これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

家庭教師さん、いらっしゃい

2011年11月27日 20時26分57秒 | エッセイ
 我が家の受験生のため、ついに家庭教師を頼むことにした。
「笹木さんは学校の先生なんですから、ご自分で教えればいいじゃないですか」などと言う知人もいるが、それは無理だ。すっかり脳が老化して、できない問題ばかりになっている。いや、元から理解していなかったのかもしれない。なにしろ、こっちが教えてもらいたいくらいなのだ。
「塾は家から出なきゃいけないからヤダ。これからもっと寒くなるし、家庭教師がいい。友達がト○イやってるけど、よくわかるって言ってたよ」
 ぐうたら娘が、好き勝手なことをほざいている。
 しかし、口コミも大事だ。早速ホームページを見て、資料請求してみた。
 30分後、自宅に電話がかかってきた。
「こんばんは、家庭教師のト○イと申しますが……」
 私は仰天した。土曜日の午後8時すぎに資料請求したから、返事は早くても月曜あたりと予想していたのだ。まさか、こんなに早く反応があるとは。
「では、明日の2時頃、ご説明にお伺いしてもよろしいでしょうか」
「あ、はい。よろしくお願いします」
 まさに電光石火。教育産業の対応はすばやいと感心した。気の変わらぬうちに、一気に勝負を賭けるつもりなのかもしれない。

 そして、今日、予定通りにアドバイザーがやってきた。インターフォンを鳴らすかわりに、到着したことを知らせる電話がかかってきた。なかなか控えめな男性で、押し付けがましいところはない。
「教科は何をご希望ですか」
「国数英理です」
「週何日になさいますか」
「えーと、4日くらいかな」
「授業料は、コースによって変わってきます。ベーシックコースですと、60分で3400円ですが、プロコースになりますと17000円です」
 彼は料金表を見せながら、説明しはじめた。しかし、料金に差がありすぎて、希望を聞かれても何と答えたらいいかわからない。
「そうですね、志望校を考えますと、それほどハイレベルな指導は必要ないかと存じますので、中間のセレクトコースでいかがでしょうか。こちらは60分で5600円です」
 教師要件には「東京大学生指定」と書いてある。露骨に学歴で判断される世界らしい。
「じゃあ、それでお願いします」
 家庭教師も、ピンからキリまでということか。難関校を受けるわけではないけれど、一番単価の高い先生は、どんな指導をするのだろう。きっと、私の仕事にもプラスになると思うのだが。
 ひとまず、契約は成立した。あとは、3日以内に振込みを完了するだけだ。
「では、これで失礼します」
 ずっと正座をしていた彼は、しびれた足をひきずりながら、ヨロヨロと歩いていった。
 私が金融機関の届出印を探している間も、彼は足を崩さずに待っていたようで、「申し訳ないな」と思った。
 
 予定では、12月5日から家庭教師が派遣される。
 プロコースではないけれど、東大生の指導はどんなものか、興味がある。
 市原悦子のように、扉のすき間からのぞいてみようかしら。



