これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

メダカ養殖作戦

2010年04月29日 20時06分25秒 | エッセイ
 先月、メダカを買った。詳しいいきさつは、「ハーフのメダカ」をご覧いただきたい。
 メダカを買った数日後、メスのお腹に卵がついていた。
 すわ、2世誕生かと喜んだが、いつの間にやら、なくなってしまった。水草にはついていないし、お腹からも消えている。はてさて、どこへ行ったのだろう。
「メダカが水草に卵を産みつけたら、草ごと隔離してください。そのままにしておくと、食べちゃうんですよ」
 フィッシュショップに寄ったとき、店員さんに卵の話をしたら、そんな答えが返ってきた。

 自分の子孫を食べちゃうなんて、バカか!?

 理解しがたいメダカの行為に、私は呆れた。
 ちゃんとエサはやっている。しかし、メダカには満腹中枢がないそうで、「お腹いっぱいだから、もういいや」とならないらしい。しっかりエサを食べた後でも、卵が漂っていれば反射的に食してしまうのだ。まったく困る。
 繁殖は無理かと諦めかけていたが、半月前、ようやく水草についた卵を発見した。「よしよし」と水草をちょん切り、別の水槽に移した。
 だが、その後、2週間経っても孵化しない。中2の娘も、私も、やきもきしながら水槽をのぞいていた。
「お母さん、この卵、ちゃんと受精しているのかな」
「うーん、どうだろうね」
 魚類は水中受精である。店員さんによれば、お腹に卵をつけているとき、受精することが多いというが……。
「全然稚魚が生まれないよ。無精卵なのかも」
「じゃあ、お父さんの精子もらおうか」
「ダメダメ、人面魚が生まれちゃうよ」

 そんなアホな会話をしていたら、翌日、待ちに待った稚魚が孵った。
「ああっ、稚魚だぁ~!!」
 私も娘も、スイスイとはねるように泳ぐ、透明な生命に歓声を上げた。水中だと、ピントを合わせることが難しく、私の技術で写真は撮れない。体は糸のようにか細く、透き通っている。体長5mmの、痩せたおたまじゃくしをイメージしていただきたい。
 早速、粉末状の「赤ちゃんのエサ」を与え、元気な2世に目を細めた。

 この2世が誕生したのは、4月26日のことである。
 こちらのブログ「これはしたり」が誕生したのも、2年前の4月26日だ。偶然とはいえ、記念日が重なるのは喜ばしい。マメに水を替えて、元気な成魚に育てなくては!

 1匹で可哀想だと思っていたら、今日はさらに3匹孵り、合計4匹の稚魚が泳いでいた。
 仲良く並び、体をくねらせて進む姿は、数日前にはまったく予想できなかった。
 いまや、誕生ラッシュである。元気に大きく育つといいな!

 このブログも、読者のみなさまに育てていただき、無事2周年を迎えることができました。
 これからも、よろしくお願いいたします。




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耳寄りな話

2010年04月25日 20時36分12秒 | エッセイ
 先日、有川浩さんの『レインツリーの国』を読んだ。
 これは、中途失聴者の女性を主人公にした物語で、恋をすることの難しさや葛藤、喜びなどを描いた秀作である。通勤電車の中で、引き込まれるように読み、読了後も爽やかな気分になれた。
 しかし、家では爽やかでないことが待ち受けていた。
「お母さん、右の耳が痛くて、よく聞こえないよ……」
 中学から帰ってきた娘のミキが、泣きそうな顔で訴えるのだ。私は呆気にとられてしまった。
「……いつから?」
「夕方から。部活のときは我慢できたんだけど、どんどん痛くなってきたの。このまま聞こえなくなったらどうしよう……」
 なんというシンクロ。こんなことがあるのだな、と妙な感心の仕方をする。
 しかし、もうどこの医院も診察を終えた時間だ。明日の朝、診てもらうしかないだろう。

