これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

これは必見!「吉田博展」

2017年08月17日 23時38分10秒 | エッセイ
 とても自分には描けない、素敵な絵を見たとき、人は何と言うだろうか。
「上手ね」
 かつて、私もそう言ったことがあった。しかし、画家への賞賛としてはまだまだだ。
「なんて素敵なの」
 もちろん本心からの言葉であっても、上から目線になっていないだろうか。
 こんな絵は見たことがない、お目にかかれて幸せだ、といった気持ちを表すとどうなるか。
「すげえぇ~」
「うめえぇ~」
 私の場合、なぜかこんな調子になってしまった。若い子ならいざ知らず、もうじき50歳になるオバさんが、東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館で開催中の「生誕140年 吉田博展」を見に行き、意識しないままに口から転がり出してきた言葉である。



 そもそも、吉田博とは何者か、私は知らなかった。
「聞いたことないけど、ちょうど新宿に行くし、時間も余るから寄ってみるか」くらいの軽い気持ちだったのだ。平日の3時にしては、結構人が集まっているなぁと思ったら、それもそのはず、どの絵も仰天するような画力で描かれているではないか。



「へー」
「はー」
「ほー」
 私の前で鑑賞していたおじいさんは、ぽかんと口を開けて、ひたすら感嘆の言葉を漏らしている。そのうち、「どうなってんだ、この絵は」とうつろな目をしてブツブツ言い始めた。チョロチョロと頭を動かし、角度を変えて何度も眺めている。
 わかるわかる。
 画家は、水彩画、油彩画、木版画といったジャンルでたくさんの絵を残しているが、どの絵も普通ではない。迷いのないタッチで山や水を捉え、鮮やかな色彩を加えて質感たっぷりに仕上げている。生真面目な性格そのままに、小さな窓枠や木の葉1枚1枚まで、息を吹き込む丁寧ぶりだ。



 ときには、人間離れした細かい作業に両目が吸い寄せられ、前を歩く人にぶつかってしまった。こんなことは今までなかったし、私も周りの人にぶつかられたりした。
 わかるわかる。
 見れば見るほど、絵に酔ってしまうのだ。足早に歩く人はおらず、時間をかけて細部まで鑑賞している人が多かった。だから、全部見るのに90分はかかる。そして、それくらいの価値はある。酒を飲むより、ずっといい気分になれた。
 個人的には水彩画が好きだ。しかし、ポストカードは木版画ばかり。それでも構わないと購入した。







 版画のいいところは、色の置き方で印象がまったく変わることだ。朝、昼、夜、霧などのバリエーションを広げ、「この手があったか」と驚かせる技術が憎い。なんというハイレベルな画家であろう。
 今日は、吉田博展ではなく、別の記事をアップしようと考えていた。でも、海外では有名だが日本では知られていないこと、8月27日までしか公開されないことなどから、「もっとたくさんの人に見てもらわなくては!」との使命感に駆られて、急遽変更することにした。
 こんな稚拙な文章では、絵の魅力が一割も伝わらないかもしれない。
 それでも、何かをせずにはいられない。
 行こうかどうしようか迷っている人の、背中を押すお手伝いができればうれしい。


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コメント (4)
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