出勤すると、プレゼントの包みが置いてあった。
「あら、誰からかしら」
「ゴッド先生です」
近くにいたフラワー先生が、そっと耳打ちする。
そうか、今日はホワイトデー。バレンタインデーに安物の義理チョコをバラまいたので、お返しをいただいたわけだ。箱の大きさからして、本当に倍返しで気が引けた。
「私も」
そのフラワー先生からは、カントリーマアムのレアな「ずんだ味」を、シャネル先生からもチョコおかきなんぞをいただいた。ちょうど、通勤ラッシュをくぐり抜けてきたところだから、ティータイムにはもってこいである。
「おはようございます」
ニューマン先生が出勤してきて、こちらからもチョコが、タッキー先生からは「僕は和菓子にしたよ」と包みを渡される。これは大漁。バレンタインの威力は絶大である。しばし、お菓子談議に花が咲いた。
そういえば、学生時代に、バレンタインのお返しを拒否する男子がいた。「製菓会社の陰謀にはまるものか」と抵抗していたわけだが、イベントと割り切って楽しめばよかったのに。やがて、彼にチョコレートをあげる女の子はいなくなった。
「ただいまぁ」
帰宅して、食べ切れなかった戦利品をバッグから出していると、夫がゴディバの箱を持ってきた。
「はいこれ」
「ありがとう」
山盛りになり、食べきれるか心配になってきた。
以前に、ゴディバのチョコが美味しかったと言ったせいか、夫はゴディバ以外のチョコを買わない。男性には保守的な傾向がある。たまには冒険してもいいんだけど。
娘が23時にバイトから帰ってきた。大きな紙袋を持っている。
「バイト先のオジさんにチョコあげたら、今日、お返しもらった」
「へー」
「バウムクーヘンにしようと思ったら、店がつぶれていたからケーキにしたって。消費期限が今日なんだよ。どうしよう」
「げっ」
おそらく、そのオジさんの好きなケーキなのだろう。バレンタインに、20歳の女の子からチョコをもらったのが嬉しくて嬉しくて、飛び上がって足の裏で拍手したくなるくらい嬉しくて、喜んでもらいたい一心からお返しを選んだに違いない。
可愛いなぁ。
「図書カードも入ってた」
中身を見たら、2000円と書いてある。そこまで念入れる?
「明日、仕事行く前に食べていってよ。3分の1ずつね」
「ひー」
思いがけないノルマが課されたが、「図書カードを使って」というノルマはないらしい。
チッ。
翌朝、弁当を作り終えると、血糖値を上げないためにキャベツの千切りを食べる。このあとはケーキだ。
消費期限は過ぎたけど、一日くらいどうってことない。
カスタードクリームに載った甘いフルーツと、歯ごたえのある香ばしいタルト生地のコンビネーションを楽しんだ。バリバリバリ。
娘はすました顔で「美味しかったです」と伝えたらしい。
↑
クリックしてくださるとウレシイです♪
※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
「あら、誰からかしら」
「ゴッド先生です」
近くにいたフラワー先生が、そっと耳打ちする。
そうか、今日はホワイトデー。バレンタインデーに安物の義理チョコをバラまいたので、お返しをいただいたわけだ。箱の大きさからして、本当に倍返しで気が引けた。
「私も」
そのフラワー先生からは、カントリーマアムのレアな「ずんだ味」を、シャネル先生からもチョコおかきなんぞをいただいた。ちょうど、通勤ラッシュをくぐり抜けてきたところだから、ティータイムにはもってこいである。
「おはようございます」
ニューマン先生が出勤してきて、こちらからもチョコが、タッキー先生からは「僕は和菓子にしたよ」と包みを渡される。これは大漁。バレンタインの威力は絶大である。しばし、お菓子談議に花が咲いた。
そういえば、学生時代に、バレンタインのお返しを拒否する男子がいた。「製菓会社の陰謀にはまるものか」と抵抗していたわけだが、イベントと割り切って楽しめばよかったのに。やがて、彼にチョコレートをあげる女の子はいなくなった。
「ただいまぁ」
帰宅して、食べ切れなかった戦利品をバッグから出していると、夫がゴディバの箱を持ってきた。
「はいこれ」
「ありがとう」
山盛りになり、食べきれるか心配になってきた。
以前に、ゴディバのチョコが美味しかったと言ったせいか、夫はゴディバ以外のチョコを買わない。男性には保守的な傾向がある。たまには冒険してもいいんだけど。
娘が23時にバイトから帰ってきた。大きな紙袋を持っている。
「バイト先のオジさんにチョコあげたら、今日、お返しもらった」
「へー」
「バウムクーヘンにしようと思ったら、店がつぶれていたからケーキにしたって。消費期限が今日なんだよ。どうしよう」
「げっ」
おそらく、そのオジさんの好きなケーキなのだろう。バレンタインに、20歳の女の子からチョコをもらったのが嬉しくて嬉しくて、飛び上がって足の裏で拍手したくなるくらい嬉しくて、喜んでもらいたい一心からお返しを選んだに違いない。
可愛いなぁ。
「図書カードも入ってた」
中身を見たら、2000円と書いてある。そこまで念入れる?
「明日、仕事行く前に食べていってよ。3分の1ずつね」
「ひー」
思いがけないノルマが課されたが、「図書カードを使って」というノルマはないらしい。
チッ。
翌朝、弁当を作り終えると、血糖値を上げないためにキャベツの千切りを食べる。このあとはケーキだ。
消費期限は過ぎたけど、一日くらいどうってことない。
カスタードクリームに載った甘いフルーツと、歯ごたえのある香ばしいタルト生地のコンビネーションを楽しんだ。バリバリバリ。
娘はすました顔で「美味しかったです」と伝えたらしい。
↑
クリックしてくださるとウレシイです♪
※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)