これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

切り紙の神様

2016年12月01日 21時58分58秒 | エッセイ
 進路の決まった高校3年生はやる気がない。
 授業をしていても、寝てしまったり、しゃべってしまったりで、集中力もない。
 私の科目は美術系。課題を仕上げるだけで、期末テストを実施しないから、余計に勉強モードにならないのかもしれない。ないないづくしである。
「ううーん、何かもっと、モチベーションの上がる教材はないかなぁ」
 ヒントを求めて図書室に行ってみた。
「ややっ、これはこれは!」
 すぐに、いいものが見つかった。



 切り紙というアートは知っているが、難しくて見るだけのものかと思っていた。
 でも、そうではなかった。
 この本に載っている型を使えば、簡単に素敵な切り紙が完成する。
 たとえばこれ。



 折り紙を半分に折り、ハサミで絵の外側を切れば天使が登場する。



「おお~」
 ちょうど、12月になったことだし、テーマはクリスマスにした。
 さて、これは?



 ろうそくでした。



 これは、おわかりになるだろう。



 クリスマスツリーでした。



 ちなみに、星の部分を切り取るのが難しく、下手するとこうなる。



「キエ~ッ!」
 星のもげたツリーにショックを受け、思わずキジのように、けたたましい悲鳴をあげた。
 じゃあ、これは?



 リボン!



 ふむふむ。今度は難しいですよ。
 紙は6つ折りにします。



 ????



 はい、雪の結晶です。
 最後に、8つ折りにした、これはわかりますか。



 いや、全然。



 薄氷です。難易度高いっす。
 すっかり気に入り、型紙を作って折り紙に印刷する。折り目と切り取り線がわかれば、ハサミを使って、誰でも切り紙を楽しむことができるからだ。
 さて、だらけた3年生にウケるかな?
「先生、何これ?」
 生徒は目新しいことが好きだ。教材を並べておいたら、すぐに近寄ってきた。
「点線で折って、実線のところを切るの。いろいろな絵ができて面白いよ」
「ふーん」
 多くの生徒が「全種類制覇する」と意気込んで折り紙を取っている。席に着き、ハサミを動かし始めると無言になる。
「できた」
 完成した図案を広げるときの期待感といったらない。予想を遥かに超える作品が出来上がるので、生徒の顔にも笑顔が広がる。
「すごい」
「やばい」
 今の子どもは、ゲームなどのバーチャルな遊びで育ってきたから、紙を切るなどのアナログ作業は経験が浅い。手先を動かせば、次々と美しい絵柄を生み出せることに驚いているようだ。
「面白いね、これ」
 次々と折り紙が減っていく。居眠りやおしゃべりもなく、彼らはひたすらハサミを走らせていた。できた作品は紙に貼り、クリスマスらしくデザインする。中には、切り取り線をアレンジして、オリジナルの絵柄を作り出す者もいる。「やっぱりプレゼントがないとね」などとつぶやきながら。
 もしかすると、今までで一番集中した授業だったかもしれない。
 何しろ、チャイムが鳴っても、まだ作業を続けている生徒がいたくらいだから。
「先生、余った折り紙、もらってもいい?」
 家でやりたいのか、持ち帰る生徒もいて、かなりビックリする。
 今日の授業はハナマルだ。
 こんなに高度な作業を、わかりやすく本にまとめ、誰にでもできるようにしてくれた作家さんに感謝感謝。
 すっかり、イワミ カイさんのファンになった。
 紙さま、もとい、切り紙の神様と呼ばせていただきます!


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 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
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コメント (8)
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