5月1日は仕事が休みだった。仲良しの幸枝を誘い、横須賀に行く。
紫外線を天敵とする私にしては珍しい選択だ。毎日PCとにらめっこして、室内で一日の大半を過ごしていると、開放感のある場所が恋しくなる。子どものとき、毎年のように海水浴をした観音崎に行きたくなった。
観音崎は、三浦半島の端っこにある海水浴場である。横須賀駅からでも、馬堀海岸駅や浦賀駅からでもバスで行くことができる。10時半に浦賀駅で待ち合わせをしたら、幸枝はすでに到着していた。
「横須賀には来たことないの。すごく楽しみ~」
幸枝はどちらかといえば肉体労働が多い。最近は、腹の立つことも頻発するようで、日常生活を忘れられる場所に行きたかったのだとか。利害関係が一致し、ウキウキとバスに乗り込んだ。
「バーベキューやってる人がいるね」
観音崎は、ほどよい人出だった。誰もいないと不安になるが、人がいすぎても落ち着かない。海岸で火器をセッティングしている若者や、幼い子どもを連れた家族連れ、ラブラブなカップルなどが目に入る。
「海だ」
空はイマイチ青くない。午後からは雷雨の予報だから、晴れているだけありがたいと思うべきだろう。石畳に下りて水辺に近づいた。
「見て、透明度が高いね」
幸枝は興奮気味だ。セルカ棒を出して自撮りに励んでいる。
私は、やたらと立派なカメラを構えた人の多いことが気になった。ここは撮影スポットなのだろうか。
「あ、船が見える」
幸枝の指さす方を見ると、やたらとデカい船がゆっくりと航行していた。すかさず望遠レンズをのぞき込む。やけに長くて、客船ではないようだ。
ヨットも出ていた。初夏の風に吹かれて、さぞかし心地よいのではないか。
さきほどの船の後ろに黒い影が見えてきた。写真を撮りながら、幸枝に耳打ちする。
「あれが房総半島だって。千葉の富津までは7kmしか離れていないそうよ」
「えー、そんなに近いの? 知らなかった」
きっと、富津からも三浦半島が見えるのだろう。泳いで渡れる人がいたりして。
観音埼灯台には、絶対に登りたかった。急な上り坂を歩き、ゼイゼイしながら入口までたどり着く。
ここにはマムシがいるらしい。ついでに、食べ歩きをしていると、悠々と飛んでいるトンビが急降下してきて奪うそうだ。注意を促す掲示物があった。
灯台からの眺めは素敵だ。
海は限りなく広く大きい。いろいろな種類の船が水しぶきを上げて通り過ぎていく。
山には藤がたわわに開き、新緑に彩を添えていた。
こんな景色を見て暮らしたら、イライラムカムカしたりせず、寛大な気持ちで毎日を送れるに違いない。
「いいねぇ。心が広くなれそう」
「ホントだね。来てよかった」
すっかり気をよくして灯台を下りると、受付のオバちゃんが話しかけてきた。
「今日はね、護衛艦のいずもがこの浦賀水路を通りましたよ」
「いずも? そういえば、朝のニュースでやってたっけ……」
画像を調べてみたら、最初に見たバカでかい船が、まさにそれだった。道理で、カメラをのぞき込んでいた人が多かったわけだ。
「うそぉ、いずもだったの!?」
「すごいじゃない、見ちゃったね!」
政治的な問題はさておき、新聞の一面を飾るような大ニュースの現場に出くわすことはめったにない。米艦防護の任務は3日に終了したようだが、その瞬間にいたというだけで、関連記事を読み漁るようになった。我ながら現金なヤツである。
トンビに隠れてソフトクリームを食べたあとは、横須賀行きのバスに乗り、どぶ板商店街に向かう。雲行きが怪しくなり、雨がポツポツ降ってきた。
「TSUNAMIってところだよ」
「あったあった」
ここはネイビーバーガーが有名な店だ。ショーウインドウでは、背の高い「第7艦隊バーガー」のサンプルが光っていたが、とても食べきれそうにない。
小さめの「ジョージ・ワシントンバーガー」を注文した。
これでも、かなり食べごたえがあり、あごが疲れてしまった。
「ドナルド・トランプバーガー」や「バラク・オバマバーガー」もあったが、こちらは次回のお楽しみに。
心が広くなる成果は十分あった。昨日も今日も、夕食の支度に手間取ったのに、イライラしたり慌てたりしなかったのだ。「なるようになるさ~」と緩く構え、平常心でいられるのが不思議である。
もっとも、家族は「まだ?」とジリジリして待っていたが……。
↑
クリックしてくださるとウレシイです♪
※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
