これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

噂の時間管理術

2010年07月29日 21時30分46秒 | エッセイ
 先日、「誰にでもできる時間管理術」というセミナーに参加してきた。
 講師は、有限会社ビズアーク時間管理術研究所代表、水口和彦氏である。プロフィールには、「既成概念を打ち破る時間管理論と、シンプルで使いやすい手帳の使い方の両面から、時間管理の指導を手がける時間管理コンサルタント。今までの経験を生かし、分かりやすく簡単で、しかも効果的な独自の時間管理術を確立」とある。

 近年、時間への関心が高まり、関連書籍なども多数発行されている。1999年から2009年までの10年間で、時間管理に関する書籍は6倍になったというから驚いてしまう。
 時間の使い方に自信を持てない人も多いようで、同社のアンケート結果によると、時間管理ができていると感じる人の割合は28%であるのに対して、できていないと感じる人の割合は72%に上るそうだ。
 かくいう私も、時間管理に自信はない。忙しいときは合理的な時間の使い方ができるのに、忙しくないとダラダラしてしまい、結局時間内に終わらなかったりする。これを何とか直したいと思って受講した。

「仕事には、時間が決まっているものと、自由なものがあります」
 まず、水口氏は、手帳を使った時間管理術を紹介した。ここで使う手帳は、1日ごとに時間の目盛りが入っているタイプで、たまたま私が持っているものと同じタイプだった。



 会議やミーティングなど、時間の決まっている仕事を「アポイントメント」、資料作りや電話連絡など、期限はあるが自由度の高い仕事を「タスク」と呼ぶ。この「アポイントメント」を先に手帳に書き込み、空き時間を見えるようにすることが重要だという。
 私の場合、アポイントメントは会議だけでなく、授業もある。



 次に、「タスク」を欄外に書き込む。タスクは、所要時間を考えて、実行できる日に書くことが大切らしい。



 タスクを空き時間でいかに処理できるかが、時間管理のポイントとなるわけだ。期限にゆとりを持ち、詰め込みすぎないように割り振りをする。
 私は、イマイチ手帳の使い方を理解しておらず、欄外には「お買い物リスト」を記入していた……。



 ダメだ、こりゃ。

 私の手帳は、時間管理ではなく、買い物管理用だったらしい。

「実行したタスクはアポイントメント欄に記入し、時間が余ったら、翌日のタスクに取りかかるようにします」
 思ったよりも面倒くさい。はたして、家計簿もつけないズボラ人間に、仕事の計画や実施状況を記録することができるのか。

 氏の話は、長期に渡る時間管理など、多様な手法へと続く。著書も多数あるそうだ。
 ここでは、印象に残ったエピソードをつけ加えたい。
「朝一番の時間帯は問い合わせ電話などもなく、仕事に集中できる貴重な時間です。ここで仕事をすぐに始められると、効率が上がり、無駄な残業が減ります」
 ふむふむ。それは一理あるかもしれない。
 私の朝イチは、効率いいと言えるだろうか。我が身を振り返り、考えてみた。
 
 えーと、まずカードを通したら荷物を置き、ポーチを持って化粧の続きをしに行くな……。

 いつも時間がなくて、「あとは学校でやればいいや」と、日焼け止めだけを塗って家を出る。職場に到着すると、トイレの鏡に向かい、マスカラだの口紅だのを塗りたくるのが常だ。つまり、朝イチの貴重な時間に、私は仕事をしていない。

 ダメだ、こりゃ。

 水口先生、次回は「猿でもできる時間管理術」というセミナーをお願いします。




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癒しのおにぎり

2010年07月25日 19時43分41秒 | エッセイ
 夏休みは毎日のように、娘の部活弁当を作っている。
 いや、作らされているといっても過言でない。元々、料理は得意じゃないので、「何にしたらいいんだっ」と悩みながら、どうにか役目を果たしている有様だ。
 おかず部門はそれなりに選択肢があるが、ご飯部門は手抜きが激しい。来る日も来る日も海苔弁ばかりで、穴があったら入りたい。娘は友達に「海苔弁が好きだから、お母さんに海苔弁にしてと頼んである」と、もっともらしい口実をでっち上げたそうだ。

 これではいけない……。

 たまには、海苔弁以外のものを作らねば。
 時間のない平日は無理だが、今日は日曜日だ。心温まる、癒しのおにぎりを作ってあげよう!