「どこの耳鼻科にしようか」
「原先生はイヤだ。乱暴で痛いんだよ」
 耳鼻科はたくさんあるけれど、名医はなかなか見つからない。こういうときは、ホームドクターに相談するのが一番だ。夫が医師に電話をかけた。
「夜分おそれいります、笹木です。明日耳鼻科に行きたいのですが、先生のご推薦する医院があれば教えていただけますか」
 整形外科や小児科なども、この先生に聞いて選んでいる。医師の勧める医師であれば、まず間違いはないようだ。
「はい、川田医院ですか。わかりました、ありがとうございます」
 電話を切り、インターネットで詳細を調べた。割に近くて、歩いても30分くらいで行かれる場所だ。しかし、問題があった。
「ダメだ、明日は木曜だから、休診日だよ」
 夫が絶望的な顔で画面を眺めていた。せっかく教えてもらったのに、意味がない。
「他はどう?」
「うわっ、耳鼻科は木曜休診ばっかりだよ。あそこもここも、全部休みだ」
「耳が痛いよ~!」
 娘の様子を見ると、先のばしにできる状況ではない。近くの耳鼻科を片っ端から検索し、木曜日に診察している医院を探した。
「あった! 南田耳鼻科ってとこが水曜休診だから、明日はやってるよ」
 ようやく、木曜でも診察する医院が見つかり、私は喜んだ。
 駅前にある、聞いたこともない耳鼻科だが、何もしないよりはましだ。夫に頼み、朝イチで娘を連れて行ってもらうことにした。

 診断は急性中耳炎で、抗生剤などが何種類か出たようだ。
「よかったね、診てもらえて。どんな先生だった?」
 娘に聞くと、明るい声が返ってきた。
「いい先生だったよ。若くてイケメンだし」
「えっ、カッコよかったの!? 何歳くらい?」
 私はつい、身を乗り出してツッコミをいれた。
「うーんと、30代くらいじゃないかな」
「芸能人だと誰に似てる?」
「そうだね……」
 娘はちょっと考えて、新聞に載っていた高橋克典を指差した。
「うん、こんな感じの人だったよ」
「あらあ、いいじゃない♪」
 耳鼻科だと、鼻の中を見られることもあるから、要潤や阿部寛似では二枚目すぎて、かえって尻込みする。しかし、高橋克典似ならば気軽にお願いできる気がする。

「なんだ、若い先生か」
 私とミキが盛り上がっていたせいか、夫は面白くないようだ。翌日、ホームドクターのところに行き、処方された薬を見せにいった。しかし、「これなら問題ない」と言われ、すごすごと帰ってきた。
「お母さんも、耳が痛くなったら、南田先生のところに行こうっと~!」
 と宣言してみたものの、耳も鼻も、いたって元気だ。
 不調になったときは、休診日だったりして……。




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梅干のチカラ

2010年04月22日 20時29分24秒 | エッセイ
 帰宅したら、真っ先にやることがある。
 それは、手洗いうがいをすませて、梅干を食べることだ。
「いっただっきま~す!!」
 夕食前の2粒は、胃にしみわたる美味しさである。
 
 梅干なら何でもいいというわけではない。
 私がひいきにしているのは、株式会社井グチの紀州南高梅「黄金漬」だ。これは、日本一の収穫を誇る梅の産地、和歌山県みなべ郷の高級梅を、はちみつに漬け込み熟成させた人気商品らしい。



 先日、夫がもらってきたこの梅干をつまんだら、今まで食べた中で一番いい味だった。
「うわ、何これ、すっごく美味しい!」
 私は感動して大きな声をあげた。はちみつで漬けたせいか、梅干特有の酸味が極力抑えられ、とても食べやすい味に仕上がっている。もともと、紀州南高梅は果肉が柔らかく、皮が薄いという特徴があるそうだ。ふっくらしたマシュマロのような梅干が、すっかり気に入ってしまった。
 しかも、これは4Lというサイズなので、大変ボリュームがある。2個並べれば、鶏卵とそう変わらない大きさだ。



 今では、夕飯ができるまで、おやつ代わりに食べている。

 梅干を食べるようになってから、胃が軽いことに気づいた。夕飯の量を減らしても、夜は胃もたれしやすいのだが、梅干が消化能力をアップさせているらしい。
 そうなると、体重も増えなくなる。仕事のない週末は、だいたい1kgオーバーになるのだが、梅干を食べ始めてからは、ほとんど増えていない。

 もしや、梅干ダイエット!?

