これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

はかどる場所

2013年06月30日 20時22分22秒 | エッセイ
 勤務先の高校では、明日から期末テストが始まる。
「ねえ、マック行くでしょ。数学教えてよ」
 元気グループの女の子たちは、ファストフード店に集まり勉強するようだ。
 だが、おしゃべりばかりで、勉強は進まないかもしれない。
「弟がまだ赤ちゃんなので、家では勉強ができません。図書館は何時まで開いていますか」
 真面目だけど成績がイマイチのハルナは、放課後の1時間半にすべてを賭けているらしい。自分の部屋で、静かに勉強できる者は恵まれているのだ。
「音楽聴いてないと寝ちゃうんだよね。やっぱりEXILEは最高!」
 イヤホンを耳から外さないミユキは、注意力が足りなくて、いつもくだらないミスをする。
 私が高校生のときは、家で勉強するのが当たり前だった。なるべく早く家に帰ってきて、着替えたらさっさと机に向かう。2時間後には夕食休憩をし、食後にまた勉強したらお風呂に入り、あまり遅くまで頑張らない。
「家だと、テレビ見ちゃって勉強できない」という友達もいたが、私の部屋の娯楽は漫画くらいだったから、できたのかもしれない。
 それに比べると、今の子は大変だ。LINEやツイッターに時間を取られ、集中できないこともあるらしい。レスが遅いと、「つき合いが悪い」と陰口を言われるという。授業中に携帯を使って取り上げられた生徒は、放課後返却したときに「メールが386件たまってる」とボヤいていた。
 全部読むのかいな……。
 何かと雑音の多いこの時代、生徒もあれこれ苦労している。
「先生、どこで勉強すれば、いい点とれるかな」
 下から数えて何番目のエイイチが、軽いノリで聞いてきた。
 個人的には、子どもが来ないスタバやドトールなどのコーヒーショップが落ち着く。だが、オバさんの集団がいるとアウトだ。どうでもいい話をベチャベチャと続け、ワアワア騒いで何時間でも居座っている。
 空いている時間帯のファミレスもいい。飲み物のおかわりができるし、大きなテーブルも魅力だ。
 しかし、何といってもおススメなのは、病院の待合室である。小児科以外はどの科も静かだし、遊びたくなる誘惑がない。携帯もご法度だ。人目があるから寝るわけにもいかない。テーブル代わりのクリップボードに紙をはさみ、いくつものエッセイを仕上げたことか。自己申告書や予算申請書なども、ここに来れば不思議なくらいスムーズに進んだ。
 問題は、病院が勉強や仕事のためではなく、病人のための施設であるということだ。定期的に病院通いをしていたときは、その恩恵に預かれたが、今はもう一年以上もご無沙汰している。何となく物足りない。
「うーん、やっぱり図書館じゃない?」
 エイイチには無難な答えを返したが、心の中ではひそかに「病院!」と叫んでいた。
 どこか、いい場所ありますかしらん?


