これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

ひとり旅はお好き?

2016年10月06日 21時17分40秒 | エッセイ
『旅行読売』11月号の特集は「ひとり旅」である。



 正直いって、ひとり旅のどこが楽しいのかわからない。
 電車や飛行機での移動中は、話し相手がいないと退屈だ。待ち時間も長く感じることだろう。
 目の前にドーンと鎮座する山を見ても、豪快にしぶきを上げて流れ落ちる滝を見ても、「キャア、素敵!」とはしゃぐことができない。もちろん、ひとり静かに眺めても感動するのだが、感動を共有する相手がいると、相乗効果で思い出の濃度が2倍3倍になっていく。あとから脳裏に浮かんでくるのは、心を揺さぶられた景色と家族や友人の笑顔である。
「今月号は保管しておく必要ないかしら。ひとり旅なんてしないもん」
 そんな気がしてきた。
 一方、ひとりっ子の友人は、ひとり旅が好きだと言う。
「一人でいるのに慣れているから淋しくないし、周りに気をつかわなくていいから楽しめるのよね」
 ふーん、そんなもんですか?
 三人姉妹の私は、気兼ねなく過ごせる家族旅行、仲間と無茶をした学生時代の合宿、朝から晩まで観光づくめの女子会旅行、異性と二人きりのラブラブ旅行くらいしかしたことがない。おそらく、おひとり様で旅行することはありえないだろう。
「いやまてよ、そういえば似たような経験が……」
 クラス担任を持っていた数年前のことを思い出した。修学旅行の下見のため、沖縄まで2泊3日で出かけたことがある。同行者は20歳年下の独身男性だったから、親子感覚で行動することができてよかった。気をつかうこともなく、移動中はお互いに本を読んだり居眠りしたりして過ごし、都合のいいときだけ会話を交わしていた。
 エメラルドグリーンの海を見たときは「キレイ~」「スゴイっすね」などと褒めたたえ、ブルーシールの珍しいアイスを食べては「うまい~」と喜び、戦争の傷跡に言葉を失いながら沖縄を満喫した。仕事が終われば「また明日」と部屋にこもって翌朝までは完全オフ。
 私はメールとストレッチをしたあと、ひたすら寝ていた。そのときだけは、睡眠不足が解消できて幸せだった。彼は普段と違う生活がうれしくて、朝までテレビを見ていたそうだ。半分はひとり旅状態だったけれど、オンとオフの切り替えが上手くできていたせいか、悪くなかった。いわば、1.5人旅だったのかもしれない。
「ということは……」
 ペッパーなどのロボットが市販される時代になったら、彼らを旅行の友にするのがいい。ひとりは淋しいから、誰も相手にしてくれなくなったときに便利である。自分が話したいときだけしゃべり、眠くなったら遠慮なく寝て、勝手気ままに歩き回っても、嫌な顔をせずにつき合ってくれるだろう。
 前言撤回。
 今月号は、他の号より大事にとっておこう。


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 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
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コメント (12)
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