 まずは、まぜこみ用ふりかけを2種用意する。



 ご飯は80g程度に抑え、ピリ辛明太子と、



 大根菜入りしらすをまぶす。



 よーく混ぜたら、丸い形に整え、おにぎり用フィルムに包む。



 このフィルムは小さめなので、ご飯が多いと口が閉まらない。控え目の量を丸め、セットのシールで絞るように留める。



 ジャジャーン!
 フィルムには、リラックマと、コリラックマが、ゆるーい雰囲気でご登場~! なのである。



 可愛~い♪

 これで私は「海苔弁しかできないお母さん」を卒業し、株価急上昇となるに違いない。しめしめ。

 しかし、ことは私の思惑通りに運ばなかった。
「お母さん、今日は何だか気持ち悪い……」
 朝食を終えた娘が、急に吐き気を訴え、トイレに駆け込んだのだ。食べたものを全部戻してしまったらしい。
「ダメ、今日は部活に行かれない……。先生に電話しておいて」
 そういうなり、布団に逆戻りである。
 私はショックで、しばし呆然と突っ立っていた。

 ちょっと! 私の力作を見せてきなさいよーーーー!!




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観音様とオニヤンマ

2010年07月22日 21時48分40秒 | エッセイ
 大人2人が座れるほどの大きな石の上に、ロープが無造作に置いてあった。畑作業を終えた伯父が片付け忘れたのだろうか、とボンヤリ目をやる。
 驚いたことに、そのロープはいきなり動き出した。踊るロープのように、スルスルスルと石を伝って地面に下りていく。
 どうやら、ロープではなかったらしい。

 蛇だ……。

 今から何十年前になるのだろう。小学校に上がったばかりの夏休み、新潟の伯父の家で一週間過ごしたときのことである。長岡駅から車で20分ほどかかるその家には、ベッドタウン・さいたま市とはまったく異なる、豊かな自然があふれていた。
「石の上は冷たくて気持ちよかったんだな。青大将も暑いんだ」
 伯父は、仰天している私に、さも当然と言わんばかりに話しかけた。私は、動物園でしか蛇を見たことがなかったので、予想外の長さとしなやかな動きに目を奪われた。
「家の中には入ってこないよね?」
 心配になって聞いてみると、少々の間ののち、ハッキリしない返事をする。
「うーん、まあ、たまにはな……」
 夜はしっかり戸締まりをして寝ようと思ったら、寝室にはムカデが待ち構えていた。白い壁にへばりつく何十本もの足が強烈で、しばらく寝付けなかったほどだ。

 新潟の日差しは強い。翌朝は、麦わら帽子をかぶって、畑の回りを探検した。大きなバッタ、カマキリ、喋々などなど、元気な虫がたくさんいる。クマンバチがブンブン唸りながら近づいてきたので、走って逃げた。蜂は怖い。
「ああ、帰ってきたの? ちょうどよかった、10時のおやつにしましょ」
 伯母はジュースとアイスを用意し、私と姉、2人の従姉妹を呼んだ。

 すごい、新潟って、10時にもおやつがもらえるんだ!!

 私は感動した。新潟で生まれればよかったと、激しく後悔したほどだ。
 おやつのあとは、また探検だ。シマシマの大きなトンボを見つけ、初めて見るサイズに興奮する。一体、何というトンボなんだろう。



「ああ、あれはオニヤンマ。見たことないの?」
 従姉妹は物知りだ。私がただならぬ関心を示しているので、虫取り網を貸してくれた。網さえあれば、こっちのものだ。的がデカいだけに、つかまえやすい。しかし、そのあとが大変だった。
「痛い、痛い、痛~い!」
 囚われの身となったオニヤンマが、助かりたい一心で反撃してきたのだ。



 するどい歯で指に噛みつかれたものの、私はオニヤンマを放さなかった。
「糸つけて遊ぶと面白いよ。やってみな」
 従姉妹はオニヤンマの胴体に糸を巻き、端を私の手に握らせた。放すと、オニヤンマは飛んでいく。しかし、糸がついているので、風にあおられた風船のように、あっちへ行きこっちへ行きを繰り返すだけだ。空中で犬を散歩させている気分になった。
 満足したので、糸をたぐりよせてほどき、オニヤンマを解放する。
「好き放題しやがって、クソッ」と、捨て台詞を吐いたかどうかはわからない。