紫外線を天敵とする私にしては珍しい選択だ。毎日PCとにらめっこして、室内で一日の大半を過ごしていると、開放感のある場所が恋しくなる。子どものとき、毎年のように海水浴をした観音崎に行きたくなった。
観音崎は、三浦半島の端っこにある海水浴場である。横須賀駅からでも、馬堀海岸駅や浦賀駅からでもバスで行くことができる。10時半に浦賀駅で待ち合わせをしたら、幸枝はすでに到着していた。
「横須賀には来たことないの。すごく楽しみ~」
幸枝はどちらかといえば肉体労働が多い。最近は、腹の立つことも頻発するようで、日常生活を忘れられる場所に行きたかったのだとか。利害関係が一致し、ウキウキとバスに乗り込んだ。
「バーベキューやってる人がいるね」
観音崎は、ほどよい人出だった。誰もいないと不安になるが、人がいすぎても落ち着かない。海岸で火器をセッティングしている若者や、幼い子どもを連れた家族連れ、ラブラブなカップルなどが目に入る。
「海だ」
空はイマイチ青くない。午後からは雷雨の予報だから、晴れているだけありがたいと思うべきだろう。石畳に下りて水辺に近づいた。
「見て、透明度が高いね」
幸枝は興奮気味だ。セルカ棒を出して自撮りに励んでいる。
私は、やたらと立派なカメラを構えた人の多いことが気になった。ここは撮影スポットなのだろうか。
「あ、船が見える」
幸枝の指さす方を見ると、やたらとデカい船がゆっくりと航行していた。すかさず望遠レンズをのぞき込む。やけに長くて、客船ではないようだ。
ヨットも出ていた。初夏の風に吹かれて、さぞかし心地よいのではないか。
さきほどの船の後ろに黒い影が見えてきた。写真を撮りながら、幸枝に耳打ちする。
「あれが房総半島だって。千葉の富津までは7kmしか離れていないそうよ」
「えー、そんなに近いの? 知らなかった」
きっと、富津からも三浦半島が見えるのだろう。泳いで渡れる人がいたりして。
観音埼灯台には、絶対に登りたかった。急な上り坂を歩き、ゼイゼイしながら入口までたどり着く。
ここにはマムシがいるらしい。ついでに、食べ歩きをしていると、悠々と飛んでいるトンビが急降下してきて奪うそうだ。注意を促す掲示物があった。
灯台からの眺めは素敵だ。
海は限りなく広く大きい。いろいろな種類の船が水しぶきを上げて通り過ぎていく。
山には藤がたわわに開き、新緑に彩を添えていた。
こんな景色を見て暮らしたら、イライラムカムカしたりせず、寛大な気持ちで毎日を送れるに違いない。
「いいねぇ。心が広くなれそう」
「ホントだね。来てよかった」
すっかり気をよくして灯台を下りると、受付のオバちゃんが話しかけてきた。
「今日はね、護衛艦のいずもがこの浦賀水路を通りましたよ」
「いずも? そういえば、朝のニュースでやってたっけ……」
画像を調べてみたら、最初に見たバカでかい船が、まさにそれだった。道理で、カメラをのぞき込んでいた人が多かったわけだ。
「うそぉ、いずもだったの!?」
「すごいじゃない、見ちゃったね!」
政治的な問題はさておき、新聞の一面を飾るような大ニュースの現場に出くわすことはめったにない。米艦防護の任務は3日に終了したようだが、その瞬間にいたというだけで、関連記事を読み漁るようになった。我ながら現金なヤツである。
トンビに隠れてソフトクリームを食べたあとは、横須賀行きのバスに乗り、どぶ板商店街に向かう。雲行きが怪しくなり、雨がポツポツ降ってきた。
「TSUNAMIってところだよ」
「あったあった」
ここはネイビーバーガーが有名な店だ。ショーウインドウでは、背の高い「第7艦隊バーガー」のサンプルが光っていたが、とても食べきれそうにない。
小さめの「ジョージ・ワシントンバーガー」を注文した。
これでも、かなり食べごたえがあり、あごが疲れてしまった。
「ドナルド・トランプバーガー」や「バラク・オバマバーガー」もあったが、こちらは次回のお楽しみに。
心が広くなる成果は十分あった。昨日も今日も、夕食の支度に手間取ったのに、イライラしたり慌てたりしなかったのだ。「なるようになるさ~」と緩く構え、平常心でいられるのが不思議である。
もっとも、家族は「まだ?」とジリジリして待っていたが……。
↑
クリックしてくださるとウレシイです♪
※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)