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麻里子さまの卒業公演

2013年06月27日 21時24分05秒 | エッセイ
 高2の娘は、AKB48が大好きだ。
「ねえ、お母さん、福岡ドーム行きたい! 麻里ちゃんの卒業公演があるんだよ」
 先日、卒業を発表した篠田麻里子の、最後のステージを見たいのだという。
「東京からじゃ、日帰りできないでしょ」
「ホテルに泊まる」
「誰か一緒に行ってくれるの?」
「誰も」
「無理じゃん」
「どうせ、かなりの倍率になるから当たらないよ。応募するだけしてみる」」
「あっそ」
 と、高をくくっていたのだが……。
 予想は見事に裏切られた。
「お母さん! 当たった、当たった! 信じられな~い!!」
「ええーっ」
「絶対行くぅ~!」
 これは困った。まさか当選するとは。犬のようにハッハッと興奮している娘を落ち着かせ、話を進める。
「いつなの?」
「7月20日だよ!」
 フンッと、荒い鼻息が腕にかかってきた。
 夏休みの初日である。仕事はないから、行かれないことはない。
「しょうがないな、じゃあ一緒に行ってあげるよ」
「ホント? やったぁ~!」
 興奮は最高潮に達し、彼女はその辺で跳ね回っていた。
 ドームに入るのは娘だけだが、行き帰りの飛行機とホテルは、一人で行かせるのが不安だ。だったら、観光も兼ねて、福岡にお泊りするのも悪くない。
「じゃあ、ホテルを検索しよう」
 福岡のめぼしいホテルをネットで検索すると、予約画面でつまずいた。
「ただいまアクセスが集中しております」
 おそらく、福岡に当選した者たちが、一斉に予約をしているのだろう。AKB人気には、いつも驚かされる。
「じゃあ、電話してみる」
 娘は直接フロントにかけてみたが、同じことだった。
「申し訳ございません。ただいま、混雑しておりまして、すぐにお答えできませんので、折り返しお電話いたします。番号を教えていただけますか」
 結局、このホテルには断られてしまった。相当な人数が殺到したのだろう。受話器からも混乱した様子が伝わってきたそうだ。ひっきりなしに鳴り続けるベルの音、対応に追われる男女のていねいな声……。一体、何時まで続いたのだろうか。
 その後、どうにか別のホテルを押さえることができた。
 次は航空機だ。とれないのではないかと心配だったけれども、翌日、娘が学校の帰りに旅行代理店で無事ゲットしてきた。
「お母さんは付き添いだから、ホテル代も飛行機代もミキが払うよ」
 おっと、これも予想外。
 母親へのボーナスといったところだろうか。
 今度は私が、舌を出してハッハッとする番である。
 夏休み早々の福岡旅行、楽しませてもらいます!
 ワオーン♪


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ドジにつける薬

2013年06月23日 20時03分01秒 | エッセイ
 昨日は、レオナルド・ダ・ヴィンチ展を観に出かけた。
 東京都美術館に着く前に、腹ごしらえをする。テーブルに座り、ランチの到着を待っていたら、家族連れのお父さんがお冷やをひっくり返していた。

 あーあ、ドジだね……。

 こちらは何のトラブルもなく食事が終わり、美術館に向かう。



 何とも肩すかしな展示で、本人作の絵画は「音楽家の肖像」1枚だけ。あとは、弟子の作品や本人の下絵、難解な手稿ばかりだ。アタマの悪い私には理解できない。
「つまんないよー! 時間の無駄」
 高2の娘には、さらに荷が重かったらしい。適当に見て、お茶して帰ることにした。
「カフェラテと、アイスラテをください」
 セルフサービスのカウンターで、飲み物を注文する。紙コップのドリンクを、トレイに載せて席まで運んだときだった。娘のアイスラテを持ち上げた拍子にブラウスの袖が触れ、ホットのカフェラテがコロリとひっくり返った。
「キャー、あちちちちち」
 紙コップでなければ、こんなに簡単に倒れなかっただろう。それがとても悔しい。こぼれた液体は、娘をめがけて走り出し、制服のスカートにゴールした。
「大丈夫ですか!?」
 店員が布巾を持って駆け付けた。しかし、スカートにはどす黒い汚れがついている。クリーニングに出さねば……。
「お母さん、あそこでスカート売ってる。汚いスカートはいて帰るの恥ずかしいから買ってきて」
 上野のエキュートには、雑貨や衣類を売っている店があった。ストライプのスカートが目に入る。ペラペラの素材で、推定2000円ほどだ。だが、手に取ると、足元を見るかのように、6300円の値札がついていた。背に腹は代えられない。時間だけでなく、お金も無駄になってしまった。
 そして、今日は、日曜日だというのに休日出勤だった。
 6時半に家を出て、ようやく4時に終わった。5時には家の最寄駅に着く。小腹が空き、イートインコーナーのあるパン屋さんに寄った。
「すみません」
 隣の席に、年配の女性が駆け寄ってきた。どうも、テーブルの下に手提げを忘れたらしい。

 ドジだねぇ……。

 私はカフェラテが好きだ。労働のあとは、特に飲みたくなる。カスタードクリームがたっぷり入ったパンを食べ、満足して家に着く。コンタクトレンズを外そうとして、リュックがないことに気づいた。

 ああっ、あのパン屋に置いてきたんだ~!!

