「あ、ここ、ワインだよ」
 のん兵衛の姉を肘でつつく。二人で立ち止まったせいか、中から男性が声をかけてきた。
「ワイン、お好きですか? どうぞお掛けください」
 イスを勧められ、姉の顔をチラリとのぞきこむ。姉はニンマリ笑い、「もちろん飲むわよ!」という目を返した。偶然とはいえ、ワインの前にヨーグルトを食べているから、タイムリーである。
 ここのワインは、飲食店に卸すことを主にしており、市販されていないらしい。卸値で販売する数少ない機会と説明された。
 まずは白。男性が左端のボトルから、葡萄の品種や特徴を説明したあと、プラスチックの試飲容器に中身を注ぐ。4種類飲んだが、お値段は2000円台から6000円台で、思ったよりもリーズナブルだ。姉は興味を示していたが、私はピンとくるものがなかった。
 次に赤。男性は、さらに4本のボトルを持ってきて、小豆色の液体をカップに注いで手渡す。私は赤のほうが好きなので、ワクワクしながら待った。
「あ、美味しい」
 この中に、口当たりが柔らかくて、舌を包み込むように広がるスペイン産ワインがあった。酸味と渋みのバランスがとれていて、後味もソフトで申し分ない。どこに出しても恥ずかしくない、自慢の息子とはこういうものであろう。自宅で飲むもよし、友人へのプレゼントにもよし。一瞬で買うことに決めた。
 試飲後のカップがテーブルにあふれたが、まだ続きがあった。



「デザートワインはいかがですか?」
 姉は甘いワインが苦手だが、私は得意中の得意だ。喜んで手を出した。
「このボトルはヴァイオリンの形をしています。もしかしたら、チェロかもしれませんね」
「まあ、ユニーク!」
 ボトルも味も気に入った。甘いものに目がない母も飲みたがるだろう。これは親族の宴会用によさそうだ。
 このあと、珍しいワインやアイスワインなども飲ませてもらって、購入手続きに進む。姉は白を中心に3種類、私は赤とデザートの2種類にした。時計を見ると、50分もいたことがわかり、急いでランチの店に向かう。
 アルポルト 東京ビッグサイト店。



 イベント以上に楽しみだったのが、ここでのランチである。あわただしい平日と違って、姉とおしゃべりしながら手の込んだお料理をいただけるのだから、生き返る心地がする。
「ビールにする?」
「ワインはもういいよね」
 さすがに12種類も試飲すると、ワイン以外のものが欲しくなる。試飲だけで私はでき上がっていたが、姉は飲み足りなかったようだ。
「ビール、もう一杯ください」
 ……このペースにはついていけない。
 食後は再び展示会場に戻り、ソフトクリームを食べたり、豆腐やかまぼこの試食をした。



 デコ寿司の技術にはつくづく感心させられる。



 入れ代わり立ち代わり、カメラを向ける人がやってきた。


 
「もう十分だね~」
「ワイン買えたしね~」
 東京ビッグサイトは少々遠かったし、仕事で疲れていたけれど、行くだけの価値はあった。
 ワインさん、ワインさん、早くいらっしゃーい!


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戻ってくるチケット

2015年04月23日 21時30分07秒 | エッセイ
 ちょうど1カ月前、ルーブル美術館展に行った。(関連記事はこちらから)
 3月までは高校生だった娘用に、前売券を買っておいたのだが、実は役に立たなかった。
「ただいま、高校生無料期間となっておりますので、チケットは次回にお使いください」
 入口のお姉さんに優しく言われ、チケットがそのまま戻ってくる。これは計算外だ。娘は10日後から大学生だから、以後は使うわけにいかない。無駄にするのもシャクなので、欲しい人がいたらあげることにした。
「ルーブル美術館展に行きたい人~」
 勤務先の高校で、自分のクラスの生徒に聞いてみた。
「シーン」
 ダメだ、まったく反応がない。テレビの話題ならともかく、美術館には興味がないようだ。ちょうど春休みに入ったこともあり、そのまま忘れてしまった。
 4月に入り、新しいクラスで授業をする。今年はひとつ、イラストの授業を受け持つことになった。
「えっ、俺、絵なんて描けないよ。間違えて取っちゃった」
「アタシは、楽だと思って選んだんだよね」
 気合いの入った私とは逆に、やる気のない生徒が多くてガッカリする。
「さあさあ、課題をやらないと、検印押さないからね」
「えー」
 強制しないと絵を描かない者がいる一方で、目を輝かせて課題に取り組む生徒もいる。マリカもその一人だった。特に上手というわけではないけれど、納得のいくまで描き直し、口も利かずに黙々と筆を走らせている。
 この子は、本当に絵が好きなんだなぁ……。
 その瞬間、チケットの存在を思い出した。
「ねえ、マリカちゃん。ルーブル美術館展には行った?」
 マリカは、話しかけられたことに気づき、ゆっくり顔を上げた。
「……いえ、行ってません」
「もしよかったら、これ、もらってくれない?」



