今年もひな祭りパーティーをした。
3月は何かと忙しいこともあり、集まったのは7人だけ。退院して10日経過した母が、元気に来られただけでもよしとしよう。
「床に座るのがつらくなってね。椅子を持ってきたよ」
我が家では、もっぱら座卓を使用する。75歳を迎えた母には厳しいようで、申し訳なく思った。
料理のイチ押しはすき焼き小鍋。去年も食べたから、ひな祭り定番にしたいものだ。フタに「割下を直接肉に10ccほどかけ、残りは鍋全体に回し入れる」などと書かれた紙がセットされているので、この通りにやればいい。
「もう火をつけていいの?」
母が小鍋をのぞき込んで尋ねたが、まだ割下が入っていない。
「作り方が書かれた紙があったでしょ。読んだの?」
「読んでない」
何と、ジジババ夫の高齢者トリオは説明を読んでいなかった。しかも、さっさと捨てていた。年寄りには難しかったか。
「あ、僕も読んでなかった……」
高校生の甥も、恥ずかしそうに申し出た。スマホ老眼にはまだ早いのだが。
6分後にはグツグツ沸騰し、甘辛いあの匂いが充満してきた。肉の柔らかさに舌鼓を打ち、いやいや舌ドラムのほうが賑やかでピッタリだよと思い直す。
うま~い。
ローストビーフに
オードブルも用意したが、量が多かったようだ。
これに寿司も加わったから、最後にはお腹いっぱいで動けなくなった。
「ごちそうさま。椅子は置いていっていいかな」
「いいよ」
次は身軽で来られるように、母の椅子を預かる。ゲストを見送り、椅子を片づけようとしたら、目立つところに貼ってある注意書きのシールが目に入った。
「ご使用の際には、必ずカバーをはがしてください」
「…………」
思い切り、ビニールのカバーがついたままではないか。やれやれ、全然書いてある通りにしないんだから、と天を仰ぐ。カバーを破き、埃よけの袋に入れて収納した。
そして今日はお雛様をしまった。
今年はしゃれた菱餅を用意したので、お雛様も喜んでくれただろうか。
友人の娘は、毎年お雛様に手紙を書いているのだという。小さなメモに、ひと言ふた言書いて、お道具の箪笥にしまう。この引き出しは飾りではなく、ちゃんと開閉できるところが偉い。
メルヘンチックな発想がいたく気に入って、私も娘に勧めたことがある。でも、「手紙って何を書けばいいの?」と聞かれ、「好きなことを自由に」と答えたら、「特にないからいいや」と断られた気がする。現実主義者には、魅力のないセレモニーなのかもしれない。
今だったら、どう答えるかな?
「おじいちゃんとおばあちゃんが、ボケずに元気でいられますようにって書いてごらん」などと言いそうだ。
私もまた、まぎれもない現実主義者……。
お雛様、来年またみんなで集まることができますように。
↑
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※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
3月は何かと忙しいこともあり、集まったのは7人だけ。退院して10日経過した母が、元気に来られただけでもよしとしよう。
「床に座るのがつらくなってね。椅子を持ってきたよ」
我が家では、もっぱら座卓を使用する。75歳を迎えた母には厳しいようで、申し訳なく思った。
料理のイチ押しはすき焼き小鍋。去年も食べたから、ひな祭り定番にしたいものだ。フタに「割下を直接肉に10ccほどかけ、残りは鍋全体に回し入れる」などと書かれた紙がセットされているので、この通りにやればいい。
「もう火をつけていいの?」
母が小鍋をのぞき込んで尋ねたが、まだ割下が入っていない。
「作り方が書かれた紙があったでしょ。読んだの?」
「読んでない」
何と、ジジババ夫の高齢者トリオは説明を読んでいなかった。しかも、さっさと捨てていた。年寄りには難しかったか。
「あ、僕も読んでなかった……」
高校生の甥も、恥ずかしそうに申し出た。スマホ老眼にはまだ早いのだが。
6分後にはグツグツ沸騰し、甘辛いあの匂いが充満してきた。肉の柔らかさに舌鼓を打ち、いやいや舌ドラムのほうが賑やかでピッタリだよと思い直す。
うま~い。
ローストビーフに
オードブルも用意したが、量が多かったようだ。
これに寿司も加わったから、最後にはお腹いっぱいで動けなくなった。
「ごちそうさま。椅子は置いていっていいかな」
「いいよ」
次は身軽で来られるように、母の椅子を預かる。ゲストを見送り、椅子を片づけようとしたら、目立つところに貼ってある注意書きのシールが目に入った。
「ご使用の際には、必ずカバーをはがしてください」
「…………」
思い切り、ビニールのカバーがついたままではないか。やれやれ、全然書いてある通りにしないんだから、と天を仰ぐ。カバーを破き、埃よけの袋に入れて収納した。
そして今日はお雛様をしまった。
今年はしゃれた菱餅を用意したので、お雛様も喜んでくれただろうか。
友人の娘は、毎年お雛様に手紙を書いているのだという。小さなメモに、ひと言ふた言書いて、お道具の箪笥にしまう。この引き出しは飾りではなく、ちゃんと開閉できるところが偉い。
メルヘンチックな発想がいたく気に入って、私も娘に勧めたことがある。でも、「手紙って何を書けばいいの?」と聞かれ、「好きなことを自由に」と答えたら、「特にないからいいや」と断られた気がする。現実主義者には、魅力のないセレモニーなのかもしれない。
今だったら、どう答えるかな?
「おじいちゃんとおばあちゃんが、ボケずに元気でいられますようにって書いてごらん」などと言いそうだ。
私もまた、まぎれもない現実主義者……。
お雛様、来年またみんなで集まることができますように。
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「うつろひ~笹木砂希~」(日記)