これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

代官山の怖い話

2022年05月01日 20時41分15秒 | エッセイ
 何色が好きかと聞かれたら、迷わず「青」と答えるだろう。
 紺のような濃い青ではなく、薄目で空のような青がいい。
 私の好みを反映して、スマホケースを買い替えるときは、この色を選んだ。



 とても気に入っているけれど、ケースよりもスマホ本体を買い替えたいのが本音だ。
 まあそれは、夏のボーナスが出てからにしよう。
 さて、先日、渋谷で地域の集まりがあった。渋谷といってもヒカリエなどがある駅前ではなく、恵比寿に近い住宅街だ。会合の終わりが20時。恵比寿駅か代官山駅から電車に乗るのが早そうだった。
「副都心線を使うなら、代官山よね」
 私は方向音痴である。初めての場所は、スマホにダウンロードしているグーグルマップを使わないと不安だ。スマホケースを開けて「代官山駅」と入力し、経路を確認したら8分かかるとわかった。
「えーと、こっちでいいのかな」
 矢印の方向に向かって歩く。GWのせいか、ほとんど人がいない。交通量自体が少ない気がした。23区で2番目に人口の多い練馬と違って、住人の数が違うのかもしれない。
「あ、線路が見えてきた」
 線路沿いを進むと、改札につながる階段があった。もう、ここまで来れば、地図に頼る必要はない。グーグルマップを終了し、スマホケースを静かに閉じた。
「そうだ、電車を調べてなかった」
 代官山は各停しか停まらない。一体、何時に家に着くかを調べようと、再びスマホケースを開いた。
「ん? 何か汚れてる」
 画面に白い粉がついていた。ケースのフタの裏側も、同じように汚れている。さっきまで何ともなかったのに、どうしたというのか。
 よく見ると、画面の端の、電源ボタンのあたりに、小さな蛾がペッチャンコにつぶれて貼りついていた。どうやら、地図を見ているときに、灯りにつられて蛾がとまったらしいが、気づかずケースを閉じたため、死んでしまったようだ。蛾は羽を広げたまま、押し花と化して息絶えていた。
「ええっ」
 地元の練馬だったら、虫が多いのもわかる。しかし、代官山で蛾にたかられるなんて思ってもみなかった。気の毒なことをしたと後悔しつつ、死骸を指で弾き、地面に落とす。
「あーあ、やっちゃったな……」
 次回の会合は6月だ。
 スマホを開いたら、閉じる前に画面をよーく確認しなきゃ。
 水色のケースをティッシュで必死に拭きながら、「代官山は怖い場所かも」と身ぶるいした。


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コメント (4)
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