今年の家族旅行は高知・香川である。
まずは高知駅で降りる。
龍馬は特に好きではないが、一応カメラに収めておいた。
ここでどうしても外せないのは高知城である。
ずいぶん高い場所にあるな、というのが第一印象だ。空はどこまでも青く、8月の日差しは遠慮というものを知らない。日傘を差しても暑いことに変わりはなく、足元からも熱気が立ち昇ってきた。
「いちに、さんし、ごーろくしちはち」
ふうふう言いながら石段を上っていたら、さほど遠くない場所から、準備運動と思しきかけ声が聞こえてくる。
「ウソでしょ、こんなところで部活?」
3人で顔を見合わせた。しかし、彼らの姿はどこにも見えない。きっと遠くなのだろうと思い、すぐに忘れてしまった。
高知県は雨が多いらしい。石樋なるものを作り、排水を工夫していたようだ。
見上げると、天守が「ここまでおーいで」と挑発してくる。
「おしっ、待っとれよ!」と応えたものの、石段は延々と続いている。軽かった足取りが徐々に重くなり、腕にも背中にも汗がにじんできた。額からは汗が流れ落ち、タオルでふきふき入口を目指す。
「はー、はー、やっと着いた……」
近くで見ると、なかなかの迫力だ。この城は、1611年に完成したそうだが、火事で焼け落ちている。その後、1753年に復元したものが残っているので、長い歴史を読み取ることができる。
入口には「功名が辻」のワンシーンが飾られていた。しかし、暑さで意識もうろうとしていたから、上手く撮れなかった……。
「こちらに冷たいおしぼりがありますよ。どうぞお使いください」
「わーい」
お城には冷房がない。凍ってバリバリになったおしぼりを顔に当てると、あっという間に溶けていく。このわずかの時間の心地よさといったらない。
「おや、この部屋は何だろう」
何気なくつぶやくと、近くにいたガイドボランティアの女性が答えてくれた。
「ここはお城の中で一番格式の高い部屋なんですよ。左手の武者隠という場所に、お殿様をお守りするためのSPが控えていたんです」
「へー」
ちなみに、扉の裏側はこうなっている。ここにSPが、刀を構えてスタンバっていたのか。
畳はなしでいいと思う。
「ここは、石を落として敵を攻撃する場所です」
ガイドさんが自然に家族に加わり、4人で城内を回った。説明つきだとわかりやすくて面白い。
「忍び返しが残っているお城はここだけです」
「そうなんですか」
ちょっと歩いただけで、おしぼり効果は消え失せる。たちまち汗が噴き出し、サウナに入っているかのようだ。決して暑がりではないのだけれど、服も下着も汗を吸って重くなっていた。
「ここから銃で狙ったんですよ」
ガイドさんと話していると、多少なりとも暑さから逃れられる気がした。ぜひ、ここでは、ガイドさんを探すべきであろう。
「戦があったんですか」
「いいえ、攻め込まれたことはありません」
それで、古いお城が残っているというわけか。
「これを見てください。ハート型がついていますが、『好き』という意味じゃないんですよ」
でも、暑さのあまり、どんな意味だったのか忘れてしまった……。
「天守閣は風が通って涼しいですよ」
階段というよりはしごに近い段を上ると、景色が開けていた。
「わあ、すごい」
ガイドさんからお城がキレイに撮れる場所を教わり、礼を言って段を下りる。
ここがその場所だ。
高知城は別名「鷹城」というそうで、ここからだと鷹が羽を広げているように見えるのだとか。
なるほど。
あとから知ったことだが、この日の高知市の気温は37.9度であった。石段を下りるときも、力が入らなくてダラダラしてしまう。2020年の東京オリンピック・パラリンピックは暑さが心配されているが、高知オリンピックじゃなくてよかったと思ったくらいだ。
そのとき、左側からドドドドドドと地響きが聞こえてきた。
信じられない! 陸上部らしき学生が、ランニングシャツに短パン姿で、一列になって走っている! さっきの準備運動は彼らだったのか。
30人くらいいるようだが、この暑さの中、激しい運動をするぅ~?