 チケットを差し出すと、のけぞるように彼女は上半身を動かした。
「えっ、いいんですか?」
「1枚しかなくて悪いけど、6月1日までやってるから、どうかなと思って」
「行きます、行きたいです!」
 人選は正しかったようだ。チケットとリーフレットを封筒に入れて渡すと、彼女は両手で大事そうに受け取り、すぐカバンにしまっていた。授業のあとも、わざわざ私のところまで来て「ありがとうございました」と言って帰ったくらいだ。こちらのほうが、得した気分になれてうれしい。
 仕事の帰りに、ファミリーマートに寄った。あれこれ買ったら700円以上になったので、1回くじ引きができると言われた。
「おめでとうございます、ラ王が当たりました!」
 ドーン!



 くじ運が絶望的な私なのに、まさか実用的なものが当たるとは。自分でもビックリした。
 チケットが姿を変えて、またもや戻ってきたような気がするのだが。
 家に着くと、私よりも夫と娘が喜んでいた。
「わーい、ラ王だ、ラ王だ♪」
「明日食べよう☆」
 ……果たして、私の分は残っているのだろうか。


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転入生がやってきた

2015年04月19日 21時16分17秒 | エッセイ
 私のクラスで転入生を受け入れることになった。
「え~、メッチャ可愛いじゃん」
 他県から引っ越してきた女の子だが、美少女という言葉がピッタリの端正な顔立ちで、実に目立つ。教室に連れて行くまでに、廊下を歩いていた生徒がみな振り返っていた。
「早川楓です。よろしくお願いします」
 もちろん仮名であるが、「実名出しちゃっていいんですか?」といらぬ心配をされてもいけないので、念のため……。
 楓ちゃんは、後ろの席の女子と仲良くなったようだ。彼女も大人びた美人なので、二人揃っていると人目を引く。
「いいな、笹木先生のクラス。可愛い子ばっか」
 隣の組の男子が羨ましがっていた。転入生がひとり増えただけで、平均点がグンと上がったらしい。私が褒められたわけでもないのに、なぜか「ほっほっほ」と得意になって笑う。女子だけでなく、男子も何人かはイケメンなのだが、そこはスルーされた。
 顔だけよくて、性格の悪い生徒もいる。でも、楓ちゃんは違うようだ。
「女子の保健委員、誰かやって~」
 年度初めには係や委員会を決めるのだが、健康診断で一日駆り出される保健委員は人気がない。男女ひとりずつ決めなければならず、私は生徒に声をかけていた。
 すると、楓ちゃんの手が上がった。
「あのう、私でよければやりますよ」
「えっ、ホント? うれしい~!」
 早速、黒板に名前を書こうとチョークを握った。しかし、手が動かない。

 あれ? 楓ちゃんの苗字、何だっけ……。

 こういうときに限って、教室は静まり返っている。頭の中は、真っ白というより、がらんどうのようだ。まったく苗字が思い出せない。年はとりたくないものだ。
 苦しまぎれに、私は「楓」と書いた。
「先生! 何で苗字じゃないの?」
「名前忘れちゃダメじゃん!」
 次の瞬間、苦笑と同時にヤジが飛んできた。
「ひええええ~」
 名簿で名前を確認し、「早川」と訂正する。あとは平謝りだ。
 いかん、いかん。