 すっかり安心して、今週はアイスやケーキを何個も食べてしまった。いずれは、「梅干ダイエット」の本を書き、美しくなりたい女性を助けなければ……。
「えー、いいな、ミキも梅干食べる」
 我慢せず、甘いものを食べている私を見て、娘が真似をしはじめた。でも、ミキは梅干しが食べられない。「ゲホゲホ」と咳き込みながら、やせたい一心で飲み込んだ。もはや、執念である。
「梅干ってマズイと思っていたけど、結構美味しいじゃん」
 以来、部活から帰ってくると、すぐに梅干を開けてムシャムシャ。翌日には体重が落ち始め、胃もスッキリしたそうだ。梅干パワー、恐るべし。
 
 今日も元気に梅干を食べた。
 食べたあと、ブログ用の写真を撮っていないことに気づき、追加で2個皿に盛った。写真を撮ったあと、その梅干も食べてしまったから、合計4個お腹に納まったことになる。
 さすがに苦しい……。
 私は満腹感に耐えかね、こっそり夕飯のおかずを娘の皿に割り込ませた。でも、喉が渇いて仕方ない。結果、いつもより多めに水分をとってしまった。

 今日は、梅干太りした気がする……。
 過ぎたるは、なお及ばざるが如しってか。




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山となりぬる

2010年04月18日 20時04分57秒 | エッセイ
 このところ、雨が続いていたが、今日は久しぶりに晴れた。
 わが家は共働きだったので、部屋干しグッズが欠かせない。家を建てるとき、天井から部屋干し用の竿が吊るせるよう、金具を取り付けてもらった。さらに、除湿機を稼働させ、リビングを乾燥室に変身させるのが常である。
 もっとも、乾燥機があれば、もっと楽なのかもしれない。でも、今さらそんなスペースはないから無理だ。除湿機さえあれば、朝洗った洗濯物でも、夜にはパリパリに乾く。雨の日は、除湿機に頼るのが当たり前だった。
 その除湿機が、ここのところ不調だ。
 わが家の除湿機はナショナル製で、平成4年に購入したものである。



 中には、容量1リットルほどのタンクがあり、除湿した水分をためるようになっている。6時間もすれば満水となり、おもしろいくらいに乾燥する。
 でも、最近では、8時間稼働しても満水にならないし、洗濯物に部屋干し独特の臭いがつくようになった。明らかに性能が落ちている。長年使っているから、もう寿命なのだろうか。
 諦めムードで放置していたが、今日、掃除をしているときに、ふと思い出した。

 そういえば、この除湿機、エアフィルターがついていたんだっけ……。

 フタを開け、エアフィルターを勢いよく引き出すと、ボトリとホコリの塊が落ちてきた。

 ゲゲゲゲ~~~ッ!!!!!

 なんと、フィルターには、灰色のホコリが山盛りになっていた。



「どえりゃー、汚いがや!」
「こりゃ、あかんわ」
「ぜんぜん、掃除しねえがらだ~」
 と、普段使わない言葉が錯綜するくらい、私は驚いた。
 最後に掃除をしたのはいつだったろう。おそらく、この10年間はしていない。
「恋ぞつもりて淵となりぬる」と詠んだ陽成院を真似て、「塵も積もれば山となりぬる」がピッタリの状況だ。気づかなかったとはいえ、ここまでホコリをためるのは、並大抵の業ではない。初めて目にする光景に、私は感動すらおぼえた。

 掃除機で、たまりにたまったホコリを吸い取った。シート状になったホコリが、スポンジのように固まって剥がれ、ノズルに吸い込まれていく。ゴソッ、ゴソッと消えていく様は、一種の爽快感に似たものがあった。
 
 うーん、気持ちいい……。

 すっかり美しくなったフィルターを、除湿機に戻した。
 はたして、性能は回復しているのだろうか。
 ああ、雨の降る日が待ち遠しい……。




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最後の1個

2010年04月15日 21時22分21秒 | エッセイ
 昨日、職場の歓迎会があり、久々にワインを飲んだ。
 お酒を飲むと、アイスクリームが欲しくなる。たしか、家の冷蔵庫には、肉や魚などの食材が入っているだけで、アイスはなかったはずだ。
 樹液に吸い寄せられるカブトムシのように、私はコンビニめがけて歩き出した。
 夏場と違い、アイスの売り場面積は狭い。少ない種類の商品を端からチェックすると、どこかで見たようなアイスが1個だけ残っていた。気になり手に取ると、「ザクリッチ」と書いてある。



 おおっ、これが噂のザクリッチか!!

