これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

小田急山のホテル

2017年04月23日 21時28分10秒 | エッセイ
 小田急山のホテルには、ちょっとした思い入れがある。
 高校生のときから、秋里和国(わくに)さんの漫画が好きだった。ある作品で、主役の女の子が意中の男の子を山のホテルに誘う場面を思い出す。結局、彼らはお泊りせずに帰るのだが、外観も部屋もシチュエーションも「何てロマンティックなんでしょう」とウットリしたものだ。いつかは行きたい場所のひとつになっていたから、銀婚旅行でそれが実現したことを、私はこっそり喜んでいた。
 漫画と違って、私たちが泊まったのはトリプルルーム。



 三人家族にはちょうどよい。ついでに、三角関係の人たちにも、喜ばれるかもしれない。
 ベッドの向かい側にはテレビがある。



 バスルームの外にはドレッサー。



 しかし、女子力のない私と娘は、ついにこの場所を使わなかった。それをいいことに、夫がカバン置き場にしていたところは申し訳なかったと思う。
 山のホテルは、色とりどりの花の咲く庭園が有名だが、4月上旬はまだまだ。



 5月上旬から下旬が見ごろというから、これからが本番であろう。
 評判通り、フレンチディナーは花丸。スタッフのサービスも非常によかった。
 しかし、朝食ではちょっとした問題があった。
「おはようございます。こちらへどうぞ」
 スタッフの男性に案内された席は、なんとオヤジ団体客の巣窟であった。若手がいないところを見ると、社員旅行ではなさそうだ。研修か会議か。脂ののった中高年ばかりが20人、数人ずつ5つのテーブルに分かれて座っていた。
 私たちが勧められたのは、オヤジ席の隣である。椅子を引いた途端、ぶしつけな視線が飛んでくる。時おり「うっへっへっへ」だの、「いいっひっひっひ」などといった下卑た笑い声も聞こえてきて、朝からげんなりした。一角には、整髪料の臭いと加齢臭が漂い、二酸化炭素濃度も濃いようだ。
「お母さん、この席いやだ。替えてもらおう」
 娘が静かに立ち上がり、スタッフを探しにいった。
「失礼いたしました。別のお席にご案内します」
 かくして、落ち着いた席に替えてもらったのだが、満席だったわけではない。空いていた席はいくつもあったのに、なぜ、あの席が選ばれたのか。どうにも理解しがたい。
 意思表示をすることは大事だ。気に入らなかったら交渉する。おかげで問題は解決したし、美味しい朝食をいただくことができた。



「うえっへっへっへ」
 下品な笑い声が近づいてきた。先ほどのオヤジ団体が、朝食を終え引き揚げてきたのだ。私たちが席を移動したことなど、まったく気にしていないように見える。考えてみれば、彼らは何も悪いことをしていないのだから、そんなものだろう。
 出発前に、ホテルの外観を撮影する。



 霧が深くて、全景が見えないところが憎い。



 Facebookのカバー写真にしたかったから、かなり残念である。



 秋里和国さんも、このレトロなホテルに魅せられたのではないか。



 同感だ。霧に浮かぶクラシカルな姿も、なかなか乙なものである。



 リベンジで、また泊まりに来たいものだ。
 次も、トリプルルームを予約しなくちゃ。


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コメント (8)
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