 何といっても、一番印象的だったのは、セミの羽化シーンだろう。
 3日目の朝、まだ暗いうちに起こされた。
「いいもの見せたげるよ」
 従姉妹は自信満々だ。一体何が見られるのか、興味がわいてきた。
 懐中電灯の灯りを頼りに進むと、林のような場所に着く。彼女はキョロキョロと辺りを見回し、お目当てのものを探しあてた。
「ほら、ここ、ここ」
 そこには、小ぶりの葉にしがみつき、殻から抜け出そうとしているセミの姿があった。殻の色は黄土色っぽいのに、セミは真っ白だ。懐中電灯に照らされて、ますます白く浮かび上がって見える。
 白いセミが殻から脱出すると、羽が伸びてセミらしくなる。



 私は、初めて見るはずの光景に、既視感をおぼえた。
 大船観音に似ている……。



 真っ白なセミは、観音様のように神々しく美しい。思わず、両手を合わせたくなる。
 しかし、時間の経過とともに、白い体が茶色に変わっていく。乾いてきたのだ。
 やがて、観音様はアブラゼミになってしまった……。
 ショック!

 伯父の家で過ごした一週間は、本当に楽しい時間だった。
 東京でも、場所によっては、セミの羽化が見られそうだ。通勤路の国道沿いに、数十メートルに渡って樹木の植え込みがあるのだが、セミの抜け殻が毎年たくさん残っている。
 なまじ緑が少ないだけに、わずかの樹木をめざして、セミが上ってくるのだろう。
 朝、3時くらいに見に来れば、あっちでもこっちでも、大船観音の神秘的な姿が拝めるかもしれない。
 オニヤンマは、ちょっと無理だろうな……。




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光熱費がかさむ理由

2010年07月18日 19時41分45秒 | エッセイ
 ようやく梅雨が明けた。
 朝から、お天道様は容赦しない。雨雲の去った夏空で、火炎放射を吐くように、これでもかこれでもかと強烈な熱気を発散する。

 あぢい……。

 暑さに弱い私は、すぐヘロヘロになり、クーラーのスイッチを入れる。
 ピピッ。
 涼しい風が熱気を鎮圧し、気温が下がっていく。
 快適、快適。
 汗が引くにつれ、背後から睡魔が忍び寄ってきた。昼食も終わったし、ちょっと昼寝するかと枕と掛け布団を持って横になる。優雅にシエスタとしゃれこもう。
 2mほど離れたところで、夫が高校野球を見ていた。どこかの予選が、テレビ放映されているらしい。
 ボリュームをしぼっているところを見ると、こちらに気をつかっているのだろう。静かで涼しい部屋の中で、私は眠りに落ちていった。

 目覚めると、4時半を回っていた。2時間半も寝ていたようだ。口を開けていたのか、喉が痛い。テレビは消え、夫もいなくなっている。おそらく、テレビのボリュームを上げるため、1階の応接間に移動したのだ。
 家族が別々の部屋で過ごすと、それぞれの場所でクーラーをつけるから、夏は光熱費がかさんで仕方ない。経済観念のない夫に、ガツンと言ってやらねばという気になる。
 階段を上る音が聞こえてきた。ちょうどいいタイミングで、夫が戻ってきたのだ。
「ああ、起きてたんだね。今、下で野球を見てた」
 夫はのん気に話しかけてくる。私は姿勢を正して、小言の準備をした。
「ここで見ればよかったのに」
「ダメダメ。すごーく、うるさかったんだよ」
 夫の渋い顔から、私はすべてを理解した。
「もしかして……イビキかいてた?」
「うん。30分くらいは我慢してたんだけど、あまりのやかましさに、耐え切れなくなって逃げ出したよ」

 ガーン!!

