これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

貴婦人になりたい

2016年07月31日 20時49分10秒 | エッセイ
 ボーナスが出たはいいが、まだ何にも使っていない。
 7月最後の週末である。デパートまで出かけることにした。
「えっと、長袖のブラウスはどこだ?」
 ナラ・カミーチェというブランドが好きなので、手ぶらで帰るまいという覚悟で店に行ったが、商品の半分は半袖である。欲しいものは見つからなかった。
 買い物は、理屈ではないと思っている。「ピピッ」とくる商品があれば買うし、なければ買わない。今すぐ必要、というものでない限り、妥協することはない。早々にブラウスをあきらめ、秋になったらまた来ようと決めた。
 次にやってきたのは靴売り場。さすがにサンダル類が幅を利かせているが、それぞれに個性があって面白い。宝探しのつもりで、素敵な商品はないかと目を走らせていた。
「ん?」
 アナスイの棚で目が止まる。フェミニンで、ヨーロッパの雰囲気をまとったサンダルがあったからだ。アンティーク調の装飾と、貴婦人のような佇まいに「ピピッ」どころか「ピピピピピピッ」ときた。
 好きなカテゴリーのど真ん中に、直球を投げ込まれた感覚である。さっそく足を入れると、ちょっとキツい。でも履ける。若い子用の商品らしいが、このサイズなら大学2年の娘にも合うだろう。共用にすればいいやと考えて、買うことにした。
 欲しいものが買えると、帰り道も足取りが軽い。ドトールでお茶を飲んだあと、元気いっぱいで家に着いた。
「ジャジャーン」
 玄関でアナスイの箱を開けてみると、先ほどの貴婦人が顔を出した。



 ヒールがオシャレ。



 ロココ調? ちょっと細いけれど、華奢なデザインに惹かれる。



 後姿の優雅なことといったらない。
 しかし、途中でお茶を飲んだのがいけなかったのか、家に着いたら足が入らない。
「うそっ、何で?」
 ストッキングを履けば入らないこともないが、きゅうくつで息苦しい。これでは長時間歩くことは無理だろう。幅広の足は、貴婦人に拒否されたのかもしれない。
「……いいや、ミキにあげよう」
 残念ながら、娘へのプレゼントとなってしまった。ガクッ。
 しょんぼりしてサンダルを箱に収納していたら、目の前を大きな蚊が通って行った。叩こうとしたが逃げられ見失う。そのうち、左手の肘の近くがかゆくなってきた。
「わっ、刺された~!」
 貴婦人に夢中になっているところに、やぶ蚊が忍び寄っていたようだ。卑怯なヤツめ。ムカムカしながら、プクリと赤く盛り上がった部分にムヒを塗る。
 泣きっ面に蜂ではなく、泣きっ面にやぶ蚊である。
 いいことは何もなかった。
 まあ、そんな日もあるさ。


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コメント (8)
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