これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

名前を言えないあの……

2020年02月02日 21時31分29秒 | エッセイ
 1月31日は、昼過ぎから冷たい風が吹きつけて、かなり寒くなった。
 ちょっと早めに帰ろうと、18時半に靴を履き替えていたら、サッカー部顧問がグラウンドから戻ってくるところだった。
「お先に失礼しま~す」
「う~、ブルブル、お疲れさまです。外は凍えますよ」
 こわばった表情で挨拶を交わす。冷蔵庫と化した体育館以上に、吹きさらしの屋外競技はつらかろう。
 自転車置き場でカギを外す。前かごに荷物を入れて、手袋をしたら出発だ。
「あれれ?」
 ロックは解除されているのに、なぜか前輪が動かない。強引に動かせば多少は回るが、相当な抵抗感がある。どうしたのだろう。
「パンクかな?」
 いやいや、タイヤは無事だ。
「何か挟まってるのかな?」
 それらしきものは見当たらない。でも、何かがタイヤの邪魔をして、走らせないようにしていることは間違いない。
「後輪はどうだろう」
 スタンドを立てて後輪の動きを見ると、こちらはまったく異常なし。
「やっぱり前か」
 じっくりじっくり、穴のあくほど観察すると異常が見つかった。



 おそらく、強風で自転車が倒れ、隣の自転車のペダルあたりにぶつかったのだろう。陥没したパーツが大きく凹み、タイヤのブレーキ役となってしまったらしい。
「ということは、凹みを戻せば走れるってことさ」
 事務室でマイナスドライバーを借り、パーツの変形を直す。タイヤに当たらない程度に戻せば、何事もなかったかのように走れた。たまたま、職場だったから道具を使えたけれど、出先だったら大変だろうな……。
 そんなこんなで、無事に家に帰れたが、家族への説明が難しい。
「ほら、タイヤの上のカバーみたいなヤツあるじゃない。あれが凹んでさぁ」
「カバー? どんなのだっけ」
 なかなか通じない。屋根というのも違うし、一体このパーツは何という名前なのだろう。
 調べてみたら、「フェンダー」というらしい。年配者であれば、「泥よけ」の方がわかりやすいかもしれない。
 でも、「この前、前輪のフェンダーが凹んじゃってエライ目にあったよ~」と言ったところで、理解できる人はほとんどいないと思う。多くの人にとって、フェンダーは「名前を言えないあのパーツ」なのだ。
 風の強い日は気をつけましょう!


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コメント (8)
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