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最高についていない日

2011年11月24日 20時39分57秒 | エッセイ
 娘のミキのテストがすべて返ってきた。
「今回は、9教科の平均が87点だよ。技術家庭は100点取れてよかった~!」
 私が移した風邪のために、勉強時間は短かったが、期待通りの成果を得られたようだ。
 しかし、運をすべて使い果たしてしまったらしい。
 先日、しょぼくれた顔で、中学から帰ってきた。
「お母さん、大変だよ! ワカイが引っ越しちゃうの。もうすぐ受験なのに、新潟に行くんだって。来週から会えなくなるよ」
 3年間、部活で一緒に頑張ってきたワカイさんが、家庭の事情で急遽、引っ越すことになったらしい。まったく予想せぬ事態に、部員は泣いたり叫んだりと、相当混乱していたという。
「ワカイに何かあげたいから、勤労感謝の日にみんなで買いに行く」
「それはいいけどさ、ちゃんと勉強もしなさいよ」
「わかってる」
 しかし、買い物の打ち合わせと称して、何時間もメールをしているではないか。これでは全然勉強できない。私は、見かねて声をかけた。
「まだ決まらないの?」
「だって、みんな塾とか用事で、行かれないって言うんだもん」
「なんだよ。泣いたりする割には、言うこととやることが一致していないな」
「まったくだよ」
 結局、買い物に行かれる者は、ミキの他に1人しかいなかったというから驚きだ。意外と冷めているのかもしれない。
「池袋まで行ってきま~す」
「夜は出かけるからね。5時までに帰ってきなさい」
「はーい」
 2時半すぎに、ミキは元気よく出かけていった。
 ところが、その後、西武池袋線が人身事故で運転を見合わせ、ミキは帰ってこられなくなった。私は急いでメールを送る。
「いまどこ?」
「池袋。ホームでずっと電車を待っているんだけど、全然来ない」
 そのときは気づかなかったのだが、同じような内容で、夫もメールを送っていたらしい。同じ家に住んでいても、別の部屋で好き勝手に過ごしているから、お互いに何をしているのか知らないのだ。
 ミキは、2人から交互に「大丈夫?」というメールを送りつけられ、返事にてんてこ舞いだったという。
「各停ですごく混んでいるけど、とりあえず乗れた」
「東長崎で停まっちゃった」
「動いたと思ったら、今度は江古田で停まっちゃった」
 返事を見ると、普段は15分で行かれる距離が、その日は2時間近くかかったようだ。まったく、災難としか言いようがない。ヨレヨレになって最寄り駅に着いたら、間の悪いことに、雨まで降っていたというから恐ろしい。どこまで運が悪いのやら。
 5時に帰ってくるはずが、時計は6時半を回っていた。
「ワカイが喜びそうなプレゼントを買えたからよかったけど、メールは代表1名にしてくれないかな」
 疲れきったミキに叱られた。
 八つ当たり?



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よそゆきスウェット

2011年11月20日 21時19分45秒 | エッセイ
 体外受精の翌日から、受精卵の着床率を上げるホルモン剤を飲んでいる。

 デュファストン錠 5mg



 不妊症の強い味方であることは間違いないが、困った副作用がある。
 お腹に、水だか何だかがたまってきて、どんどん膨らんでしまうのだ。下着やスラックスはゆるいサイズがあるからいいが、スウェットパンツだけはゴムがきつくて苦しくなった。
 まずは、お手軽に、家族のものを借りようと思った。
「ねえ、ミキ。スウェット貸してくれない? お母さんのキツくて」
「……なにそれ、ミキがデブだとでも?」
「いやあ、そういうわけじゃないけど」
「ムキーッ、じゃあ、どういうわけよ! てか、夏のしか持ってない」
 娘はダメだった……。
 次は、万年妊婦の太鼓腹を持つ夫にあたる。
「ねえ、このスウェット貸してくれない?」
 私は、出しっぱなしになっている、グレーのスウェットに手を伸ばした。夫は、わけがわからんという顔をして、「別にいいけど」と答えた。
 サイズを確認しようと、タグに目をやる。LLかと思ったら、「O」と書いてあった。

 何だ、こりゃ??

 もはや、未知の世界である。LLよりも大きいのだろうか。
 胴はもちろんのこと、足の部分も相当太い。片側で、両足分を収納できるくらいの布地がある。ダブダブのパンツに足を通すと、肩幅よりも広くなった。もちろん、ウエストもゆるゆるだ。
 娘が、ニヤニヤしながら冷やかしてくる。
「……お母さん、道路工事している人みたいだよ」
「やっぱり?」
 自分では、ピエロみたいだと思った。しかも、布地にゆとりがありすぎて、足元がスースーする。だが、ひとまず履ければいい。夫のメタボも、役に立つことがあるとわかった。
「しばらく借りるよ」と宣言すると、夫が悲しそうな声で、「俺のお出かけ用が……」とつぶやいていた。
 私には、人様の服を借りると、すぐに汚すという悪癖がある。姉の服には、クレープのチョコレートをつけたり、しょうゆをこぼしたりしたことがあり、さんざん怒られた。夫のよそゆきは汚さぬようと気をつけたが、焼き魚を落としてしまった。シミにならないように急いで洗ったが、ちゃんと落ちただろうか。