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簡単ヒレカツの作り方

2015年04月16日 21時20分54秒 | エッセイ
 年度初めでメチャクチャ忙しい。数日前は帰宅が23時半になり、これまでの記録を塗り替えた。
 活動時間が長いせいか、体重もガクッと減っている。反動で、こってりした揚げ物が食べたくなった。
「そうだ、ヒレカツ、ヒレカツ」
 明日のお弁当のおかずが決まり、まだ店が開いているうちに職場を出る。豚ヒレブロックを買い、カツを作り始めた。
 時間短縮のため、尊敬している家庭料理研究家・奥薗壽子さんの本を取り出す。



 この先生は、いかに手早く簡単に美味しいものを作るかを教えてくれる。時間にゆとりのない主婦の味方だ。
 まず、ポリ袋に小麦粉大さじ4と鶏卵を割り入れる。


 
 水を少々加えて混ぜたら、小さく切って塩胡椒したヒレ肉を放り込んで、なじませる。



 袋の上部を切り開き、パン粉を広げてヒレ肉にまぶす。



 私は今まで、ヒレ肉に小麦粉をつけ、溶き卵をくぐらせたあとパン粉をまぶしていた。時間がかかって面倒だったが、これなら楽にできる。
 衣をつけたところで、ラップに包んで冷蔵庫に入れる。あとは、翌朝5時に起きて揚げるだけだ。



 カリッとして美味しい。手早くできる割に、味はいつもと変わらないところがいい。
 ついでに、食後にはコンビニで買ったバウムクーヘンを食べ、甘味も補充した。
 歯みがきをする頃には、力がむくむく湧いてきた。
「さあーて、午後の部いきましょうか」
 忙しいときほど、食べる楽しみが大事!


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妖艶なアマリリス

2015年04月12日 19時45分19秒 | エッセイ
 2011年の年末に、妹からアマリリスをもらった。
 2012年のお正月には花を咲かせ、楽しませてくれた様子をブログに書いたことがある。
(アマリリス日記はこちらから)
 2013年、2014年も、春の訪れと同時に咲き誇り、家族から「キレイだね」と褒められていたのだが、この冬には葉が枯れてしまった。薄茶色と化した細い葉が、鉢から力なく垂れ下がっている。まるで、死人の腕がベッドからはみ出しているようで、見ているだけで痛々しかった。
 捨てようかどうかと悩んでいたら、3月末から、また緑の茎を伸ばし始めた。茎の先にはつぼみがついている。
「あっ、アマリリスが咲きそう! すごい生命力だね」
 興奮して話すと、夫も娘も驚いていた。
「本当だ、枯れているみたいだったのに」
「捨てなくてよかったよ」
 水をやると、グングン伸びてつぼみが膨らんできた。このアマリリスは、四面に花をつける品種なのだ。まず最初のひとつが咲くと、2日後には反対側の花が開く。



 その2日後には3つ目の花、最後は4つ目の花が揃う。前後左右にラッパをつけたように賑やかだ。
 女優のような華やかさに、写真を撮る手にも力が入る。



 もしや、最後の力をふりしぼって咲いたのだろうか。
 そう思うと、何か特別なことをしたくなった。
「ライトアップしてみようかな」
 東京の桜は終わっているが、昼に見る桜と違って夜桜は独特の妖艶さがあった。あれをアマリリスで再現できないだろうか。
 廊下の暗がりにアマリリスの鉢を持ってきて、下から懐中電灯で照らしてみた。



 当たったところが悪かったのか、怒っているように見える……。
 少しずらすと、アマリリスの表情も変わっていく。





 大人びた雰囲気に満足し、撮影を終えた。
 パソコンで、「アマリリス 寿命」というワードで検索してみると、決して短命な植物ではないらしい。
「うちのアマリリスはもう70年も生きています」といった投稿もあり、勇気づけられた。
 じゃあ、来年もライトアップして撮影できるかもしれない。
 今度は、蛍光灯にセロハンをかぶせて、シックな撮影会にしたいものだ。


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煎餅愛

2015年04月09日 21時10分59秒 | エッセイ
 オーブントースターの扉を開けると、つられるように、焼き網が体を伸ばした。思ったより、幅が広いことを確認し安堵する。
 昨年、どこぞの学園祭でアツアツの焼き立て煎餅をいただき、でき立ての香ばしさから煎餅愛が芽生えている。たまたま生協のカタログに、「オーブントースターで3分焼いてできあがり」という煎餅生地が載っており、勢いで買ってみた。