 あわてて駅まで戻ると、案の定、テーブルの下に置き去りになっている。
 クスン。
 昨日も今日も、ドジな人の真似をして、同じ失敗をしているのはなぜだろう。
 自己嫌悪で、大変悲しくなった。

 こんなときは……。



 勉強するのが一番。
 ドジにつける薬です。


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ご縁は続くよどこまでも

2013年06月20日 20時47分35秒 | エッセイ
 卒業生の美紀ちゃんからメールがきた。
「11月に結婚式を挙げることになりました。出席していただけますか」
 美紀ちゃんが高校に在学した3年間、担任は私だった。気の合う子だったし、卒業後も彼女が所属している楽団の演奏会などで、ちょくちょく顔を合わせている。教え子の晴れ姿が見られるのだから、喜んで出席させてもらうことにした。
 美紀ちゃんとは、いくつか共通点がある。まず名前。漢字は違うが、こちらの娘も「ミキ」だから、呼びやすかった。同じ区内で家も近く、うちから歩いて行かれる場所に住んでいた。血液型も同じO型だ。
 だが、メールに書かれていた結婚式場までもが、私と夫の披露宴会場と同じだったことには驚かされた。何しろ、そこは埼玉県である。私はさいたま市出身だから、地の利があって決めたのだが、彼女は都内だ。少々気になり、承諾の返事とともに、素朴な疑問をぶつけてみた。
「えっ、同じなんですか!? すごい偶然ですね。ダンナの従兄弟が働いている式場なんですよ」
 なるほど、そういうわけか。
 結婚式場などごまんとあるのに、不思議な縁である。
 私と美紀ちゃんをつなぐ糸は、これで終わりではなかった。
 6月16日の日曜日は夫の誕生日だった。「父の日バースデー」というタイトルの日記をアップしたところ、美紀ちゃんがコメントをくれた。
「うちのダンナも誕生日でした! これは運命ですか(笑)」
 なんと、一年には365日もあるのに、お互いのパートナーの誕生日まで一緒だったのだ!
 度重なる偶然に、空恐ろしくなってきた。美紀ちゃんのダンナはタケちゃんといい、同窓生だから私も面識がある。そういえば、彼の受験票か何かを見て、「あら、この子、うちの夫と同じ誕生日だわ」と気づいたことを思い出した。
 とても他人とは思えない……。
 美紀ちゃんの結婚式にふさわしい服がある。
 彼女が高1のとき、遠足で横浜に行き、おみやげにチャイナドレスを買った。



 まだ一度も袖を通していないので、これにするつもりだ。
 11月では寒いかしら?


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父の日バースデー

2013年06月16日 20時46分39秒 | エッセイ
 12月25日に生まれた友達がいた。
「クリスマスと一緒にされちゃうから、誕生日なのに損した気分」
 彼女は毎年、そうボヤいていた。
 夫も、彼女の気持ちがよお~くわかるに違いない。
 今日、6月16日は彼の誕生日だが、父の日と重なっているのだから。
「今年はプレゼントなしってわけにいかないだろうな……」
 私は頭の電卓を叩いて考える。3月の結婚記念日には、ダイヤのネックレスをもらったから、何かあげるべきだろう。もらいっぱなしというのも気が引ける。

 そうだ、ポロシャツにしよう!

 実は、先日夫が、ギョッとするような柄のポロシャツを着ていた。



 色の組み合わせがおかしいのではないか? 少なくとも、私の美的感覚では受け入れがたい。しかも、牛のような体型をしている夫にはまったく似合わないので、着ないでほしいと思った。
 別のポロシャツをプレゼントすればよいのだ。
 だが、デパートに足を運び、私は仰天する。
「父の日のギフトにポロシャツはいかがですか~? 本日に限り20%引きです!」
「本日父の日で~す! ポロシャツはいかがでしょう」
 紳士服売り場では、どの店でもポロシャツセールをしているではないか。おそらく、父の日といえばこれなのだ。
「パパ、どれがいい?」
「うーん、じゃあこれにしようかな」
 家族と一緒に来ていた父親が、ニコニコしながら商品を選んでいた。ポロシャツ以外のものが欲しいとは思わないらしい。母の日とは大違いだ。
 呆然としている場合ではない。私も選ばねば。



 牛にも似合う一枚を選んでみた。
 しかし、家には思わぬ敵がいた。
「パパ、誕生日と父の日おめでとう~!」
 私がプレゼントを渡すと、娘も茶色の袋を取り出したのだ。
「ミキからもプレゼントだよ。お父さん、おめでとう」
「あ、ありがとう」
 まさか、娘がプレゼントを買っていたとは。
「池袋で2時間半もかけて選んだんだよ」
 こ、これは強敵だ! 私のポロシャツなんぞ、かすんでしまうかもしれない。
 包みを開けると、中に入っていたのは帽子だった。