 たしかこれは、3月29日に発売されたものの、売れすぎで、4月11日に販売を一時休止すると発表されたアイスである。マイミクさんの日記によると、「当初の販売計画を大きく上回る売り上げとなり、供給が間に合わない状況であるため、一時的に販売を休止し、十分な供給体制を取ったあと再度販売する」とのことだ。
 アイスは、ハーゲンダッツかサーティーワンと決めていた私も、「そんなに売れているなら、一度は食べてみたい」と浮気心が起きた。
 そのアイスが、今、目の前にある。

 もしや、これは最後の1個では!?

 販売休止寸前の残り1個を前に、私は「なんて運がいいんだろう」と幸せな気分に浸った。例えるならば、街中で著名人とバッタリ出くわしたような感覚に近い。そういえば、知人のマダムが喫茶店に入ったら、たまたま勝間和代がいて、サインをもらえたとブログに書いたことがある。
 勝間氏とザクリッチではえらい違いだが、希少価値のあるものに偶然出会えた喜びは同じだ。さらに言うなら、勝間和代は持ち帰れないけれども、ザクリッチは126円払えば自分のものになる。私はマッハでレジに直行した。

 家に着いたのは、22時になろうかという頃である。この時間に、231kcalを摂取するのは恐ろしい。でも、食べたい欲求には勝てない。私は外袋を開けて、パフ入りチョコレートが隠されているコーンにかぶりついた。
「次世代コーンアイス」を名乗るだけあって、コーンもチョコレートも美味しい。サクサク、パリパリと軽快な音を立て、口の中にはほどよい甘味が押し寄せてきた。
 しかし、2口目でトーンダウンする。チョコレート内側の、バニラアイスが水っぽいのだ。私は、溶けたときに粘りが出るほどの、乳脂肪分の高いこってりしたアイスが好きなのに、これは水で薄めたような淡泊さである。なんとも物足りない。
 どんなに美味しいのかと過剰に期待した分、落胆も大きい。「まあ、普通のアイスだね」と、私は冷静に評価した。ジャイアントコーンのほうが美味しいかもしれない。
 販売休止は、話題作りのための戦略なのではという見方もできる。私は素直で単純なところがあるから、まんまと引っ掛かったのかと思うと悔しい。

 今日もコンビニに寄り、本当にザクリッチが品切れになっているかどうかを確認しようと思った。最後の1個と信じて買ったのに、また10個くらい陳列されていたらシャレにならない……。
 が、隅から隅までアイスをチェックしても、やはりザクリッチは見当たらない。予想通り、あれが最後の1個で間違いなかったようだ。
 すると、再び幸福感がよみがえってきた。味はそこそこでも、ラスト1個というところが重要である。買えてよかった、ツイていた、と笑顔になった。
 我ながら、実に単純なヤツ……。




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上には上がいる

2010年04月11日 17時25分46秒 | エッセイ
 始業式、勤務校の校長が、壇上から校務分掌の発表をした。
「1学年担任、1組××先生、2組○○先生……」
 生徒は静かに聞いているが、内心、気になって仕方ないところだろう。2年、3年と続き、生活指導部のメンバーにうつったときだ。「山田道江先生」というべきところを間違えた。
「山田ミチオ先生。……失礼しました、山田道江先生」
 あちこちで、クスクス笑いが起きる。言われた本人は、「あれっ!」とおどけて見せたが、男性にされるのはよろしくない。
 ニコリともせず、「噛みすぎでしょ」と辛口意見を述べる先生もいて、不評だった。

 しかし、私が2校目に赴任した高校の校長は、こんなものではない。着任式で何のメモも持たずに壇上に上がり、教科順に並んでいる新任者に「アンタ、誰だっけ」と聞きながら紹介したのだ。耳が遠いものだから、聞き間違えて、違う名前にされてしまった先生もいた。私は、あまりの出来事に呆然となり、全校生徒の前でバカ面を晒したおぼえがある。
 そんな芸当を見せた校長は、あとにも先にも、その方しかいない。

