これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

まさかの稲田朋美

2017年08月13日 20時00分00秒 | エッセイ
 そういえば、6月中旬以降、美容院に行っていない。
 予約をしようと電話のダイヤルをプッシュしたら、3回かけて全て話し中だった。受話器の向こうの「ツー、ツー、ツー」という音にイラッとする。様子を横目で見た、大学3年の娘が口を挟んできた。
「ねえ、ミキの行ってる美容院にしたら? マツザカさんって人が上手だから」
「そうねえ……」
 20年間、同じ美容師さんを指名しているが、このところ、仕上がりに不満を感じることが多い。いつも同じ髪型になってしまうので、「今日はここを変えてほしい」と注文をつけたら、なんともヘンテコなスタイルにされた。センスが古いと感じることもあり、ちょっと考えてしまう。
「ミキの美容院は、ネットで予約できるよ~」
「よし、またかけるのも面倒だし、そこにしよう」
 きっと、これは「あの美容師はやめておきなさい」という警告に違いない。パソコンを起動させ、娘のひいきの美容院にアクセスして予約をとった。指名はもちろん、マツザカさんだ。
「いらっしゃいませ、お待ちしておりました」
 店内に足を踏み入れた途端、客層の違いに驚く。このサロンには、20代から30代の客が多く、男性客も目立つ。私の通っていたところは、50代以上の女性客しかいなかった。
「親子でのご利用ありがとうございます。今日はどのようにいたしましょうか」
「カットとパーマでお願いします」
「どんな感じがご希望ですか? たとえば、この人みたいなというイメージがあれば」
「そうですね……」
 仕事中、私はメガネをかけている。クルッとしたカールを組み合わせてイメージしたら、思いついた人は一人だった。
「じゃあ、稲田朋美さんみたいにしてください」
「ええっ、稲田さんですか!?」
 防衛相の辞任劇は記憶に新しい。都議選での応援演説での失言や、日報問題などでずいぶん叩かれていたが、髪型に罪はない。むしろ、メガネ女子に合うスタイルなのではと、ひそかにチェックしていた。もっとも、グッドルッキング発言というのも話題に上ったが。
 しかし、まさかのレアな注文に、マツザカさんは目を大きく見開いていた。
「えーと、稲田さん、どんな髪型でしたっけ……」
「今まで、そういうリクエストはなかったんですか」
「いやあ、初めてですね。すみません、ちょっとケータイ見ていいですか」
 あくまでも笑顔を保ちながら、レアな要望に応えるため、彼は素早く画像検索をしたようだ。
「ありました。どれにしますか」
 スマホ画面をのぞき込むと、パッチワーク状の稲田氏がいくつも並んでいた。初当選時代から現在まで、かなりのバリエーションがある。
「これかな? あ、こっちの方が近いですね」
「なるほど、これですか……」
 うーむ、という表情で、マツザカさんが画像をにらむ。さすがはプロ。一瞬にして、カットの方法を分析していたようだ。
「あの、笹木さんはこの部分が短いので、今はこの通りにできません。今回は、稲田さんに近づけつつ、短いところを伸ばしていきませんか」
「なるほど。じゃあ、そうします」
 できないことはできないと、ハッキリ言ってもらった方がいい。メガネに似合うスタイルは守ってもらい、あとは任せることにした。
 完成したものがこれだ。



 落ち着くまでブローに苦戦しそうだが、フワッとした仕上がりは気に入っている。毛先も傷んだ感じがせず、指の通りがよい。サボっていたムースもつけるようにして、女子力をアップさせよう。
 どうやら、マツザカさんは相当な売れっ子らしい。次から次へと指名が入り、昼食はおろか、トイレに行く暇もなさそうに見えた。よほど、評判がいいのだろう。
「もし、僕に全部任せていただけるのなら、ショートにすると思います」
 話の途中で、私は短い髪のほうがスッキリ見えると指摘された。
 おもしろい。その話、乗ってみたい。
 稲田さんはやめて、次はショートにしようかしら。


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 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
 「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
コメント (12)
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