「へー」
 これは結構なヒットだ。夫は外出するとき、たいてい帽子をかぶっている。そろそろ、くたびれてきたところだった。よく観察していると感心した。
「ねえ、ちょっと……。このポロに、この帽子、ピッタリじゃない?」
 何の打ち合わせもしていないのに、うまくコーディネートできていることに気づいた。
「ホントだ、さすがはミキのお母さんだね」
 夫は多くを語らなかったけれど、さっそくポロシャツに袖を通し、帽子をかぶって鏡を見ていた。
 誕生日と父の日が重なっても、決して損をしない。
 むしろ、喜びが2倍になるのかも?


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変な呼び方

2013年06月13日 21時34分12秒 | エッセイ
 前校長は、「生徒の人権」に敏感な人だった。
「先生方、生徒を呼び捨てにしているのであれば、それは人権問題です」
 くん、さん付けで呼ぶ先生のほうが少ないかもしれない。私もつけずに呼ぶほうだが、意識を変えなければという気がした。
 一方、私立のある高校では、「男女を問わず、生徒には『さん』付けで呼ぶよう指導を受けている」という。男子には『くん』というのも許されない。現に、社会では男性にも『さん』付けとなるから、そちらのほうが大人扱いをしていると感じる。個人的には好感が持てた。
 今年は、担任を持っていることもあり、生徒を「○○さん」「△△くん」と呼ぶよう努力している。
 だが、私語の多い生徒や、問題を起こす生徒にはつい、「○○!」「××!」と呼び捨てとなる。敬称をつけて注意すると迫力がないので、「ここは例外」と割り切る。メリハリをつける場面も必要であろう。
 私は授業中、なるべくたくさんの生徒を指名する。35人の生徒全員が当たることもあるくらいだ。
 昨日も、端から順番に生徒に答えさせていた。
「じゃあ、次は新井さん」
「石川くん」
 順調に進行し、授業の残り時間が10分となったときだった。中本という生徒の番で、なぜか舌がもつれ、思いがけない呼び方となった。
「次は、中本様」
 言った瞬間、しまったと思ったが、やり直すことはできない。
 一瞬、間ができる。
 呆然としている当人を差し置いて、周りの生徒がドッと笑った。
「中本様だって~!」
「あはははは」
 私も笑うしかなかった。
「やだね、様にしちゃったよ」
 ウケを狙って、さらに続ける。
「じゃあ、今度は中山様」
「はいっ」
 集中力が切れそうな時間帯に、やたらと盛り上がり、授業は終わった。
 同じネタは、もう使えないけどね……。


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ベルばらは永遠に不滅です?

2013年06月09日 20時15分08秒 | エッセイ
 少女漫画誌『マーガレット』に、池田理代子氏の「ベルサイユのばら エピソード」が載っていると、友人が教えてくれた。
 ベルばらは、大変好きな作品のひとつである。わずか17ページという短編ではあるが、迷わず買った。



 ページをめくると、ふろくの下敷きが顔を出す。



 ……いらん。
 あとで、娘に引き取ってもらおう。
 ベルばらは、121ページから載っていた。



 表紙を見て、私は愕然とした。

 もしや、このマイケル・ジャクソンみたいなのが、アンドレ!?

