これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

息継ぎコワイ

2016年10月02日 21時40分42秒 | エッセイ
 魚のようにスイスイと泳げるようになりたいが、水泳は苦手だ。
 いや、苦手だからこそやらねば。
 え? イヤだったらやらなくていいんじゃないの。
 でも、日曜日の午後は空いているんだから、今日がチャンスでしょ。頑張らなくちゃ。
 そうだね、空いてるときに、気兼ねなく練習すればいっか。
 スポーツクラブに行く前、プールに入るかどうか一人で悩んでいた。10mくらいなら泳げるが、どうにも息継ぎが下手で、25mは厳しい。20年以上前に夫に平泳ぎを教えてもらい、一時は50m泳げるようになったのに、その後サボっていたせいか元に戻っていた。2週間前、プールに入ったら、息を吐くことも忘れていたし、手足の動きがちぐはぐで全然前に進まない。苦しくなって、何度も足をついてしまった。
 自転車だったら、乗り方を忘れることはないだろう。しかし、水泳はそういうわけにいかないようだ。20年前と違って、筋力も体力も落ちている。果たして、私は魚になれるのか。
 いや、どうせだったら人魚になろうと欲が出てきた。リトルマーメイドのアリエルのように、美しく泳ぎたい。
 勇気を出してプールサイドにたどり着く。平日18時以降は混むようだが、日曜の12時以降は予想通りガラガラだ。ウォーキングレーンに3人、レッスンレーンに2人、片道レーンに1人いるだけだから、私がどんなにゆっくり泳いでも迷惑はかからない。
 キャップの上のゴーグルを下げる。私が小学生のとき、ゴーグルは使わないのが普通だった。時代が変わり、今はゴーグル着用が一般的である。初めてゴーグルを着けたとき、水の中の景色が全然違うのに驚いた。塩素で目が痛くならないし、視界がクリアでやる気が出る。外見はブサイクになるが、周りもみんな同じようなものだ。第一、鏡を見なければわからないからどうでもいい。
 小学生のときからゴーグルの威力を知っていれば、10mしか泳げないまま大人にならずにすんだかもしれない。もったいないことをしたと残念に思う。
 実は、フォームの修正のため、手足の動きを練習してきた。テニスや野球では素振りをするのだから、水泳でも素かきをすれば上達するに違いない。部屋に座布団を敷き、腹這いになって手足を連動させて動かす。娘や夫からは変な目で見られたけれど、プールで恥をかくよりはずっとマシだろう。伸ばして曲げて頭を上げて息継ぎ、と繰り返す。イメージトレーニングもできたし、これで大丈夫と根拠のない安心感を持った。
 そんなことを思い出し、ザブンと片道レーンの往路に飛び込んだ。
 家で練習した通りに体を動かすと、20年前に夫から教わったことが浮かんできた。
「あ、息継ぎの頭が上がり過ぎてる」
 水から頭を出すときは、最小限の高さに抑えるんだっけ。頭を上げすぎると足が下がり、速度が落ちると言われたおぼえがある。力は入れない。力まず両手を伸ばし、縮めて水をかくときに息継ぎ。ゴールは遠いが、徐々に近づいてきた。この調子、この調子。
 アリエルにはほど遠く、葉っぱか何かが水流に乗って動いている程度の泳ぎだが、どうにか25mを泳ぎ切った。心臓の鼓動は速い。続けて泳ぐだけの体力はないから、ジャグジーで少々休んで復路に向かう。復路も、ノロノロながら足をつかずに泳ぐことができた。結局、3往復だけで終わったことは内緒にしておこう。
 まずは水に慣れることが大事と悟った。週イチは泳いでスピードを上げ、人魚を目指さなくては。
 自分にノルマを課すことも必要だ。
「よし、背泳ぎができるようになるぞ!」
 なぜ背泳ぎなのか。
 息継ぎをしなくていいからでーす!


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 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
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コメント (12)
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