これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

2020 度忘れバースデー

2020年05月03日 21時04分48秒 | エッセイ
 娘の誕生日が近づいているのはわかっていたが、料理を作るのに疲れてしまった。こういうときは、家族の気配りがうれしい。
「何かとろうよ、宅配で」
「そうしよう、そうしよう」
 お祝い膳や仕出し弁当の宅配はいろいろな店でやっている。中でも、季膳味和(ときぜんみわ)という店がよさそうだったので、初の注文にチャレンジしてみた。
 馴染みのない店だと夫が心配する。
「今日だよね」
「うん」
「ちゃんと来てくれるかな」
「11:30~12:30で指定したから、そのころじゃないの」
「ふーん」
 予定通り、お料理が到着すると安心する。レストランと違い、配膳や片づけは自分たちでしなければならないけれど、給食当番のように分担するのもまた一興。お膳のひもを引き、加熱している間に、潮汁を温めたり茶碗蒸しを並べたりと準備をした。
「いただきまーす!」
 


 好きなものばかりで、どれを最初に食べるか悩む。ここは、やはり肉か。
 私の箸は、すき焼きに突進した。



「うめー」
 フォアグラやあん肝も好物だ。すき焼きの次はこれを狙う。



 こってり系ばかりではいけない。お次は……。



「何だっけ、これ。タコじゃなくて、えーと」
「フグでしょ。ボケた?」
 娘の冷たい反応にたじろいだが、15分後にはまた「馬刺しじゃなくて、えーと何だっけ」と度忘れを繰り返し、夫からも呆れられた。ぴえん。
 一番美味しく感じられたのがカニだ。



 暑かったせいもあるのだろうか。カニ酢やレモンでいただくと、体中から「イケるぅ~」と親指を突き立てられた感の反応が返ってきた。しかも、量が多く満足度が高い。これはおススメだ。
「ウニがいっぱい載ってるよ」
 一方、娘の目当ては寿司らしい。



「蛤のにぎりは初めてかも。いいね、これ」
 私よりも速いペースで7貫平らげ、お腹いっぱいになっていた。
「くるし~」
 食後は横になり、ダラダラと過ごす。夕食の時間が近づいてきたが、全然空腹感がない。
「ねえ、夕飯はちょっとでいいよね」
「うん」
「じゃあ、消化のいいものにしよう」
 冷蔵庫を見ると大根がある。みそ汁はこれで決まり、と考えたのが間違いだった。
 昼に作った煮物を温め直し、鍋のフタを取って凍り付く。
「し、しまった……。切り干し大根の煮物を作っておいたんだっけ」
 おかげで、見事にかぶってしまった。



「……やっぱり、ボケたんじゃない?」
 夫と娘の唖然とした顔は、カンペキに無視をした。もう手遅れじゃ。
 来月は夫の誕生日があるから、すっかり気に入った、この宅配を頼もうかな。
 今度は「フグ」って言えるからね。


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コメント (10)
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