これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

待たずに観る「怖い絵展」

2017年12月07日 20時36分18秒 | エッセイ
 連日の混雑ぶりから、「行くのやめようかな」と諦めかけていた「怖い絵展」であるが、ホームページを見たら11/16より時間延長で、毎日20時まで開館するとわかった。
「へー、仕事が終わってからでも間に合うじゃん」
 待ち時間はツイッターにアクセスすればわかる。平日は比較的空いていて、17時以降は30分待ち、19時になると待ち時間なしになるらしい。しかし、水曜日は例外らしく、全体的に待ち時間が長目だし、19時頃でも30分待ちなどと書かれている。
 なんで? ひとまず、水曜は避けて月曜にした。
「ミキは5限があるから、6時半過ぎちゃう」
「じゃあ、6時40分に公園口ね」
「オーケー」
 時間通りに娘と落ち合い、上野の森美術館に着いたのは18時45分であった。チケットを買い、ロッカーに荷物を入れているうちに、行列が途切れた。思わず、表情が明るくなる。
「ラッキー! 待たなくてすんだじゃん」
「でも、展示室内は大変混雑しておりますって書いてある」
 たしかに混んではいるのだが、伊藤若冲展の1/3くらいである。背の高い人なら、人垣の上から鑑賞できるだろうし、私のようなチビでも、最前列の流れに入れればじっくり見られる。ただし、列の進みが遅いため、どうでもいい絵はスルーしないと、あっという間に20時になってしまう。時間配分が大切だ。
「お母さん、あの人、白線の中に入っているよ」
 この展示は、10代20代の若者が多いと聞く。美術鑑賞するのは結構なことだが、マナーの悪さが気になった。絵に触れそうな位置に指を差したり、やたらと顔を近づけたりするのはよろしくない。係員に注意されても、聞こえているのかいないのか、無反応なのが不思議だ。
 この展示を見る前に、解説本を買って正解だった。



 事前に予習しておけば、「この絵、見たいな」と興味がわいてくるものだ。
 表紙にもなっている、展示の目玉「レディ・ジェーン・グレイの処刑」は言うまでもない。この他に「ソロモンの判決」という絵に惹かれた。



 ソロモンというのは、古代イスラエルの最盛期を築いた賢者であり、中央右の玉座に座っている。この王の元に、2人の娼婦がやってきた。子どもが2人いるが、1人は死んで床に横たわり、もう1人は元気に生きている。娼婦たちはどちらも、生きている子どもが自分の子で、死んだ子どもは彼女の子と言い張った。もちろん、どちらかが嘘をついている。でも、どちらが?
 さすがのソロモン、涼しい顔をして「生きている子を2つに斬り、半分ずつ与えなさい」と命じたのである。中央で剣を持つ男が、今まさに赤子を縦2つに斬らんと、大きく剣を振りかぶった。
 左の娼婦は、斬られた子どもを半分もらおうと、笑みを浮かべて布の準備をしているが、背を向けた娼婦は違う。必死の形相で王にすがり、「彼女にあげてもいいから殺さないで!」と叫んだ。絵は、この瞬間を描いている。ソロモンは、「殺さないで」とすがった女こそ本当の母親だと見抜き、右手を上げて刑吏を止めた。子は無事、本当の母親の元へ返されたという。
 なんか、いい話だ。
「ミキはね、飽食のセイレーンっていうのが好きだな」



 娘が気に入ったのはこれだった。セイレーンが強くてカッコよく見えるのだという。ついでに、こうつけ加えた。
「ベッキーに似てない?」
 ……あ、似ています。
 でも、ベッキーが聞いたら、気を悪くするかもしれないよ。
 小さい絵は飛ばして、大きい絵だけを見たのに、出口についたときはちょうど20時になるところだった。
 展示室内やミュージアムショップには、まだたくさんの人が残っている。
 スタッフの方々は、何時になったら帰れるのかと、気の毒に思った。
 ……お疲れさまです。


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コメント (8)
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