「あはは、お母さん、間違えられなくてよかったね」
 家で娘に話したら、相当ウケていた。
「そうだね。笹木サキオ、なんて言われたらイヤだもん」
 ヨヨギと言われたことはあるけれど、面白いから許す。
「ミキの学校の校長先生も、スゴい間違いしたことあるよ」
 娘の話によると、作文コンクールに入賞した生徒を表彰する場面だったらしい。
「すごく頭のいい子で、西川アリサちゃんていうの。銀賞だったんだよ」
 そのアリサちゃんが壇上にのぼり、校長と向き合った場所に立った。校長は、凛とした声で賞状を読み上げた。
「表彰状、○○作文コンクール銀賞……」
 校長は自信満々に名前を言った。
「西川アサリ」



 すぐさま、生徒たちはザワつきはじめた。
「アサリだって」
「アリサじゃねーの?」
「アリサだろ、どう考えても」
 しかし、校長は最後まで、失敗に気づかなかったそうだ……。
 アリサちゃんには申し訳ないが、私は涙が出るほど笑ってしまった。
 いや~、上には上がいるものだ。それとも、下には下が、というべきか?
「ひっひっひ、校長先生はきっと、『あさりちゃん』を全巻持っているんだね」
「うん、たぶん隠れファンなんだよ」
 そうじゃなければ、こんな間違いしないでしょ。
 ね、校長センセ。




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入学式のわな

2010年04月08日 20時56分38秒 | エッセイ
 先日、勤務先の高校で入学式が行われた。
 初々しい一年生は可愛い。しかし、入学式にまつわる思い出にはろくなものがない。
 
 初めて担任を持ったのは、27歳のときだった。あの頃は、肌にシワもシミもなく若かった……。
 拍手で式場に迎えられてから、緊張の連続だったことを思い出す。最後に記念写真を撮ったときは、心底ホッとしたものだ。
 が、ひと月後、出来上がった写真を見てガッカリした。黒系のスーツを着ていったのがいけなかったようで、私も、生徒と同じ制服を着ているように見えるのだ。すっかり生徒に埋もれてしまった……。
 隣には、副担任のアラフォー・ママさんが写っている。白系の、いかつい肩パットが入ったニットスーツがひときわ目を引き、生徒とは一線を画していた。

 こっちのほうが担任みたい……。

 副担任に担任の座を奪われ、私は敗北感を味わった。

 2回目の担任は、33歳のときに受け持った。
 前日に入学式の打ち合わせをして、段取りを確認した。担任が新入生の名前を呼ぶ形式で、呼ばれた生徒は返事をして起立する。クラス全員の呼名が終わったら、担任の「着席」という合図でいっせいに座るのだ。そして、次のクラスの呼名となる。
 そのとき、私は6組の担任だったので、司会者から特別な指示を受けた。
「笹木先生のクラスは最後なので、呼名が終わっても着席させないでください。そのあと私が『新入生起立』と言いますから、座らせてもすぐ立つことになるんです」
「なるほど、わかりました」
 私は納得し、台本にメモを取った。

 当日、黒系の服は避け、ピンクのツーピースで式に臨んだ。これで写真も大丈夫だろう。
 入場が終わると、まもなく新入生の呼名となる。生徒にはあらかじめ、「緊張して、名前を飛ばしちゃったらゴメンね」と言っておいたが、間違いは許されない。全神経を集中させ、生徒の名前を読み上げた。
「以上、40名」
「着席」と言わずに終わらせると、近くにいた先生数人が、小声で「着席」「着席」とささやいた。式の詳細を全員が知っているわけではないので、私が言い忘れたと思っているのだ。
「いえ、言わなくていいんです」と反論したかったが、式典中である。私語は慎まねばならない。結局、何も言えないままで式は進行し、私は「言い忘れた人」にされてしまった……。

 キーッ、悔しい!!