 ところが、落としぶたのようにバカでかい生地が届き、「大きいけど入るかしら」と困惑していたところである。でも、これなら何とかなりそうだ。
 袋を開けて生地を出す。5mmほどの厚さがあり、やたらと硬くておしろいを塗ったように白い。舞妓さんのように、赤い口紅が似合いそうだ。中心部には空気抜きと思われる穴が、6か所開いていた。



 焼き網に生地を載せ、扉を閉める。そそくさと、網が奥に引っ込んだ。あとはツマミを3分にセットして待つだけだ。ほんわかと、餅の焼けるようないい匂いが漂ってきた。
 チ~ン。
 もう一度、扉を開けて驚いた。先ほどの色白な舞妓さんは、日焼けサロンで小麦色に変身しているではないか。平板な生地が膨らみクレーターに似た凹凸が出現すると、まん丸のお月様に見えてきた。



 刷毛で醤油を塗ると、月はジュッと声を上げた。「もっと優しく塗りなさいよ」と叱るみたいに。それではと丁寧に重ね塗りをして、褐色のお月様に変身させる。



「ねえ、焼き立て煎餅食べる?」
 夫と娘に勧めてみたが、「いらない」と冷たく断られた。煎餅愛を抱いているのは私だけなのだろうか。醤油を塗って塗って塗りまくっても、パリパリした歯ごたえがたまらないのに。
 月のウサギが餅をつく、という伝説は嘘だ。
 本当は、うるち米をついていて、煎餅を作っているに違いない。


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ノー勉 マグリット展

2015年04月05日 20時15分46秒 | エッセイ
 ほとんど勉強せずに試験に臨むことを「ノー勉」という。「世界史はノー勉だったけど、思ったよりできた」などの使い方をする。
 私が学生のときは、よほど自信のある科目でないと、ノー勉で受験することはなかった。いい学校に合格して、いい会社に入ることが求められていたし、友達も同じように考えていた。つまり、それがスタンダードだったわけだ。
 しかし、卒業してから何十年も経って、ノー勉ではいけないと思い知らされることがあった。
 6月29日まで、国立新美術館で開催されている「マグリット展」である。



 この絵には、「ゴルコンダ」というタイトルがついている。宙に浮かぶ紳士は3種類。手前の紳士は大きく、中くらいの紳士、小さな紳士を描くことで、遠近感を表しているそうだ。
 だが、実際にこのような現実離れした光景はありえない。マグリットは、シュルレアリスムといって、現実を無視した世界を写実的に描いた画家のひとりである。新聞の特集を見て、おもしろそうだと飛びつき足を運んだのだが、甘いものではなかった。
「高校生の方には、こちらを差しあげております」



 一緒に出掛けた娘に、ジュニア向けの冊子が渡される。絵の楽しみ方を解説したものらしい。
 


「よかった、空いてるね」
 この美術館の最終入場は5時半までだ。私たちが着いたのは5時ごろだったし、平日ということもあって、会場には人がまばらだった。これなら落ち着いて見られる。
 端からじっくり見ていくと、「心臓の代わりに薔薇を持つ女」「博学な樹」「困難な航海」「彼は語らない」など、絵だけでなくタイトルまで難解な絵が続く。
「はあ?」
「なんじゃこりゃ」
 絵はすごく上手である。色づかいもシャレているし、デッサンの狂いはない。しかし、何が言いたいのかまったく理解できない。
「発見」という絵のところで、娘が冊子を差し出した。
「お母さん、この絵は説明があるよ」
「どれどれ」



 この絵はメタモルフォーズ、つまり「変身」がテーマになっており、なめらかな女性の肌を木の模様にしているそうだ。家具や床の木目は美しいが、顔や体の木目はおどろおどろしい。こんな組み合わせを見つけてしまうのが、マグリットの非凡なところなのだろう。
 冊子のおかげで、「ことばの用法」「人間の条件」「空気の平原」「ヘーゲルの休日」「旅の思い出」「記念日」「王様の美術館」「透視」の意味するところはわかった。
 だが、作品は全部で131点ある。「白紙委任状」「光の帝国Ⅱ」「恋人たち」など、メディアで解説されているメジャーな作品はともかく、ちんぷんかんぷんの絵が多いこと多いこと。
 リーフレットの背面にある「空の鳥」は、ユーモアが伝わってきたが、これは例外である。



