これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

歯科医が勧めるコロナ対策

2021年01月24日 20時47分59秒 | エッセイ
 知人が舌がんの手術をした。幸い経過は良好で、転移もしていなかったようだ。今ではすっかり元気になったが、定期的な通院や検査が必要らしく、気が抜けないとぼやいていた。
「怖いなぁ。私は大丈夫かしら」
 鏡で口の中を確認してみる。舌の表面や側面には異常がないけれど、裏面には黒い小さなホクロのようなものがあった。
「うわうわうわ、これはひょっとして……」
 ちょうど、歯医者の予約日が近づいていた。医師にズバリ尋ねてみるのがよかろう。
「笹木さん、その後、お変わりありませんか」
 緊急事態宣言のせいか、歯科はガラガラで、医師とも話しやすい。私は治療を受けながら、話の切れ目を待っていた。
「歯茎の状態はいいですよ。安定しています。この調子です」
「犬歯のところは、歯周ポケットが深めなので気をつけてください。今は大丈夫です」
 医師の話はなかなか途切れない。コミュニケーション能力のない人だと、相手の話を遮ってでも自分の話を聞いてもらおうとするのかもしれないが、それは得策ではない。辛抱強く待っていたら、かなりためになる話を聞くことができた。
「歯周ポケットは、ウイルスやバイ菌が繁殖するのに最適な場所なんです」
「へええ」
 適温ということを考えると納得できる。
「コロナウイルスも、ここで繁殖するんですよ」
「え」
「コロナで亡くなった方は、死因のほとんどが肺炎か誤嚥性肺炎です。口の中で増えて、そのまま肺に行くわけです。だから、増やさなければいいんです」
 医師が一番言いたかったのは、これであろう。かなり熱がこもっていた。
「外出から戻ったら、まずお風呂に入ってウイルスを洗い流しましょう、なんて言っていた人がいましたが、まったくのナンセンス。帰ったら真っ先に歯間ブラシですよ。あとは、うがいと手洗い、人混みの中ではマスク。インフルエンザと同じです」
「はい」
「歯周ポケットを浅く保つ工夫をすれば、コロナは怖くありません」
 患者一人ひとりに同じような話をしているのではと察した。歯科医が啓発する感染症対策は、なかなかの説得力がある。



 ちなみに、本校の産業医が啓発する感染症対策は「自分がコロナウイルスを持っていると思って行動すること」だ。家族であっても、コップやタオル、衣類などを共用しない、食事中にペチャクチャしゃべらないなどを守ることで、いざというときは役に立つ。できることは何でもやらないと。
 ハッと気づいたら、話が途切れていた。すかさず、医師に、これは舌がんではないかと質問してみた。
「いえいえ、何ともないですよ。舌がんは蜘蛛の巣みたいになっているから、見たらすぐにわかります。内臓と違って見えるだけいいですけどね」
 よかった、違ったみたいだ。
 でも、今は違うというだけで、この先も大丈夫という保証はない。
 がんもコロナも、対策立てていきましょう。


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 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
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コメント (4)
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