これは したり ~笹木 砂希~

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2018年07月01日 21時23分51秒 | エッセイ
 仏教徒の同僚・栗本さんは、山で熊の親子に遭遇したことがあるそうだ。
「最初、子熊と目が合ったんです。後ろに気配を感じて振り返ったら……」
 母熊が子を守るため、猛然と突進してきたという。
「いやはや、速いのなんのって。一歩も動けませんでしたよ。やられる! と思いました」
「じゃあ、なぜ、ここにいるんですか?」
「奇跡が起きたんです」
「奇跡?」
「反射的に、私は般若心経を唱えました」
 栗本さんの誦経(じゅきょう)する声は大きく、僧侶なみの迫力がある。しかし、とっさに出てくるところが常人ではない。普通は「ギャア~」などという悲鳴になりそうなものだが。
「母熊にもお経が聞こえたんでしょうね。すぐ近くまで来て急に立ち止まり、回れ右をしていなくなりました」
「へー」
「奇跡です」
 仏様の御加護だろうか。それとも、悪霊退散?
 いずれにせよ、栗本さんが助かってよかった。私も、今度、蜂に刺されそうになったら、般若心経を唱えてみよう。
 さて、その栗本さんから、写経のルールを収めたDVDを借りた。今まで自己流ですませてきたので、本格的なやり方を知りたい。画像には男性が出てきて、かなり細かい指導をしてくれる。
「まず、部屋の清掃をすませて合掌します。腹式呼吸を10回繰り返し、瞑想したあと墨をすります。文字を書くときは、息がかからないようにマスクをするとよいでしょう」
 メモをとりながら我が身を振り返った。
 墨汁だけど、いいよね?
 マスクしなかったけど、いいよね?



「1行目には内題を書き、2行目から写経を始めます。1行には17字記入します」
 ほうほう。
「写経の書き間違いはよくあることです。正しく直せば問題ありません」
 そうそう、それが知りたかったの。
「誤字は、線で消さずに隣に正字を小さく書きます」
 ふーん。
「脱字は、抜けたところの横に『、』を書き、一番下に抜けた字を書きます。抜けた字の横にも『、』をつけておきましょう」
 なるほど、『、』が目印になるわけか。
「余分字の横にも『、』を書き、線で消すことはしません。次の行の先頭に抜けた字を書き、18字にします」
「行を飛ばしたら、上に『、』をつけ、隣に抜けた行を書きます。あとから書いた行の上にも『、』をつけます」
 よくわかったが、お坊さんでもこんなに間違えるのかとおかしくなった。これから始める方でも、心強く感じることだろう。
 仏様の教えを、17字×16行で書き写したら、1行空けて奥題の「般若心経」という文字を書き、また1行空けて願文を記入する。「為 ○○○○」とするのが普通である。
 あとは、その隣に日付、そのまた隣に「姓名 謹写」と書くことになっている。住所は、書いても書かなくても構わない。
 名前は基本的に本名を使うが、個人情報を守らなければならない時代に、いいのだろうか。
 考えてみると、神社の祈祷では住所と名前は必須項目で、神前にて読み上げられる。願いごとを叶えるためには仏様に「誰の願い」なのかを伝える必要があるのかもしれない。



 故人の冥福を祈る般若心経。
 家内安全を願う般若心経。
 心願成就のための般若心経。
 それからそれから、熊を追い払う般若心経……?
 難しく考えないで、まずは書いてみてはいかが?


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 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
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コメント (6)
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