 ガツンと言える立場ではなかった……。道理で、喉が痛いはずだ。夏の太陽に痛めつけられ、体が消耗していたのかもしれない。
 私は顔を赤らめ、「ははは、失礼」と詫びた。何とも気まずい。

 暗くなった頃、中2の娘が部活から帰ってきた。イビキの心配はないのに、夫はまだ応接間でテレビを見ている。私は夕飯の支度をしながら、娘に「今日の出来事」を話した。
「昼寝してたら、イビキかいてたらしくて、お父さんが逃げていったんだよ」
「ああ、わかる。工事現場みたいにガガガガッていうんだよ。すごくうるさいんだから」
 それではまるで、耳をつんざくドリルの音ではないか。
 私は再び傷ついた……。

 まもなく、夫がこちらにやってきた。
「ミキ、お帰り。さっき野球見てたら、お母さんに邪魔されてね……」
 夫はニヤニヤしながら話しかけるが、娘はつれない。
「それはもう聞いた! テレビが聞こえないから、黙ってて!!」
 娘は夫を部屋から追い出すと、ピシャリとドアを閉めた。
 夫は下を向いてイジイジし、また階段を降りていった。応接間に逆戻りである。
 我が家の光熱費は、いつになったら削減できるのだろう……。




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ウチのウナギは美味しいよ

2010年07月15日 21時07分24秒 | エッセイ
 夏になると、ウナギが食べたくなる。
 去年までは駅前のスーパーで、とろけるほどに軟らかくてジューシーな蒲焼きを買っていたのだが、ここは2月末で閉店している。新規開拓せねばならない。
 困ったときはデパートだ。仕事帰りに地下の食品街に寄った。
 まずは、インフォメーションで情報をゲットする。
「あのう、ウナギの蒲焼きが欲しいんですが、どこで売っていますか?」
 受付嬢は、パウチされた館内図を片手に、場所の説明を始めた。
「現在地はここです。このまま左手に直進していただきますと、ウナギの蒲焼きを扱っている店が2軒、隣合わせに並んでいますので、こちらでお求めいただけます」
 ニッコリ微笑まれると、なんだか得した気分になる。私は礼を言い、左に向かって歩き始めた。
 それにしても、夕方のデパ地下は混んでいる。人をかき分けかき分け直進した。キャリーバッグを転がす紳士を追い抜き、割れたワインボトルを片付ける店員に同情し、前に前にと歩いていった。
 突然、人口密度が低くなった。洋菓子、和菓子、お総菜のエリアは混雑していたのに、ウナギの前では閑古鳥が鳴いている。これなら、ゆっくり品定めができそうだ。
 まずは、「静岡産うなぎ」が売りの店からだ。ショーケースには、何種類かのウナギが並んでいる。
 ざっと眺めたあとは、商売敵である隣の店に視線を移す。ショーケースは10cmも離れていないだろう。店の間の仕切りもない。余計なおせっかいだが、こんな至近距離にライバル企業を配置して、問題が起きないのかと心配になる。
 私が品定めをしていると、店員からテレパシーが伝わってきた。どちらも、「隣を見ちゃダメ。こっちを買いなさい」と念じている。客は私しかいないから、一挙一動を見張られている感じだ。
 お隣のウナギはほどよい色に焼けており、美味しそうだった。でも、「国産うなぎ」と書かれている点がマイナスだ。やはり、静岡産のほうが魅力的である。
 私は最初の店に視線を戻し、店員に注文した。
「蒲焼きを3人前ください」
「はい、かしこまりましたぁ~♪」
 子育てを終えたと思われる、年配の店員だった。選ばれた者の優越感を漂わせ、手早く袋とパックを取り出す。
 静岡産の文字に惹かれたものの、白焼きに近い色がだんだん気になってきた。こんなに白っぽくて大丈夫だろうか。
「あのう、ずいぶん色が薄いんですけれど、味はちゃんとついているんですか?」
 私の素朴な疑問に、もう一人の店員が答えた。こちらも、孫がいそうな年代の女性だ。
「ちゃんとついていますよ。うちのウナギは、お隣さんと違って、タレを塗りたくってないんです!」
「そうそう、サッパリして美味しいんです! ほっほっほ~」
 オバ様二人は声を合わせ、毒針のある言葉でチクリと商売敵を牽制した。こちらがたじろぐ勢いだ。まったく、女同士は恐ろしい……。
 仲が悪いことを隠そうともしないのに、どちらの店も1260円と同じ値段だった。価格カルテルだったりして……。

「へえ、そんなこと言うんだ。信じられない店だね」
 娘は唖然として私の話を聞いていた。
 しかし、オバ様が豪語するだけあって、間違いなく美味しいウナギである。



 ふっくらとしていて、タレがサラリとしている。全然しつこくない。これならいくらでも食べられそうだ。
「お母さん、このウナギ、骨が多くてイヤだよ」
 ふくれっ面の娘がダメ出しをした。たしかに口の中がチクチクする。スーパーの軟らかウナギが懐かしい。
「じゃあ、今度は、もうひとつの店で買ってこようか」
「そうしてよ。ウチはお隣さんと違ってホネホネじゃないですからね、ほっほっほ~! なんて言うかもしれないよ!」

 そんなバカな!?




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痛い通勤

2010年07月11日 19時48分46秒 | エッセイ
 首都圏の朝には体力が必要だ。
 通勤通学電車の混みようといったらない。自動改札を抜けてホームに下りると、すでに何十人もの人が並んで列車を待っている。
 ほぼ5分間隔で到着する電車は、準急も各停もすでに満員だ。ドアが開くと、不機嫌な顔をした乗客がドッと飛び出してくる。穴の開いたビニール袋から、水が噴き出すみたいに。
 降りる客が途切れると、ホームでスタンバイしている人が一斉に動き出す。
 車内は蒸し暑いので、上着はあらかじめ脱いでおく。乗ってしまうと身動きがとれない。本や携帯もバッグから出しておく。たとえ汗をかいても、ハンカチやタオルに手が届かない。まったく不便なことだ。
 発車を知らせる曲が聞こえる。乗り遅れては大変と、排水口の栓を外した風呂水のように、乗客がドアに吸い込まれていく。誰もがストレスに顔を歪め、前後左右の乗客と押し合いへし合いしながら、車内に進む。見ず知らずの人と体が密着するはイヤだけど、贅沢は言えないのだ。
 中には迷惑な乗客もいる。全員が前向きに乗り込めば、目の前にあるのは前の人の後姿だ。顔が見えないと、肌が触れ合ってもそれほど気にならない。しかし、あるとき、目の前のサラリーマンが汗をふきふき、クルリと後ろ向きになって乗り込んだ。後ろにいた私はたまらない。不本意ながら、サラリーマンの胸に突進せざるを得なかった。「あ~れぇ~」と叫びたい気分になる。
 いきなり体の向きを変える人は、何も考えていないようだ。後ろが同年代の男性であってもクルリとやるから、場合によってはオジさん同士で抱き合うはめになる。どちらもお互いから顔をそむけ、この上なく不愉快そうだった。一人だけ、体の向きを変えてはいけないのだ。

 人と人の間にバッグがはさまり、抜くのに苦労することもある。バッグならまだよいが、髪がはさまるととても痛い。洋服ではスカートが危険だ。学生のときは、ふんわりとしたラインのフレアースカートをよくはいた。二十歳そこそこだったとき、スカートの裾が人波に巻き込まれた。引っ張ってたぐり寄せようとしたら、反対側から私のスカートをつかむ毛深い手が見え、心臓が止まりそうになった。心霊写真を見るような、不気味なオーラを思い出す。

 先日は、大変珍しいものがはさまれた。
 二の腕だ……。
 私は決して太っているわけではないが、二の腕にはしまりがなく、動くたびにタプタプ揺れるくらい肉がついている。
 その日、私の隣にはスーツ姿の会社員がいて、後ろから制服を着た男子高生が乗り込んできた。男子高生の大きなバッグが私の二の腕に触れたと思ったら、鋭い痛みが走った。何と、二の腕の余分なお肉が、会社員の背中と大きなバッグにサンドイッチされていたのだ。ローラー式の脱水機にはまったように、二の腕はなかなか抜けない。

 痛い、痛ーい!!

 夏で、肌を露出していたことが災いしたようだ。電車が動くと、振動でようやく腕は抜けた。つねられたような痛みはなくなったものの、心の痛みがおさまらない。

 ううう、肉をはさまれるなんて、アタシってデブなんだ……。

 ブルーな気分で一日を終え、うなだれてパソコンをのぞくと、タイムリーな記事が目に入った。「やせてほしくない部位のランキング」である。男性から見た「女性のここだけはやせてほしくない」パーツを順位付けしたものらしい。さて、どんなパーツが登場することやら。
 驚くことに、第1位は「二の腕」であった。

 マジ!?

