これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

せっせとのぼろう 金刀比羅宮

2017年08月31日 22時27分14秒 | エッセイ
 日本で一番面積の小さな県といえば、香川県。
 カツオにつられて訪れた高知のついでに、うどん目当てで香川に向かう。



 残念ながら、徳島は特急の車窓から、大歩危・小歩危を見ただけだ。とても美しい渓谷だった。
 うどんは最終日の楽しみにとっておこう。琴平の宿に荷物を置き、まずは金刀比羅宮にお参りせねば。
 さて、金刀比羅宮といえば、785段もの階段を上らないと、御本宮にたどり着けないことで有名だ。365段の大門までは、シャトルバスを利用することもできるが、食べ物や土産物で賑わっているのはふもとの表参道である。美味しいものにありつくためにも、ズルしちゃいかん。
「あはは、かまたまソフトだって! ネギまでついてる。ウケる~」
 娘は、かまたまうどんをデザインしたソフトクリームを買った。



「お母さんは金箔ソフトにしようっと」
 私はキンキラキンのリッチなものを選ぶ。



 夫は、はちみつソフトなるものを平らげたあと、「階段ヤダヤダ」と駄々をこね、大きな腹を揺すりながらホテルに戻ってしまった。途中で倒れられても困るから、別にいいけど。
 土産物を見ながら、娘が言った。
「友達から『おいり』を買ってきてと頼まれたんだよね。売ってるかな」
 おいりとは、香川県で結婚式の引き出物に用いられる、ひなあられに似た菓子をいう。淡いパステルカラーと、ビー玉のような丸い形が特徴で、とても可愛らしい。
「あ、あれはどう?」
「いいね」
 たまたま、通りかかった店先に、ポップなおいりが並んでいた。



「いらっしゃい」
 貫禄のあるおかみさんが声をかけてくる。
 最初、娘は荷物になることを嫌がり、帰りに買おうとした。でも、おかみさんから「こんぴらさんに持っていくと縁起がいいよ」と教わり、「それもそうだ」と納得していた。もらった人も、絶対その方がうれしいだろう。
「お姉さんたち、杖ある?」
「杖?」
「よかったら、うちのを貸すよ。レンタル料はいらないから」
「じゃあ、借りまーす」
 ここでは若い人も年配の人も、杖をついて歩くことが多い。そういえば『るるぶ』にも、あったほうがよいと書いてあったのに、すっかり忘れていた。右手にはバッグと日傘を、左手には杖を持って、長い階段を上り始める。
「おっ、これはなかなか」
 杖に体重をかけると、ひょいと足が上がるようになる。体も軽く感じられ、たしかに楽だ。素直に借りておいてよかった。
 この日、香川県の気温は36度。もちろん暑かったし、たっぷり汗もかいたが、高知城蒸し焼き地獄に比べたらどうってこたあない。杖の力を借りながら、気合いを入れずに上ることができた。
 628段目の旭社。



 帰路に参拝するとは知らず、先にお参りしてしまった。
 この辺りも、まだまだ長い階段が続いている。



 785段でようやく御本宮に到着だ。



 何をお祈りしたかは、ヒ・ミ・ツ!
 幸せの黄色いお守りが、金刀比羅宮の一番人気なのだとか。来られなかった夫の分も買い求めた。



 歩き足りない人は、奥社に進むとよい。1368段目の厳魂神社がゴール地点だ。私たちは、夕食の時間が迫っていたので、御本宮で引き返した。
「杖をありがとうございました。すごく役に立ちました」
 おかみさんの店に寄り、礼を言ってお返しする。
「ああ、おかえり。ほな、お茶持ってくるわ」
 おかみさんが、にっこり笑って冷たい麦茶を出してくれた。ほてった顔が引き締まる冷たさなのに、心の中は温かい。麦茶は、風呂上がりのビールのような美味しさだった。
 おみやげに、名物の灸まんと船々せんべいを買ったら、値引きしてくれたのもまた嬉しい。
 金刀比羅宮には、出会いや縁結びの御利益があるという。
 間違いなく、いい出会いはあったな。


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 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
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コメント (8)
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