「足が疲れたから座る」
 娘はすっかり退屈してしまい、絵を見る作業を放棄してベンチに腰かけている。私は一人で回りながら、「もっと予習してくればよかった」「ケチらないで音声ガイドを借りればよかった」などと後悔しまくりだった。
 作品リストを見ると、残りの絵はあとわずか。問題が全然解けていないのに、残余の時間が5分しかない受験生の気分である。

 くっそ~!

 出口の表示を見て、時間切れになったことを悟った。言いようのない敗北感が、むくむくと頭をもたげてくる。意外に私は、負けず嫌いなのだ。
 もっとマグリットの絵を勉強して、出直すべきか。
 出直したときは、追試を受ける気分となるに違いない。


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2015 結婚記念日ランチ

2015年04月02日 20時47分58秒 | エッセイ
 夫婦仲がいいとはいえない私たちだが、どうにか、23回目の結婚記念日を迎えることができた。
 ここ数年は、家族3人で美味しいものを食べ、お花見をするパターンが定着している。(靖国神社の桜はこちらから)
「え? 満席ですか?」
 ときは3月末。六本木のグランドハイアットでランチをしようと思ったら、どのレストランも予約が取れなかった。4月ならば空席があるところを見ると、送別会などで利用するグループが多いようだ。来年は、もっと早い時期から予約攻勢をかけねばならん。
 しかし、池袋は空いていた。ちょうど通り道だし、味で負けているわけではないので、パリの朝市に予約を入れる。
「いらっしゃいませ」
 ここには何度か来ているが、店内の装飾が私の好みである。
「Cコースでいい?」
「え~、いかすみって書いてあるよ」
 最初、娘は歯の汚れるいかすみに抵抗した。しかし、メニューを比べてみると、やはりこれが一番よさそうなので、「まあいいか」と妥協していた。
「シャンパンください」
 まずは、泡もので乾杯する。といっても、夫は飲まないので私だけ。



 お楽しみ アミューズブーシュ。



 オーストラリア産天然タイガーエビとアスパラガスの温サラダ ラビコットソース。



 エビはブラックタイガーらしい。ほどよい弾力性があり、新鮮でとても美味しかった。
 コンソメスープ。



 見た目はジャスミン茶のようだが、れっきとしたスープであった。スープは、アツアツでも、ヌルヌルでもいけない。ほどよい温度でいただけて、次の料理がさらに楽しみになった。
 瀬戸内の舌平目のファルス包み 春キャベツのクリームといかすみのレース。



 問題のいかすみは、上部の黒い網状のものであった……。
「えっ、これがいかすみ?」
「歯が汚れる心配ゼロじゃん」
「ははは、Cにしておいてよかったねぇ」
 淡白な舌平目を崩して、なめらかなクリームソースに合えると、とびっきりのごちそうが誕生する。さらに、キャベツの甘味が加わり、3人そろって「うーん、いい味」と唸ったほどだ。いかすみは、見た目の存在感こそ大きいが、味にはほとんど影響がなかった。
 特選山形牛 フィレ肉の網焼き わさびを添えて。



 これこれ。山形牛が食べたくて、Cコースを選んだのだ。山形で食べたものよりも、脂分が少なくてヘルシーだったが、ナイフが必要ないくらい軟らかかった。しかも、和牛らしい味が凝縮されている。
「うまーい」
「すごい!」
 わさびをつけると、ピリリとしてうまみが増すようだ。このわさびがまた、いい味だったりする。
「玉ねぎも美味しいよ」
「ホントだね」
 つけ合わせの野菜も完璧だ。やはり、私の嗅覚は正しかった。
 デザート ミルフィーユその他。



 もう入らないと思ったのに、甘味のバランスがよいケーキは、すんなり胃袋に収まってくれる。今年のランチは大満足のお味であった。

 これからも、美味しいものをいただくために、結婚生活を続けなくては!

 心の内で、グーに丸めた右腕を天に突き上げる。
 あれ? 結婚記念日って、何のためにあるんだっけ……。


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