 しかし、服に気をつかったから写真のほうは大丈夫だ。何も心配せずに、でき上がった写真に目をやった。思った通り、ピンクの服は紺の集団に同化しない。でも、入学写真という雰囲気ではなかった。
 私の隣にいた男子生徒が大柄で、ひときわ目立つ体格だったからだろう。前列中央の私とその男子だけが、異様にクローズアップされた写真となっていた。

 この雰囲気は……。ちょっと認めたくないな……。

 自分が認めなくても、生徒は思ったことを口にする。クラスで写真を配布したら、たちまち教室中に笑いが起きた。
「なんか、これ、結婚式の写真みたいだね!」
 
 ああ……、それを言わないで!!
 
 入学式には、わながある。




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18周年記念婚礼写真

2010年04月04日 20時46分15秒 | エッセイ
 先週、18回目の結婚記念日を迎えた。
 娘に「結婚式の写真が見たい」とせがまれ、古いアルバムを引っ張り出す。教会での挙式だったため、私はウエディングドレスとカクテルドレスしか着ていない。
 結婚当時はそれで満足だった。でも、18年経った今はちょっと違う。

 ああ、着物も着ればよかった……。

 タレントの神田うのは、「趣味は結婚式」と公言している。先日、7回目の挙式をしたと報道されていたが、実に羨ましい。金と暇さえあれば、私だって何度も結婚式を挙げてみたい。
 そこで、今年は思い切って、吉祥寺の写真館で婚礼写真を撮ってきた。20年という区切りではなく、18年という半端な記念だが、写真に残る以上、1歳でも若いほうがいい。ひとまず、きらびやかな衣装を身につけ、思い出の写真が撮れれば満足なのだから、合理的な選択だろう。

 しかし、40代での婚礼写真は気恥ずかしいものがあり、なかなか勇気がいる。
「お嬢様も入れて、家族写真にすることもできますよ」
 スタジオ側の提案に、気が軽くなった。それなら、安心して話を進めることができる。私は、家族3人の休みが合う日に予約を入れ、白無垢、色打ち掛けの柄を選んだ。

 衣装が2着の場合、撮影に3時間ほどかかる。その日、私は13時にスタジオ入りし、撮影準備を始めた。
 まずは化粧からだ。メイク担当のお姉さんが、実物の10割増しに変身させてくれた。化粧品でかぶれることもなく、笑いジワもできず、素晴らしい仕上がりである。
「じゃあ、次はカツラをつけていきますね」
 化粧のあとは、ヘアメイクだ。髪をゆわき、ネットを巻き付けてカツラの土台を作る。鏡に映る私は尼僧のようになり、「こんな姿は誰にも見せられない」と苦笑した。今のカツラはだいぶ軽くなったようだが、かぶせられると結構重かった。
「頭が小さいですね」
 そう言われると、複雑な気持ちになる。決して「軽いですね」と言われたわけではないが、中身が足りないのでは不安だ……。
 でも、もし「大きい」と言われたら、頼朝公のような「大頭なのか……」と落ち込むだろう。標準サイズが無難で安心する。
「ご主人様と、お嬢様がお見えになりましたよ」
 支度に時間のかからない二人は、1時間後の14時に来店することになっていた。夫は黒の紋付き袴を、娘は私のよそゆきツーピースを着る。

 白無垢の着付けが終わると、鏡の中には時代劇の奥方のような私がいた。日本髪を結い、何本ものかんざしを差して、純白の艶やかな着物をまとっている。私はすっかり感激してしまった。

 すごい、太秦に来たみたい!!

 いや、タイムスリップしたみたいというべきか……。
 ウエディングドレスにも胸がときめいたが、和装には和装のよさがある。どちらも着ることが出来て、本当に幸せだと思った。女性は着飾ることが、この上なく好きなのだ。

 撮影は、最初は2人、次は3人、その次は1人ずつ行っていく。
 白無垢が終わったら色打ち掛けを羽織り、髪も綿帽子から角隠しに替えて、また同じように撮る。写真は、全部で122枚となった。そこから気に入ったものを選ぶわけだが、17枚あったので、写真集という形でプリントしてもらうことにした。
「表表紙と裏表紙の写真はどれにしますか?」
 中の写真より、若干小さめになるのが表紙だ。しかも、汚れやすいことを考えると、イチオシの写真にしないほうがいいらしい。
「いい写真じゃなくて、どうでもいい写真にしようよ」
 私が提案すると、娘が間髪入れずに答えた。
「じゃあ、これとこれね」
 それはどちらも、夫が単独で映っているものである……。夫は悲しそうに言った。
「どうせ、どうせ……」
 
 写真の仕上がりは今月下旬の予定だ。
 今年は派手に祝ってしまったので、来年以降、尻すぼみになるのが怖い。そんなことを店員さんに話したら、彼女はあっさり言ってのけた。
「じゃあ、毎年お撮りになったらいかがですか?」

 この、商売上手!