 慰められたような、励まされたような……。
 じゃあ、お言葉に甘えて、このままで~。




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目玉焼き賛歌

2010年07月08日 20時37分37秒 | エッセイ
 朝食に あるとうれしい 目玉焼き

 母が働いていたため、わが家の食卓に目玉焼きが並ぶことは稀だった。それでも月に一度くらいは、千切りキャベツを添えた目玉焼きが食べられたものだ。
 残念ながら、卵はひとつしかなかった……。

 目玉焼き 白身と黄身が ワンセット

 目玉焼きには必ず白身と黄身があるが、美味しさが二等分されているわけではない。私はコクのある黄身が好きだった。しかし、白身は水っぽくて味気ないため、好きではなかった。黄身を食べるために、我慢して白身を片付けたようなものだ。

 醤油かな いえいえ私は ソース党

 夫は目玉焼きに醤油をかける。でも、私はソースが好きだ。白身と黄身にかけたあとは、そのままキャベツの上に移動する。
 学生のとき、小田原の友達の家に泊まった。翌朝、目玉焼きが登場し、塩が添えられていたことにカルチャーショックを受けた。実際には、塩派も相当数いるようだ。

 ウェルダンも レアも断る ミディアムで

 母の目玉焼きは黄身が硬くなるまで火を通し、下が少し焦げていた。ステーキでいえばウェルダンだ。白身がカリカリしていて、煎餅状になっていたが、決して不味くはない。
 一方、家族旅行で泊まったホテルでは、黄身が振動で揺れるほど柔らかい目玉焼きが出てきた。白身もふっくらとしたレアだ。半分に切ろうとナイフを入れたら、黄身が堰を切ったように流れ出し、少なくなってしまった。これは黄身大好きの私にとって、大変ショックな出来事だった。
 以来、レアの目玉焼きは白身だけを先に食べ、丸型に残った黄身をパクッと一口でいただくことにしている。不作法と言われても構わない。黄身への愛情が勝つのだ。

 美味しいよ カレーの上にも 目玉焼き

 夫が作るカレーライスには、目玉焼きが載っている。娘はこれが大好物で、「目玉焼きのないカレーなんて」と主張する。ルーは辛めがいい。黄身は柔らかめがいい。スプーンでちょいちょいと崩し、ご飯に馴染ませて食べるのが一番だ。

 目玉焼き この頃ずっと 食べてない

 こんなに好きなのに、早起きできないもので……。




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小さなカラス

2010年07月04日 20時30分16秒 | エッセイ
 デジカメを整理していたら、1カ月前に撮った写真を見つけた。庭の木にとまり、「ギャオ」「ギャオ」と大きな声で鳴いていたカラスである。



 どうやら、まだ子供らしく、体が小さい上に警戒心がない。飛ぶのが下手なのか、大きな物音がすると葉の陰に隠れて様子を伺っている。

 普通だったら、飛んで逃げるだろ……。

 私は苦笑した。このカラスは、あきらかに飛ぶことをためらっているようだ。羽を広げたと思えば、下を向いてやめ、枝の上をウロウロと行ったり来たりしている。
 親が近くにいるのだろうか。首を伸ばしてキョロキョロと探すような仕草が可愛い。



 ときおり、口をパカッと開けて、エサをねだっている感じに見える。



 もし、手の届くような位置だったら、生肉でもあげたのに。子供は得だ。
 30分ほどたつと、ようやく子カラスにも「飛ぶ決意」が感じられてきた。まるで、スタート前の陸上選手みたいに、緊張感が漂っている。「さあ、行くぞ、行くぞ」と勇気を奮い立たせているのかもしれない。キッと口を閉じ、首を前後に揺らしつつ、目は一点を見つめている。
 予想通り、子ガラスは、両羽を大きく広げると、枝から足を離し、元気一杯に羽ばたいた。
 しかし、次の瞬間、落ちるように急降下し、ほうほうの体で別の木に突っ込んでいった。

