これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

秩父巡礼グッズ

2018年05月31日 22時04分35秒 | エッセイ
 本格的な巡礼はしたことがない。
 ツアーコンダクターを務めるのは、同じ職場の栗本さんだ。事前に世話を焼いてくれるのがありがたい。
「数珠はお持ちですか?」
「いえ」
「お貸ししましょうか」
「うーん、これを機に買いたいと思います」
「じゃあ、安く私が買っておきますよ」
「お願いします」
 いいものが安く手に入る仏具店があるらしく、自分では買わない方がいいと釘を刺された。では、おまかせしよう。
 当日は手ぶらで秩父に向かう。西武秩父駅の改札を出たところに、白装束に身を固めた男性がいたが、それが栗本さんだった。隣には、年配の女性が3人立っている。
「こんにちは~! よろしくお願いします」
「まあ、栗本さんのお知り合い? こちらこそ、よろしくね」
 品のいいマダムばかりで安心した。
「笹木さん、忘れないうちに渡しておきます」
 栗本さんは荷物から巡礼に必要なものを引っ張り出した。
「わげさです。これは首から下げて」



「数珠です」



 ちらりと栗本さんを見ると、左手にグルグル巻きつけていたので、私も真似をした。
 これで3500円という。たしかに、売店などで買うより安いみたいだ。
 10年ほど前に、こんなネックレスをして勤務先の高校に出勤したことがある。



 そのとき、生徒から、「先生、それ、じゅずってヤツ?」などと言われたことがあった。
 全然違うじゃん!
 西武秩父駅から歩いて御花畑駅に向かった。秩父線に乗り、和銅黒谷駅で下りる。マダムたちが荷物の整理をしている間に、お手洗いに行ってもいいかと尋ねると……。
「いいですよ。わげさは外してくださいね」
 わげさ……。ああ、首にかかっているコレか。扱いに気をつけなくては。
 まずは札所の一番を目指す。そうそう、さっき首から外したヤツは、またかけておいた方がいいのかな。
「あのう、わさげは、もうつけていいんですか」
「いや、わげさです」
「あ、わげさでしたか」
 おおっと、間違えていた! 数珠を勘違いしている生徒と同じレベルではないか。
「輪になっている袈裟という意味ですよ」
「なるほど」
 漢字にすれば輪袈裟となるらしい。これからは正しく言える気がする。
 この日は暑かった。帽子をかぶってはいたものの、そんなものでは到底追い付かない。
 栗本さんは、白装束にマッチした菅笠をかぶっていた。UV加工がされているとは思えないが、顔どころか首までバッチリ日陰になって、涼しそうに見える。
 いいな、私も買おうかな……。
 だが、旅慣れた感MAXの白装束を着ていると、道に迷った巡礼者が「ここに行きたいのですが」と助けを求めてくるではないか。栗本さんはベテランだから、「こっちですよ」「あっちですよ」と答えていたが、私には絶対無理である。初心者は初心者らしく、中途半端なハイキングスタイルでよかろう。
 さあ、まもなく札所一番に着きますよ。


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 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
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コメント (10)
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