 しかし、残念なことに、昨日生理がきてしまった。つまり、妊娠していなかったということだ。
「あーあ……」
 がっかりする私に、娘は何か言ってあげなければと思ったようだ。
「仕方ないよ。風邪ひいてたし」
「うん」
「咳してたし」
「うん」
「もう、その薬も飲まなくていいんだね」
「ああ、そうか」
 何ともあっけない幕切れだったが、不思議なことに、「こんなもんかもなぁ」と気持ちはサバサバしていた。
 運が悪かっただけで、やれるだけのことはやったのだ。また今度、がんばればいい。
 明日は、短い間だったけれども、お世話になった夫のよそゆきスウェットを洗う。焼き魚のあとが残っていないか、もう一度チェックしておこう。



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罪ほろぼし

2011年11月17日 20時25分12秒 | エッセイ
 娘の中学では、昨日、今日が定期考査だった。3年生は、内申書の成績が決まる重要なテストとなる。
 試験前の大事な時期だとわかっていたのに、今月早々、私は風邪をひいてしまった。しかも、悪いことに、娘にも移してしまった。
「うう~、ゲホゲホゲホ……喉が痛い」
「ゴメン、ゴメン。ミキが、お母さんの布団で昼寝するから移ったんだよ」
「成績下がったら、お母さんのせいだ……」
 熱こそ出なかったが、中耳炎も併発し、かなりつらそうだ。内科と耳鼻科で薬をもらい、フラフラしながら勉強している。あれでは頭に入らないだろう。
 試験の朝、私は罪ほろぼしに、職場近くのお地蔵さんにお参りすることにした。1学期にも、テスト当日、このお地蔵さんにお参りしたら、御利益があったのか、「思ったよりできた」と喜んで帰ってきたことがある。結果として、成績が大幅にアップし、お地蔵様様であった。
 お賽銭は、「十分にご縁がありますように」で15円がいいと聞く。しかし、財布の中を見ると、10円玉はあっても5円玉がない。これでは「遠縁」となってしまう。やや高望みの志望校が、さらに遠くなるようで縁起が悪い。

 そうだ、コンビニで何か買おう!

 ちょうど、水が欲しいと思っていたところだ。ファミリーマートに入ると、「霧島の天然水 95円」というポップ広告が目に飛び込んできた。これなら、100円出して、お釣りの5円玉ゲットでちょうどいい。
「ありがとうございました」
 店長に見送られ、私は5円を握りしめて店を出た。
 お地蔵さんは2体ある。1体は「延命地蔵」、もう1体は「子育地蔵」だ。ひとまず、「子育地蔵」の賽銭箱に15円を入れ、「ミキがテストでいい点を取れますように」と手を合わせた。努力不足であることは十分わかっているので、間違っても「実力を発揮できますように」などとお願いしてはいけない。たまたま勉強したところが、たくさん出題されるとか、適当に書いたところが運よく合っている、といった幸運を狙うしかないのだ。「子育地蔵」のあとは、「延命地蔵」にも同じことをお願いする。
「テストはどうだった?」
 帰宅してから娘に聞くと、「今までで一番できた」という返事である。「おお~!」とお地蔵パワーに驚いた。
 試験2日目の今日も、ファミリーマートで「霧島の天然水」を買い、お地蔵さんの元へと向かう。「延命地蔵」の賽銭箱に15円を入れ、昨日と同じように祈った。
「今日は音楽がダメだった。でも、あとはいい感じ」
「へー、スゴいね!」
「でしょ。今回は今までのテストの中で一番頑張った」
 違うよ、お地蔵さんがスゴいんだよ、という言葉は口に出さずにおいた。
 高校受験の日は、もちろんお参りするつもりだ。
「子育地蔵」「延命地蔵」あらため、「学業地蔵」としたら、全国から参拝者が殺到するかもしれない。



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ついでの七五三

2011年11月13日 20時05分03秒 | エッセイ
 恥ずかしながら、私は長い間、七五三について誤解をしていた。
 女の子であれば、3歳と7歳にお祝いをする。だが、私は5歳のときにも祝ってもらったので、それぞれの年齢でお祝いをするのだと思っていた。
 我が家の場合、2歳上の姉が7歳のとき、私は5歳である。同い年の従弟と一緒にお祝いしたこともあり、私だけ普段着では気の毒だと親が思ったのだろう。
 その日は、ネクタイをしめ、サスペンダーつきのショートパンツをはいた従弟と、髪を結って化粧をし、晴れ着を着た姉が主役だった。私は祖母が縫ってくれたチェックの着物を着て、2人と一緒に記念撮影に加わっている。子どものときから着飾ることが好きだったので、新しい着物がとてもうれしかった。3人とも、細長い千歳飴の袋を大事そうに持ち、ニコニコ笑って写っている。
 姉と従弟が神社でお祓いをしたときは、祖母に「外で待っていようね」と言われた気がしたが、ついでにお祝いしてもらったとは露知らず、主役のつもりでいたことが恐ろしい。着物を脱いだあとは、姉と従弟と車座になって、お待ちかねの千歳飴を開けた。子の長寿を願い、細く長い形をしているのだと、そのとき聞いた。
 もちろん、7歳になったら、姉が着ていたキレイな晴れ着を着せてもらって神社に行った。
 だから、自分に子どもができるまで、大いなる勘違いをしていたわけだ。
 4歳下の妹は、5歳のときのお祝いがなかったが、3人目だから親が手抜きをしたのだと哀れに感じた。まったく、とんだ濡れ衣である。

 祝ってもらう立場であれば、回数が多いほうがいい。しかし、親になると、衣装や写真の予約など、手間暇かかって大変だ。自分のことは棚に上げ、今では2回でよかったと喜んでいる。
 娘が7歳のときは、私も一緒に着物を着た。うぐいす色の訪問着で、仕立ててから数回しか袖を通したことがない。神社で髪結いも着付けもしてくれるというので、ついでのつもりだった。
 しかし、予想以上に時間がかかった。主役の娘がスタンバイできたのに、私の準備が終わらず、延々と待たせる破目になった。何度「まだ?」「まだぁ?」「ま~だぁ?」と聞かれたことか。
 ようやく支度を終えると、夫と娘は廊下で待ちくたびれていた。私も疲れたが、鏡に映る和装の自分を見たら、俄然、元気がわいてきた。背筋を伸ばし、「さあ、行くわよ!」と張り切る私を、ヨレヨレになった2人がしおれた目で見上げた……。

 今日は、お天気もよく、絶好の七五三日和だった。
 神社は、和装、洋装のチビっ子たちで賑わっていたようだ。
 ついでがあれば、ぜひ私も呼んでもらいたい。



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なに祝い?

2011年11月10日 21時09分04秒 | エッセイ
 飯田橋の「警視庁遺失物センター」に行ってきた。先日、駅で落とした、職場のセキュリティカードを引き取るためである。(詳しくはこちらをご覧ください)
 ここは、平日の8:30~17:15までしか開いていないので、仕事がある日は無理だ。土曜出勤の振替休業日を狙って、足を運んだ。
 目印は、飯田橋の交差点なのだが、ゴチャゴチャしていて方向音痴の身にはつらい。FAXで取り寄せた地図を頼りに、「こっちでいいのかしら」と不安を感じながら進んだ。
 間違ってはいないようだ。歩道橋で、それらしき案内板を見つけた。



