これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

スマホ ボランティア

2017年08月20日 21時16分44秒 | エッセイ
 ついにガラケーを卒業し、アイフォンに変えた。
 通信料は高くなるが、きれいな写真が撮れるし、いつでもSNSができるようになるから利便性が勝ったわけだ。
「スマホはね、子どもと同じ機種にするのよ。そうすれば、教えてもらえるじゃない」
 同僚の入れ知恵は大きい。新しいメカに弱く、操作に不安を感じていたところである。大学3年の娘に相談したら、頼りにされて気をよくしたのか、快くドコモショップについてきてくれることになった。
「ミキも、お母さんがラインを使ってくれたほうが便利だし、手伝うよ」
 娘のアイフォンは2年前に買った6Sである。かなり古い機種になってしまい、店頭にも残りわずかしかないそうだ。
「色はピンクか黒で、32ギガだけになりますが、よろしいでしょうか」
 色はわかるが、32ギガでいいかどうかはわからない。しかし、選ぶ余地はないから、いいことにする。
「料金プランはいかがいたしましょう」
「通話は一番下のにします。めったにありませんので」
「データパックはどれにしますか」
 きたきた。こういうときのために娘を連れてきたのだ。じっと顔を見て、指示を仰いだ。
「最初は標準の5ギガにしておきなよ。あとから変えられるから」
「ふーん、じゃあ標準で」
「あんしんパックにご加入されますか」
「入っておきな」
「はい」
 お値段は、dポイント分値引きされ、一括で15000円程度だった。
「安ッ! 2年前に買ったときは10万したのに」
 娘が、詐欺にあったような顔をした。新しいものは高いのだ。間違いなく、私には使いこなせないので、安い機種で十分である。手続き中のスタッフに、娘が思い出したように声をかけた。
「あ、それから画面の保護シートも買いたいんですけど。貼ってもらえますか」
「はい、かしこまりました」
 保護シートを貼っておくと、万一落としても、画面の割れを防ぐことができる。でも、100均で買ったものを自分で貼ると、気泡が入ることが多く、プロに頼むのが一番なのだとか。
 家に帰ってからがまた大変だった。
「使っていないケースがあるから、これあげるね」



 もらったケースにアイフォンを入れ、娘に預けて各種の設定をしてもらう。



 画面の表示、着信音の選択、画面ロック、ラインのインストール……。何をしているのか、わからない設定もあった。とてもついていけない。
「ね、これ見て。下に丸いボタンがあるでしょ。押す回数が多いんだけど、壊れやすいから、画面に同じボタンを作っておいたよ。画面の方を使って」
「はあ……」
「それから、アプリは重なって見えないだけだから、右下のアイコン押して消さないと、電池が早くなくなるよ。あっ、誰かラインをしてきた。ヒロって人知ってる?」
「知らない……」
「長押しすると既読がつかないんだよ。えーと、ムライですって書いてある」
「ああ、ムライちゃんか」
「ブロックしていい?」
「いやいや、ダメだよ」
「じゃあ、友達に追加しておくね」
 という具合に、何が何だかわけのわからないまま進んでいった。
 一番困ったのはラインの返信だ。入力方法がキーボードと違っているので、文字を探す時間がかかる。ナメクジだって、もっと速いんじゃないかと思うくらい、私の入力は遅かった。
「ああほら、話題が変わっちゃったよ」
「えー、やっと打てたのに」
「スタンプで誤魔化しなよ」
「スタンプ、スタンプ……どこ?」
「ああもう、打ってあげるから貸して」
 結局、返信まで娘に頼む始末。まったく、どうしようもない。でも、これが実力なのである。
「ネットワーク暗証番号は何? dアカウントをとるのに必要なんだけど」
「なにそれ、知らない」
「じゃあ、今日はここまで。明日、この番号に電話してあげるから」
「はーい」
 疲れた……。ぬるめの風呂にゆっくり浸かり、新しい知識でパンクしそうな頭を整理した。ひとまず、やってみないことにはおぼえられない。明日から頑張らねば。
 娘の部屋がやけに静かだ。そっと中を覗いてみたら、うつぶせになって爆睡していた。出来の悪い母親の世話をして、相当体力を消耗したらしい。
 翌日、ドコモから、購入時の対応に関するアンケートが送られてきた。回答して返信すると、もれなく20ポイントもらえると書いてある。「よし、20ポイントゲットだ」と抜け目なく送信した。
 娘は「ミキのポイントはないのか」と不満げだったが、スマホを受け取り、ネットワーク暗証番号を問い合わせてくれた。設定が進み、ようやくメールが使えるところまで来た。
 しばらくすると、またドコモからアンケートが届く。どうやら、今度は、先ほどの問い合わせ電話の応対に関する回答らしい。私が電話をしたわけではないが、娘が「とてもよかった」と満足していたので、その通りに答えた。これで、さらに20ポイント追加だ。
「お母さんばっかりポイントもらって、ずるいよ~! ミキがやってるのに」
 キイキイわめく娘を無視して、母にメールを打つ。来月の墓参りの日程を決めなくては。
 トホホ、このナメクジ入力、いつになったら直るのかなぁ……。


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 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
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コメント (15)
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