これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

平成最後のクリスマス会

2018年12月24日 19時49分43秒 | エッセイ
 昨日は平成最後の天皇誕生日とあって、一般参賀に訪れた方が8万2850人という記録的な数だったらしい。
 昭和天皇崩御の際、私は大学3年生だった。平成2年には就職し、4年に結婚、8年に出産、という具合にライフイベントが密集している。平成は、私の黄金期といっても過言ではないくらいだ。
 クリスマス会も、天皇誕生日の12月23日にやるとちょうどいい。来年からは平日となり、クリスマス会ができなくなるようだから、最後の祝日をありがたく活用させてもらった。
「チキンはうちで焼くよ」
 クリスマス会の会場となる妹の家では、毎年、見た目も味も花丸の料理が並ぶ。私も家で作って持ち寄るけれど、でき立てを食べさせられないのが残念だ。今年は海老とホタテのグラタン、ベーコンとほうれん草のキッシュなどを持っていった。
 さらに、今回お初のこのサラダ。リースサラダというものだ。



 オクラを茹で、スーパーで買った千切りキャベツとプチトマトと一緒に並べて、ドレッシングをかけるだけのお助けメニューである。これにスモークサーモンをバラの花のように丸めたり、色とりどりの葉物を混ぜたりすると、さらに豪華になる。だが、認知度は低かった。
「あら、真ん中には何が入るの?」
 来年喜寿を迎える母が、首を傾げて聞いてくる。「おばあちゃんだから仕方ない」と思っていたら、まだ40代の義弟まで「真ん中のスペースは何?」と尋ねてくるから、社会的な認知度が低いようだ。ひょっとすると、リースに見えなかったのかもしれない。
 落胆しつつも、平成最後のクリスマス会が始まった。いつになく、話も盛り上がる。気づいたら、東京タワーで8月まで開催されていた「東京タワーの赤い鎖」というお化け屋敷の話題になっていた。
「ミキはね、お母さんと行ったけど、相手を間違えたと思った」
 娘が身振りを交えて、私とお化け屋敷に入ったときの裏話を披露していた。
「お母さんが、最後に出てくる亡霊をにらみ合ったまま動かなくて、早く行こうとって言ったんだよ」
 そうそう思い出した。私は感受性も反応も鈍いので、怖がりではない。「キャー」だの「うわぁ」だのと悲鳴が交錯する入口で、順番待ちをしていたが、仕事の帰りだったこともあり、一向にテンションが上がらなかった。
 やっと順番が来て、娘と中に入った。しかし、仕掛けがあまりにもお粗末だった。センサーに反応して、何かが飛び出してくるということはゼロ。普通に歩いて、死体に見せかけた人形を見せられ、「工夫が足りないな」とガッカリしていたところに、鎧兜をまとった亡霊が突進してきた。「ほう」と立ち止まり、亡霊をじっくり観察する。人形ではなく、生身の青年が演じているところが新鮮だった。花やしきだったら、全部機械だし~と比べたからだ。
 どうやら、ここは観客が悲鳴を上げて逃げ惑うスポットだったらしい。「せっかくだから、もうちょっと見ていこう」と考えて、亡霊をジロジロと見ていたら、亡霊役の青年も「殺すぞ~」というポーズのまま動かず待っていてくれる。機械と違って、時間が経てば元の場所に戻るわけではないのだ。逃げない客がいたら、そのまま怖い顔で威嚇するというマニュアルがあるのではと察した。
「ねえ、もう行こうよ」
 娘が呆れて私に移動を促す。飽きたらしい。いや、小腹が空いて、おやつが欲しくなったのかもしれない。私も喉が渇いたから、ケーキセットを頭に思い浮かべ、亡霊から目をそらして進行方向に向かった。5mも歩かないうちに出口となり、「は? もう終わり?」と驚く。こんなチャチな構成では、富士急ハイランドの戦慄迷宮に申し訳ないと思わないのか。大して怖くないのに、大げさな悲鳴をあげる観客ばかりだと、お化け屋敷のクオリティが上がらない。ひょっとして、鈍い私がいけないのかもしれないとは気づかなかった。
「もっと、キャーキャー叫ぶ人と行く方が盛り上がるよね」
 娘のつぶやきに、妹が答える。
「怖がりはそこにいるよ」
 自分の息子を指さし、妹は笑っていた。たしかに、甥は幼いときから「ヘタレ」の代名詞である。シャンパーニュのコルクを抜くとき、「ボンッ」という音が聞こえないように、目をギュッとつぶって全力で耳をふさぐ姿を思い出す。象に触るチャンスがあっても、怖くて手を伸ばせなかった。お化け屋敷には、そういう相手と入った方が楽しめそうだ。
「でもまあ、お化け役も大変よね」
 他人事のようにつぶやくと、姉が茶々を入れてきた。
「いや、アンタみたいな客が大変にしているだけよ」
「アハハハハハ」
 両親や妹にも笑われた。やはり、私は絶叫マシンオンリーにすべきなのだろう。
 来年のカレンダーを見ると、イブが火曜日、クリスマスが水曜日となっている。となると、クリスマス会は21日の土曜日か22日の日曜日にするしかなさそうだ。早ッ!

 クリスマスイブの今日は、近所のカラオケに行った。
「ビッグエコーでチキン食べ放題、パンケーキサービスのクーポンが当たったよ」
「わーい」
 アプリを入れている娘のスマホに、当選通知が来たという。せっかくだから、3時間歌って第2回目のクリスマス会をする。これで食事は不要となりそうだ。
「チキンはいつかな」
「準備ができたら持ってくると思う」
 では歌って待てばよい。私のレパートリーは知れていて、『世界に一つだけの花』や森山直太朗の『さくら(独唱)』などを歌った後は、アニソンに移り『翔べ! ガンダム』となる。
「もえあが~れ~、もえあが~れ~、もえあが~れ~、ガンダム」



 気持ちよく歌っているところに、ノック音がした。
「お待たせいたしました。チキンをお持ちしました」
 なんというタイミング。



「まだ怒りにも~える~、闘志がある~なら~」
 歌は途中で止まらない。



「失礼いたしました」
 チキンを置いたスタッフが静かに退室していった。
「うえーん、ミキまでガンダムオタクだと思われちゃったよ」
 娘の落ち込みぶりは相当だったが、まあよいではないか。
 パンケーキはこちら。



 平成最後のクリスマス会は、聖夜と対極だったかも……。
 みなさま、メリークリスマス♪


    ↑
クリックしてくださるとウレシイです♪

※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
 「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
コメント (10)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする