これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

四万十川カヌーツーリング

2017年08月27日 23時01分52秒 | エッセイ
 私の本棚には『日本の絶景、癒しの旅100』という本がある。



 ここに、四万十川が載っているのだ。佐田の沈下橋とともに。



「四万十川は最後の清流といわれているんだって。すごくキレイよね。ここにも行こう」
 るるぶと絶景本を見比べながら、娘に話しかけた。タクシーで回って写真を撮り、美味しい魚料理をいただく計画が浮かんでくる。
 ところが、彼女は別のページを見ていた。
「四万十川でカヌーができるって書いてある。やってみようよ」
「ええ~、カヌー?」
 暇さえあればスマホを触ってばかりで、内臓脂肪をためこんでいる娘が、まさかアウトドアに目覚めるとは。
「よし、せっかくだから行くか」
 体験施設に電話をかけたら、希望日の午後に、すんなり3人分の予約も取れた。カヌーに必要なものをキャリーに詰める。
「えーと、水着とクロックスとTシャツ、帽子にサングラスだね」
 お尻は絶対濡れるので、最初から水着を着ていたほうがいいのだとか。上からはおるTシャツは、乾きにくい綿を避けるそうだが、私は綿以外持っていない。
「あっ、これどう?」



「やだ、それ、ミキの高校時代の体操着じゃない。袖に名前も入ってるよ。恥ずかしいな」
「だって、デサントだよ。着心地いいし乾きやすくて最高。これにする」
「勝手にして」
 ふと、母が私の高校時代のジャージを履いて、農作業をしていたことを思い出した。しょうもない母親だと呆れていたが、私も同じことをしているではないか。まぎれもない親子である。
 今年は、やたらと雨が多い。幸い、カヌー当日は昼過ぎから晴れて暑くなった。
 ラッキー! 半袖から伸びる腕には、しっかりと日焼け止めを塗った。
「帽子の上からヘルメットをかぶってください。ライフジャケットはすき間のできないように、ひもを引っ張って」
 2人乗りのカヌーは、めったに転覆しない構造になっている。しかし、1人乗りは違う。岩などに頭を打ちつける危険性があるから、ヘルメット着用が必須のようだ。心配になって、インストラクターに聞いてみた。
「どのくらいの割合で転覆するんですか」
「そうですね、午前に1人、午後に1人といったところですよ」
 思ったよりは少ない。転覆するのは、ほとんどが大人の男性と聞いて驚いた。
「重いからでしょうね。バランスを崩すとひっくり返ります。子どもは軽いから、まず大丈夫」
 午後の部は1時開始だが、最初の1時間はパドルに慣れるため、施設近くの浅瀬で練習する。その後、四万十川を3kmほど下り、ツーリングに出発する。川から上がったらバスに乗り、3時半ごろ施設に戻ってくるという段取りだ。
 手漕ぎボートの経験があれば、カヌーにもすぐ慣れる。進むのは簡単だからナメていたら、止まったり、方向転換をしたりするのが難しく、他のカヌーにぶつかってしまった。思った以上に力がいる。始めて15分後には、腕が疲れてきた。
 スタッフが体験中の写真を撮ってくれるので、終了後に購入したのだが、仏頂面の写真ばかりでガッカリした。夫と娘は笑顔が多い。カメラ写りを考えて、作り笑いぐらいすればよかったと反省する。
 人物だけでなく、風景もしっかり写っていた。



 目で見た景色が一番とはいえ、砂利まで見える四万十の澄んだ水、濃い緑、青い空、綿菓子を散らしたような白い雲は忘れがたく、写真に残ったことが嬉しい。



 平成17年9月には、台風による大雨で四万十川も氾濫したという。当時の水位を記録した杭は、背丈よりもはるかに高かった。
 さて、ツーリングには一か所、水流の速いスリリングな場所がある。
「じゃあ、ここから1列に並んで下りましょう。あまり間隔を空け過ぎないようにお願いします」
 水面にも段差ができていて、吸い込まれそうな勢いで水が流れている。転覆するならここだなと思っていたら、前を行く夫が早速やらかした。一瞬のうちに体が沈み、ひっくり返ったカヌーの船底が見えたところで、再度、ライフジャケットの力を得て浮上してきた。
 私は「大丈夫かしら」と顔を曇らせたのに、薄情な娘は「うわっはははは」と大口を開けてバカ笑いをしている。まったくのセオリー通り。一番横幅の大きな男が、午後の回では1人だけ転覆した。おそらく、インストラクターには、未来が見えるに違いない。
「ひっくり返っちゃったけど、楽しい!」
 全身ずぶ濡れになった夫は、予想に反して喜んでいた。暑いから、水遊びができてよかったのかもしれない。残りは穏やかな流れの中を、のんびりとパドルを動かし進んでいった。
「ねえ、この写真、facebookにいいと思わない?」
 東京に帰ってから、購入した写真をチェックし、どれをアップするか決める。
「ダメダメ。ミキの体操着だってすぐわかるじゃない。別のにして」
「ああ、そうだ~、忘れてた……」
 これなんかどうでしょうね。




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コメント (6)
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