 矢印の方向に進むと、人気のない通りにでる。長い伝統を感じさせる看板が目印だ。



 建物も古めかしく殺風景で、一度はなくしたものを取り戻す喜びを、一瞬にして半減させる効果がある。ここで、妙なはしゃぎ方をする輩は、まずいないだろう。
 入ってすぐに番号札を取る。火曜の昼前は空いているのか、待ち人数は2人だった。
 まもなく番号が呼ばれ、口頭で状況の説明をする。
「わかりました。遺失物の番号を教えてください」
「はい、上Bの××××-×です」
「では、これからお渡ししますので、こちらにご記入の上、お待ちください」
 遺失届けなどと書かれた紙を渡され、住所・氏名・電話番号・持ち物の特徴などを記入した。押印欄もあったが、本人の自署であれば必要ないらしい。
「笹木さん」
 5分ほど経つと、別の窓口から名前を呼ばれた。
「身分証明書をお持ちですか?」
「はい、運転免許証があります」
 26年前に免許を取ったものの、実際にハンドルを握ったことは、数えるほどしかない。もっぱら、身分証明のみとなっている、かわいそうな免許証を取り出した。
「はい、じゃあこちらになります」
 渡されたカードは、たしかに私のものだった。3週間ぶりの再会に、心が躍った。だが、拾った人の情報は一切なく、お礼をしなさいとも何とも言われない。金品ではないからなのだろうか。
「ありがとうございました」
 私は頭を下げて、センターを出た。

 予定では、「ロングセラー商品展」を見に行くはずだったのだが、あいにく2日前に終了している。
 社会勉強のために、ハローワーク飯田橋を見学して家に帰った。

 さて、カードを取り戻したお祝いに、何か美味しいものを食べたい。

 やっぱり、オニ盛でしょ。

 パステルのプリンも捨てがたかったが、生クリームこってりのコーヒーゼリーが欲しくなった。



 カードが戻ってきたお祝いは、返還祝い?
 いや、もともと私のものなのだから、返還はおかしい。
 帰還でもないし、還暦であるはずもない。
 奪回?
 うーん、自分が落としたのだから変だ。
 回収祝いっていうのが、一番近いのかな……。

 さあさあ、悩んでいる場合じゃない。
 いただきまーす!



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先立つもの

2011年11月06日 19時58分54秒 | エッセイ
 体外受精を受けると、「いくらかかったの?」と質問されることが多い。
 私の病院は安いほうで、231,000円だった。前回もそのくらいだったから、良心的な価格設定といえよう。外来や注射代は別料金だが、トータルでも27万円以内に収まると思う。
 ところが、ネットで調べてみると、30万~50万が相場らしい。顕微授精になると、40万~60万になるというから驚きだ。
 だが、1回でうまくいくとは限らない。繰り返し挑戦しているうちに、何百万という額に膨れ上がるから恐ろしい。費用捻出の問題は、不妊治療を続ける上で大きな足かせとなる。
 私の場合、生命保険が大きな味方になってくれた。医療の特約は、勧められたものを加えただけだが、これが功を奏したのだ。
 3月に流産の手術をしたあと、病棟で渡された書類に「生命保険に提出する診断書は、入退院受付で承ります」と書いてあったのが目に留まった。それまで入院や手術を経験したことがなかったので、生命保険に入っていても、給付金を請求したことがない。それどころか、加入していることすら忘れていた。
 保険証券を引っ張り出し、電話で問い合わせてみると、「体外受精は不妊症という病気の治療なので、ご契約では給付の対象になります。流産も給付金が出ますので、どちらも申請なさってください」という返事だった。それならばと申請したが、雀の涙ほどの額しか出ないのではと、まったく期待しなかった。
 10日後、支払い明細が送られてきた。
 なんと、体外受精には149,000円、流産には365,000円の給付金を支払うと書かれている。支払額よりも、はるかに多い給付金に、私は仰天した。

 生命保険に入っていてよかった~!

 自己負担が大きいだけに、これは大変ありがたい。
 さらに、担当者より電話があり、「他にも給付対象となるものはございませんか」と質問された。何かあったかしらと記憶をさかのぼる。
 そういえば、私は3年前にも流産をしている。ただ、そのときは、個人医院での日帰り手術なので、果たして給付対象になるのかどうか。担当者に尋ねると、「こちらで判断しますので、ひとまず診断書をお送り下さい」との答えだった。
 ダメもとで申請した結果は……。
 手術給付金のみの支払いとなったが、それでも260,000円と書かれている。
 かくして私は、体外受精に二度、三度、挑戦するだけの資金をゲットしたのであった。