 絵のタッチが変わってしまったのは残念だが、長い時間が経っているのだから、仕方ないと自分に言い聞かせた。
 ストーリーは少々切ない。ジャルジェ家に引き取られる前、アンドレは幼馴染みの少女クリスティーヌから想いを寄せられていた。だが、まもなく、アンドレはパリに発ち、二人は離ればなれとなる。すっかり大人に成長したところで、二人は運命の再会を果たすのだが……。
 私は薄情者なので、何年も会わないと、誰だか忘れてしまう。記憶力はいいほうなのに、用のない人のことは、きれいさっぱり忘れることが多い。
 たとえば、一昨日、2年前の卒業生がやってきた。かろうじて、名前が出てきたからよかったが、来年だったら忘れている自信がある。同じ学校に何年もいるのは危険だ……。
 だから、もし私がクリスティーヌだったら、アンドレのことなど、頭の片隅にも残っていないに違いない。「えっとー、マイケルさんでしたっけ?」などと、とんちんかんなことを言いそうだ。
 ちなみに、作者の池田理代子氏は、大変記憶力に優れたお方らしい。
 以前、新聞記事で読んだことがあるのだが、連載中も膨大な数の資料が頭に入っていたという。
 アシスタントから「先生、○○の写真はどこにありますか」と聞かれたら、「××の147ページだったと思うわ」などと答えられたそうだ。たくさんの本の中から一冊を特定し、ページ数まで記憶できるとは驚きだ。凡人には到底マネできない芸当である。
 今回のアンドレとクリスティーヌも、作者と同様で記憶力がいいのだが、決して結ばれることのない恋の相手を、おぼえているメリットは果たしてあるのだろうか。思い出すと苦しくなるので、勝手な言い草だけれども、忘れてしまったほうが幸せだと思う。

 ベルばらの連載は、1972年から1973年にかけてだから、実に40年前のことである。
 社会現象にもなった作品は、今でも知名度が高い。
「そのブラウス、ベルばらみたい」
 


 私の服を見た生徒が、こんな言葉をかけてきたことがある。
「ラインに、ベルばらのスタンプあるよ」
 娘も、やはり知っていた。
 ベルばらは、永遠に不滅なのかもしれない。


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宇都宮お見舞いツアー(2)

2013年06月06日 21時14分09秒 | エッセイ
 入院中の祖母を見舞うため、高2の娘が一人で宇都宮まで行くことになった。
「さっき、ミキがおばあちゃんに欲しいものを聞いたんだけど、何もないって。花も水替えが大変だからいらないってさ」
 もらったばかりのメールを見て、娘は困惑気味だ。
「手ぶらで行ってもいいの?」
「うーん」
 祖母、つまり私の母は、昔から自分の希望を口にすることが苦手である。「あれが欲しい、これが欲しい」と言えず、いつも誰かが察してくれるのを待っている。希望が叶えば大喜びなのだが、気づいてもらえないと不機嫌になる。厄介な性格なのだ。
 頭の中を引っかきまわし、母の好きそうなものを思い出してみた。
「そうだ、怖い本だ」
「えっ、怖い本?」
 たとえば、これ。



 それから、これも。



「ええっ、こんなの、ミキが持っていくの!?」
 怖い話が苦手な娘は、一瞬「手ぶらのほうがマシかも」という顔を見せたが、それ以上は言わずにバッグにしまい込んだ。
「あと、コーヒー」
 母は、甘くてミルクの入ったコーヒーを好む。



「じゃあ、これも持って行ってね」
「ひー、重い! 肩が抜ける!!」
 娘は、昼ごろ出かけると言う。
 仕事の合間に携帯を見ると、娘からのメールが届いていた。
「湘南新宿ラインに乗り遅れた~! 新幹線で行くわ」
 ケッ! と鼻にシワを寄せたくなる。新幹線のほうが難しいのに、切符が買えるのか疑問だ。
 だが、どうにかなったらしい。
「無事、病院に到着!」
「今日はおじいちゃんも来てる。駅まで一緒に帰るからね」
「帰りの湘南新宿ラインに乗ったよ」
「家に着いた」
 続々と届くメールを読み、高校生は侮れないぞと驚いた。親が思っているより、しっかりしているものらしい。

「ただいま」
 帰宅すると、先に帰っていた娘が出迎えてくれた。
「宇都宮、どうだった?」
「楽しかったよ」
「おみやげ屋さんがたくさんあったでしょ。何か買った?」
「新幹線に乗ったから、お金がなくなって買えなかった。高いんだね」
 しかし、みやげものの袋が置いてある。
「あ、それはね、おじいちゃんが買ってくれたの。雨が降ってきたから、傘も買ってくれた」
「ふーん、いいとこあるじゃん」
 まったく病院に顔を見せない父だが、いいタイミングで来てくれたようだ。
 袋を開けると、萩の月のようなお菓子が出てきた。