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桜に集合

2010年04月01日 19時31分11秒 | エッセイ
 庭の桜が八分咲きになった。大の字になって開いた花が、ふわふわと綿のように、枝や幹を飾りつける。
 思わず見とれてしまう美しさに、桜の下で、宴会を楽しむ人々の気持ちがよくわかる。

 桜に惹かれるのは、何も人間だけではない。ときには、蜜を求めた蜂がやってくる。私は、子どもの頃、何度も蜂に刺されたことがあるため、羽音を聞くだけで鳥肌が立つ。
 花が散る頃には、毛虫が姿を現す。地面にパラパラとフンが落ちているときは、桜の下を通らぬよう、気をつけねばならない。過去には、アメリカシロヒトリが大量発生した年もあったそうだ。背中に長い毛をびっしり生やし、見ているだけで体中が痒くなるこの虫が、ウジャウジャひしめき合っている様子を想像すると、気が遠くなる。もし、今度同じことが起きたら、私は実家に非難するだろう。

 先日、珍しいお客が来た。
 スズメよりもひと回り小さな、緑色の小鳥である。枝にとまり、花にくちばしを突っ込んで、蜜を吸っているようだ。

 何ていう鳥だろう?

 初めて見る鳥だ。緑といっても「ウグイス」ではあるまい。ウグイスは、滅多に人前に姿を見せないというではないか。
 そういえば、「ウグイ」という名の生き物もいた気がする。はてさて、どんな生物だったろうか。
 調べてみると、コイ科の地味な魚だった。



「ウグイ」の複数形は「ウグイス」。なんつって♪

 絶望的なジョークを思いついたが、人格を疑われてはいけないので、口外せずにおいた。

 どうやら、この緑の鳥は「メジロ」というらしい。



 3羽でやってきて、薄ピンクに彩られた枝の上を、好き勝手に渡り歩いている。体の重みで枝が揺れ、花びらがハラハラと散る。鉄棒のように枝で前転したり、サーカス顔負けの綱渡りをしたりと、曲芸師のような身のこなしに喝采を送りたくなった。

 そうだ、カメラ、カメラ!

 部屋からデジカメを持ち出し、数メートルの距離から構えても、メジロ3兄弟は逃げようとしない。野鳥は警戒心が強くて、撮影が難しいと聞いていたが、この鳥たちは人間に慣れているようだ。シャッター音に臆することもなく、悠々と舌鼓を打っていた。
 5分ほど経ち、引き上げどきと見たのか、3兄弟は何の前触れもなく飛び立っていった。

 あーあ、行っちゃったよ……。

 取り残された淋しさと、ろくな写真が撮れなかったもどかしさに、私は落胆した。
 しかし、30分ほどすると、またもや桜には緑色の姿が戻ってきた。しかも、今度は4羽に増えている。私は、3兄弟の長男が、彼女を連れてやって来たのではと想像した。
「今度こそ」と意気込み、ベランダに出てレンズを向ける。メジロたちは、先ほどと同じように、私にまったく気づかないのか、あるいは気づいたのに無視しているようだった。

 ひょっとすると、こんな会話がささやかれていたのかもしれない。
「ねえ、近くに人間がいるわよ」
「ああ、さっきもいた奴だ。俺たちの写真を撮ろうと、無駄な努力をしているのさぁ」
「あはは、望遠レンズもないのに、無理よね~!」

 はい、その通りです……。

 頑張った割には、この程度の写真しか撮れなかった。非常に残念だ。
 中央やや上のメジロ君が、おわかりになるだろうか。



 メジロ君、今度は来るときは、ご両親も一緒にね。




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コメント (8)
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