これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

高齢者と行く秋の鎌倉

2017年11月26日 21時13分24秒 | エッセイ
 母に、姉と鎌倉で紅葉見物をすると話したら、「私も行きたい」と言われた。ついでに父も連れて、4人で行きたいのだそうだ。
「いいわよ、別に」と答えたものの、70代後半の両親である。北鎌倉で下車して、円覚寺と明月院、建長寺を回るルートは無理だろう。「さて、どうしよう」と考え込み、両親向けのコースに手直しした。
 それにしても、鎌倉は人気がありすぎる。池袋から湘南新宿ラインに乗ったら、グリーン車でもぎゅう詰めだった。通路すら人だらけで通れない。辛うじて、2階席に通じる階段にすべり込み席が空くのを待つ。終点の1つ手前の鎌倉駅まで乗っていた人の多かったこと。晴れていたから、余計に混雑したのかもしれない。
 まずはランチである。和食の好きな両親に合わせて、鎌倉ごはん海月で「鎌倉野菜のおばんざいランチ」をいただいた。



 もちろんビールも。



 男性は物足りないと思うけれど、女性やお年寄りにはこのくらいの量がちょうどいい。どれも美味しかったし、店を切り盛りしている若夫婦にも好感が持てた。また行こう。
 食後は鶴岡八幡宮に向かう。
「鎌倉には、小学5年生の遠足で来たきりだよ。うれしいねえ」
 母ははしゃいでいた。75歳になったというから、64年ぶりの鎌倉か? さすがに、本宮までの階段では息を切らしていた。



「ふうふう、上れた」
 父は意外に平気そうで、息が上がった様子もない。男女の差だろうか。お参りをして階段を下りると、早速紅葉スポットがあった。



「おお~」
「キレイ」
 まだ早かったようだが、母が「12月は寒いからイヤ」とわがままを言うから、この時期になった。



 でも、私が「12月2日にしよう」などと決めたら雨が降るかもしれない。結果として、暖かいうちに来られてよかったような気がする。



 駅に戻る途中で豊島屋本店に寄り、おみやげの下見をする。母は、どうしても鳩サブレーを買いたいらしい。何個入りがあっていくらなのか、細かくチェックしていた。切りのいいところで声をかける。
「疲れたでしょ。豊島屋の茶寮でお茶を飲もう」
 高齢者と出かけるときは、多めに休憩をとるといいらしい。母はくずきり、父は小倉しるこを頼み、私は裾模様という和菓子にした。



 素朴な味に癒される。
 ひと休みしたら江ノ電に乗る。これがとんでもない混雑で、ホームはこれから乗ろうとする人たちで埋まっていた。ヤフーの乗換案内には「江ノ電は混雑のため遅延」という情報も出たくらいである。通勤ラッシュ並みの乗車率で、半分は長谷で下りた。私たちと同じところを目指しているのだ。
「ああ、すごい人だねぇ」
 母がまたふうふう言っていた。これから目指すのは大仏である。いくら混んでいても、ここは外せない。狭い歩道を数珠つなぎになって歩き、10分ほどで到着する。
「俺は初めてだよ。大仏を見るのは」
 79歳の父がボソッとつぶやいた。新潟で生まれ育ち、18歳で上京して以来、父は鎌倉に来たおぼえがないという。多くは語らないけれど、大きさや神々しさに見入っているようだった。



 その日は特に、雲の形が大仏様にマッチしていたと思う。



 来た道を戻り、長谷寺の近くで左に曲がった。この先に「たい焼き なみへい」という店がある。父はたい焼きが好物だ。家の近くには屋台もないというので、焼き立てを食べさせたかった。
 結果として、これは裏目に出た。父は、しるこでお腹が膨れていたのか、食欲がなかったようだ。しかも、焼きあがるのを待っていたから、15分も時間が無駄になった。



 時間を気にしていても、甘くて温かいものは人を笑顔にさせる。
「おいしい」
 自然に4人がハモった。焼き立ては、皮がパリパリ、餡がホカホカで、実にイケるたい焼きだった。行列ができるのもわかる。
 最後に、鎌倉文学館に立ち寄る。



 ここは私が来たかった場所だ。レトロな建物が美しい。



 紅葉もキレイと書いてあったのに、まだまだだ。鶴岡八幡宮より赤くなかった。



 せっかくだから、館内も覗いてみたのだが、これが仇になって江ノ電を1本逃した。12分後の電車は超満員。どうにかこうにか乗れたからよかったものの、高齢者に満員電車はツラい。タクシーを使うなどの配慮をすべきだったと反省する。
 江ノ電鎌倉駅では鳩サブレーが売られており、私は7個入りを買った。



 しかし、母はその程度では気がすまない。
「9個入りを11箱ください」
 えっ、そんなに買うの? と驚く数であった。
「だって、○○さんに××さん、あの人にこの人にもあげたいじゃない」
「持って帰れるの?」
「大丈夫だよ。駅に車を停めてあるし」
 豊島屋では、ネット販売もしているのだが、アナログな母にはわからない。父と手分けして、大きな袋を持ち帰っていた。おみやげを渡す楽しみを考えると、重さも苦にならないのだろう。
 JR鎌倉駅に入ると、ホームにはまた湘南新宿ラインを待つ人があふれていた。グリーン車もしかり、行列の後ろになったため、4人でボックス型に座ることはできず残念である。加えて、北鎌倉駅では真っ赤に色づいた円覚寺の楓が目に入り、「キイイ~」と無性にムカついた。
 両親は「とても楽しかった」と言ってくれたが、不完全燃焼感のせいか、私はいまひとつスッキリしない。
 次に両親と出かけるときは、戦場めいた人気スポットは避けようと誓った。


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