 大丈夫かいな……。

 私はハラハラしながら、子ガラスが顔を出すのを待った。だが、一向に姿を見せない。もはや、追跡不能らしい。陰ながら、カラスが一人前になれることを祈ろう。

 子供のカラスは、応援したくなるほど愛らしいのに、大人のカラスには可愛げがない。
 まだ娘が生まれていなかった頃、夫と2人でドライブに出かけたことがあった。駐車場から車を出そうと、夫が方向転換をしていたときだ。晴れているのに、突然、屋根から「ドシャドシャ、バラバラ」と激しい雨音がした。
 私も夫も顔を見合わせ、不審な音に動きを止めた。
「なに? なに?」
「にわか雨か?」
 すぐに音はやみ、「カアー、カアー」という間の抜けた鳴き声がした。
 いやな予感がしてドアを開けると……。案の定、局地的豪雨状態となって降り注いだカラスの大量のフンが、パジェロロングボディーの屋根を汚していた。
「あああああーーーっ!!!」
 あのときの、卒倒しそうな光景は忘れられない。

 巣立ったばかりのちびっ子も、やがては憎たらしいカラスになっていくのだろうか。
 いや、あのカラスには無理だろう。フンをかけようとしても、目測を誤り、見事に外しそうな気がする。さらには、よそ見をしたがために、ビルにぶつかったりして……。




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回し者

2010年07月01日 21時17分39秒 | エッセイ
 夕食を終えたあたりから、雷が鳴り始めた。
 和太鼓を打ち鳴らすような、重量感のある響きが聞こえる。いや、金属製の雨戸を開け閉めする音のほうが、近いかもしれない。ガラガラ、ゴロゴロと鳴り響くたびに、威嚇されている気分になる。

 さて、コンセントを抜くべきか……。

 浦和に住んでいたとき、激しい雷雨のあとに、電話が壊れたことがある。
「雷が鳴ったら、すぐにコンセントを抜いてください。そうすれば、ただの置物になりますから、被害を受けませんよ」
 サービスマンにそんなアドバイスをされた。最初のうちは、せっせとコンセントを抜いて回ったが、なにしろ数が多い。テレビ、DVDレコーダー、冷蔵庫、エアコン、電話、パソコンetc……。しかも、時計機能がリセットされ、プラグを差し込んだとたんに「0:00」と点滅するではないか。ああ、忌々しい。
 次第に面倒くさいと感じはじめ、コンセントを差したままで雷をやり過ごすようになった。
 しかし、この日の雷は騒々しかったので、再び警戒心が呼び起こされる。
 ひとまず、命の次に大事なパソコンのコンセントだけは抜いておいた。

「えー、コンセント抜いたほうがいいの? どうしよう、充電中だよ」
 娘は、ごていねいにも、携帯電話の充電をしているところだった……。

 なんだって、わざわざ、こんなときにするかな!?

 思わず、歯をむき出したくなった。
 わが家やそんな状況だったが、雷はお構いなしに近づいてくる。和太鼓調の「ドドーン」も勢いを増し、雲の上で「ぶちあわせ太鼓」を始めているようだ。
 やがて、太鼓どころか、空からビルが降ってきたかと思うほど大きな「ガラガラ、ドドドーン!!」という音が耳に突き刺さった。大音量が頭の中でこだまし、すさまじい衝撃である。
 低音だけでなく、グラスをいくつも落としたような「カシャーン」という高音も混ざっている。まさか、尾崎豊が天国で窓ガラスを叩き割っているのではと疑った。
 初めて聞く轟音に、度肝を抜かれた次の瞬間、家中がフッと暗闇に変わった。
 停電だ。

「お母さん、お母さん! 真っ暗だよ!!」
 娘も驚いている。私は懐中電灯を探し、夫に手渡した。
「ブレーカー上げてきて」
 間もなく明かりはついたが、家電製品は大丈夫だろうか。
「見て! 雷が落ちる前に、充電器抜いたんだよ。ミキの携帯は無事♪」
 そんなものはどうでもいい。まずは、台所から順にチェックしていく。冷蔵庫、テレビ、エアコン、電話……。おおむね無傷だったが、寝室のエアコンだけが動かない。一番落雷の方向に近かったせいだろうか。
 面倒がらずに、コンセントを抜いておけばよかったと、私はどっぷり後悔した。

 昨日はボーナスの支給日だったから、買い替えできないこともない。
 いや、むしろ雷は、ボーナスを狙って暴れた感がある。家電業界と癒着しているのではないか。
 さては、回し者だな……。




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コメント (14)
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