 一見、得したように見えるが、20年間で払い込んだ保険料を計算すると、200万円に上る。結局、元は取れていないのだ。
 ガクッ。
 不妊治療に保険が適用されるか、助成金が出るようになる日は来るのだろうか。



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待ち時間のつぶし方

2011年11月03日 20時15分43秒 | エッセイ
 体外受精も二度目になると、かなりの余裕が生まれてくる。
 飲まず食わずで病棟入りするのだが、忘れちゃいけないのがペットボトルのお茶である。前回は、ひどい目にあった。採卵手術が終わり、麻酔が切れたとき、「水分をとってもいいですよ」と言われたのに、飲むものが何もなかったのだ。
 かといって、買いに行くほどの元気はない。看護師さんが、給湯室からお茶を持ってきてくれて事なきを得た。今回は学習して、伊右衛門のほうじ茶を用意した。
 手術は外来が終わってからなので、2時すぎだ。段取りもわかっているから、点滴を受けながら、のんびり本を読む。待ち時間は読書でつぶすに限る。その日は、たまたま本を切らしてしまい、石田衣良の『美丘』を娘から借りてきた。吉高由里子主演で話題になった、かのTVドラマの原作本である。
 幼い頃に交通事故にあい、ドイツ製の乾燥硬膜を移植された美丘は、クロイツフェルト=ヤコブ病になることを心配しながら生きている。大学生のとき太一と出会い、やがて愛し合うようになり、幸せの絶頂期を迎える。しかし、皮肉なことに、そこで病気が発症してしまうのだ。最後は、太一に見送られてこの世を去る。
 悲劇なのだが、自由奔放で、言い出したら聞かない美丘のパーソナリティのためか、さほど暗くならないのが救いだ。
 気になったのは、美丘が下ネタを連発するところだろうか。
「じゃあ、いつもひとりでしてるんだ。本ばかり読んでると、インポになるよ」
「なんだ。もうちょっと時間があったら、太一くんの好きな体位がききだせたのに。ねえ、背面騎乗位だったっけ」
「ねえ、麻理さん、こんな部屋で手とか縛られてやってみたくない」
 
 ………………。
 私は閉口した。性描写も多いし、中学生には少々早いのではないだろうか。しかも、「親に見られたら困る」とは思わず、「これ読みなよ」と貸すあたりが理解できない。
 うーむ。
「笹木さん、そろそろ手術を始めますので、準備をお願いします」
 頭の中がこんがらがっていても、進行に影響はない。看護師さんに連れられて、採卵をしてもらった。今回は4個採れたと聞き、安心した。しかも、麻酔の効きがよく、意識がもうろうとしたら「終わりましたよ」と告げられたので、全然痛くなかった。
 麻酔から覚めるときは、いつも気持ちが悪くなって吐き気を感じるが、今回はさほどでもない。体も慣れていくのだろうか。

 採卵した4個に夫の精子を合わせて、そのまま様子を見るという。受精すれば細胞分裂が始まるので、3日後、成長していることを確認してから体内に戻す。場合によっては、すべての卵が受精しないこともあるので、私は緊張した。
 そして、今日が3日後であった。
「1個だけ受精しましたから、今日はそれを戻します」
 ゼロよりはいいが、「たったの1個かぁ」と落胆も感じる。やっぱり歳のせいかもしれない。
 文化の日だというのに、出勤している医師の処置を受け、私は家路に着いた。
 電車の中で、ハードカバーの本を出す。『美丘』は終わったので、今は東野圭吾の『ガリレオの苦悩』を読んでいる。福山雅治でおなじみの科学者、湯川准教授が登場する推理ものだ。つまらなくはないが、何だか物足りない。
 下ネタがないからだったりして……。

 戻した受精卵が着床し、胎児の心拍が確認できれば妊娠成立である。
 陽性反応が出るまでに2週間、心拍確認までにはさらに4週間ほど待たなければ、結果はわからない。結構、時間がかかるのだ。
 風邪をひかないようにして、健全な本を読みながら、ひたすら待つことにしよう。



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