あんぐりと口を開けている私たちを見向きもせず、陸上部集団は結構なハイペースで通り抜けていった。高知の学生は、何度から暑いと感じるのだろう。
しょうもない句が浮かんできた。
炎天下 汗がとぶとぶ 高知城
失礼いたしました。
↑
クリックしてくださるとウレシイです♪
※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
まずは高知駅で降りる。
龍馬は特に好きではないが、一応カメラに収めておいた。
ここでどうしても外せないのは高知城である。
ずいぶん高い場所にあるな、というのが第一印象だ。空はどこまでも青く、8月の日差しは遠慮というものを知らない。日傘を差しても暑いことに変わりはなく、足元からも熱気が立ち昇ってきた。
「いちに、さんし、ごーろくしちはち」
ふうふう言いながら石段を上っていたら、さほど遠くない場所から、準備運動と思しきかけ声が聞こえてくる。
「ウソでしょ、こんなところで部活?」
3人で顔を見合わせた。しかし、彼らの姿はどこにも見えない。きっと遠くなのだろうと思い、すぐに忘れてしまった。
高知県は雨が多いらしい。石樋なるものを作り、排水を工夫していたようだ。
見上げると、天守が「ここまでおーいで」と挑発してくる。
「おしっ、待っとれよ!」と応えたものの、石段は延々と続いている。軽かった足取りが徐々に重くなり、腕にも背中にも汗がにじんできた。額からは汗が流れ落ち、タオルでふきふき入口を目指す。
「はー、はー、やっと着いた……」
近くで見ると、なかなかの迫力だ。この城は、1611年に完成したそうだが、火事で焼け落ちている。その後、1753年に復元したものが残っているので、長い歴史を読み取ることができる。
入口には「功名が辻」のワンシーンが飾られていた。しかし、暑さで意識もうろうとしていたから、上手く撮れなかった……。
「こちらに冷たいおしぼりがありますよ。どうぞお使いください」
「わーい」
お城には冷房がない。凍ってバリバリになったおしぼりを顔に当てると、あっという間に溶けていく。このわずかの時間の心地よさといったらない。
「おや、この部屋は何だろう」
何気なくつぶやくと、近くにいたガイドボランティアの女性が答えてくれた。
「ここはお城の中で一番格式の高い部屋なんですよ。左手の武者隠という場所に、お殿様をお守りするためのSPが控えていたんです」
「へー」
ちなみに、扉の裏側はこうなっている。ここにSPが、刀を構えてスタンバっていたのか。
畳はなしでいいと思う。
「ここは、石を落として敵を攻撃する場所です」
ガイドさんが自然に家族に加わり、4人で城内を回った。説明つきだとわかりやすくて面白い。
「忍び返しが残っているお城はここだけです」
「そうなんですか」
ちょっと歩いただけで、おしぼり効果は消え失せる。たちまち汗が噴き出し、サウナに入っているかのようだ。決して暑がりではないのだけれど、服も下着も汗を吸って重くなっていた。
「ここから銃で狙ったんですよ」
ガイドさんと話していると、多少なりとも暑さから逃れられる気がした。ぜひ、ここでは、ガイドさんを探すべきであろう。
「戦があったんですか」
「いいえ、攻め込まれたことはありません」
それで、古いお城が残っているというわけか。
「これを見てください。ハート型がついていますが、『好き』という意味じゃないんですよ」
でも、暑さのあまり、どんな意味だったのか忘れてしまった……。
「天守閣は風が通って涼しいですよ」
階段というよりはしごに近い段を上ると、景色が開けていた。
「わあ、すごい」
ガイドさんからお城がキレイに撮れる場所を教わり、礼を言って段を下りる。
ここがその場所だ。
高知城は別名「鷹城」というそうで、ここからだと鷹が羽を広げているように見えるのだとか。
なるほど。
あとから知ったことだが、この日の高知市の気温は37.9度であった。石段を下りるときも、力が入らなくてダラダラしてしまう。2020年の東京オリンピック・パラリンピックは暑さが心配されているが、高知オリンピックじゃなくてよかったと思ったくらいだ。
そのとき、左側からドドドドドドと地響きが聞こえてきた。
信じられない! 陸上部らしき学生が、ランニングシャツに短パン姿で、一列になって走っている! さっきの準備運動は彼らだったのか。
30人くらいいるようだが、この暑さの中、激しい運動をするぅ~?
あんぐりと口を開けている私たちを見向きもせず、陸上部集団は結構なハイペースで通り抜けていった。高知の学生は、何度から暑いと感じるのだろう。
しょうもない句が浮かんできた。
炎天下 汗がとぶとぶ 高知城
失礼いたしました。
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「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)