「うまーい」
 ふわふわのカステラの中には、甘酸っぱいとちおとめのジャムが入っている。
 これはなかなか。
「おばあちゃんは元気だった?」
「うん。管が抜けたって言ってたよ」
「そっか」
「コーヒー、すごく喜んでた。渡したらすぐフタを開けて、ガブガブ飲み始めたんだよ。一気に半分くらい減ってた」
「……すごいね」
 その後、私の携帯にも、「コーヒーおいしかった」というメールが届いた。これはヒットだったらしい。
 しかし、マンガはイマイチだったようだ。
「お母さん、おばあちゃんが、マンガは怖くないってメールしてきた」
「あらま」
 こうなると、意地でも怖いと言わせたくなってくる。
 私が怖いと思うマンガは、つのだじろう氏の『うしろの百太郎』と『恐怖新聞』だ。
 アマゾンで売ってるかしらん?


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宇都宮お見舞いツアー(1)

2013年06月02日 20時15分04秒 | エッセイ
 母が脊柱管狭窄症の手術を受けた。
 10年前に乗馬を習っていたとき、落馬したことがあったが、そのときに脊柱管がつぶれて神経を圧迫したのだという。左足の膝から下が痺れ、感覚がないと言っていた。手術で脊柱管を広げれば、徐々に感覚が戻ってくるらしい。
 問題は、入院先が宇都宮で、少々遠いというところである。早速、姉と妹に連絡をとった。
「2週間入院する予定なんでしょ。一度くらいは行ってあげないとね」
「どうせなら、一緒に行かない?」
「土曜日ならアタシは大丈夫。都合はどう?」
「こっちもオーケー」
 というわけで、めでたく3人の都合がついた。
 それぞれ住んでいる場所が違うので、2時に宇都宮駅で待ち合わせをする。



 なかなか立派な駅だ。作りが大宮駅に似ている。2人はすでに来ていた。
「バスターミナルの先に、餃子の像があるんだよ」
「何だ、それ~!」
 姉の言葉に、私も妹も笑った。宇都宮といえば、餃子で有名な街だ。はたして、どんなものかと見てみたら、餃子のヴィーナスであった。



「うーん、微妙……」
 隣に鎮座しているカエルは、もっと微妙だった。何を表しているのか、説明が見あたらなかった。



「こんにちは」
「お邪魔します」
 病院に着くと、母が喜んでくれた。だが、父は全然顔を見せず、家に引きこもっているという。
「洗濯はランドリーがあるし、いなくても全然困らないよ」
 母は強がっているが、いざというとき役に立たないのでは不安だ。何て使えない男なのかと呆れた。
「半年くらいは、かがんじゃいけないんだって。今も、まだ座れないんだよ」
 食事には何の制限もないが、行動にはかなりの制限があるようだ。せっかく広げた脊柱管を保護するため、負荷のかかる動作は避けなければならない。母はしばらく、手術後の苦労談を披露していた。
 あっという間に50分ほど経過する。お見舞いは長居するものではない。
「じゃあ、そろそろ」
「お大事にね」
 時間にゆとりはあったが、個室ではないので、頃合いを見て引き上げる。
「駅でお茶していこうか」
「いいね」
 途中、重要文化財の旧篠原家住宅なる建物があった。



 駅前のファミレスに入ると、待ちきれなかったというように、姉がワインを注文する。
「グラスは3つで」
 おや、お茶ではなかったのか??
 成り行きで、私も飲む破目になった。結局、1時間半くらいいただろうか。夕飯の支度もあるし、いつまでものんびり飲み食いしてはいられない。
「おみやげ買って帰ろうよ」
「やっぱり餃子かな」
 考えることは同じである。夕飯には、この餃子を買ってみた。



 家に着いてから調理すると、こんがりいい色に焼けた。



 そして、ごまだれが絶品である。



「マジうまいわ」
「スーパーのと違う」
 家族も絶賛するこのうまさ。
 感動~~!!
「餃子せんべいも買ってきたんだよ」



 こちらのほうも、しっかり餃子の味に仕立てられている。



「美味し~い」
 お腹いっぱいになったところで、高2の娘が無謀なことを言い出した。
「来週は水曜日が休みだから、ミキもおばあちゃんのお見舞いに行ってくる」
「ええっ!?」
 大宮までなら、彼女は行ったことがあるが、無事、宇都宮にたどり着けるのだろうか。
 心配しつつ、ちゃっかり餃子を頼んじゃったりして……。


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