これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

1泊83万円ナリ

2016年06月12日 22時24分58秒 | エッセイ
 最近、ありきたりのディナーでは物足りなくなってきた。
 食材や価格だけでなく、そこでしか味わえないものがないと面白くない。何か、興味を引くものはないかと探していたら、東京ステーションホテルの館内見学付きフレンチディナーというものを見つけた。
「えっ、あの格式高いホテルを見学できるの? 行きたい、行きたい」
 日程は限定されているが、ちょうど都合のつく日があり、申し込んでみた。
「えーと、17時に4階アトリウムに集合か」
 この日は20人くらいだったろうか。女2人というのは私たちくらいで、夫婦やカップルでの参加が多い。開始まで、ソファーに腰かけて待つよう勧められる。



 茶を基調とした館内は、落ち着きがあって大人のムードである。食事も大事だが、雰囲気も非常に重要だ。始まる前から「これは期待できそうだぞ」という予感があった。
「お待たせいたしました。まずは南側のドームからご案内いたします」
 ホテルスタッフについて3階に下り、廊下を歩いていくと、ところどころに愛らしいアレンジメントか飾られていた。細部まで気配りが感じられる。
 さて、東京駅は工部大学校を最下位の補欠で入学し、首席で卒業した我が国を代表する建築家、辰野金吾氏の作品である。東京大空襲で屋根が焼け落ち、1947年に修復したが、3階建ての部分が2階建てになるなど元通りではなかった。2007年より復原工事が行われ、2012年に現在の姿に至っている。
「こちらからドームをご覧いただけます。壁の色は当時の資料や、白黒写真をカラーに復元する技術から、卵の黄身のような色であったことが確認されています」



 白と黄卵色の組み合わせは、まったく思いつかなかった。レモンパイのようで、見ていると緊張がほぐれ、心にゆとりができてくるから不思議だ。これに茶色が加わると、少々引き締まった印象となって見事に調和する。



「干支のレリーフがありますが、8角形ですので、子、卯、酉、午の4つがありません」
 私の干支は未。ちゃんとあってよかった。



 あとから知ったことだが、干支は方角を示しているのだとか。未は南南西を表す役目をしている。
 姉の干支は巳。こちらが示すのは南南東。



 鷲型、花飾りのレリーフや、秀吉の兜のキーストーンなどの説明もあったが、私は全体を一つの単位として見るのがいいと思った。
「本日は、ロイヤルスイートルームが空いておりますので、このあとご案内いたします」
「ほー」
 ドームのあとは、173平米という広さを誇るロイヤルスイートルームの見学である。



 まず、目に飛び込んでくるのが黄色の椅子だ。



 たとえ会議でも、心が弾むに違いない。



 ソファーはグレーだが、クッションにはやはり黄色の刺しゅうがあしらわれている。



 天井には、4階のアトリウムで見たシャンデリアとよく似たデザインの照明が下がっていた。



 この統一感が素敵だ。
 壁際の調度品にも、高級感がある。





 社長席のようなデスクもあり、面白半分に座ってみた。



 貫禄ゼロだな、こりゃ。
「メモ帳をご覧ください。こちらには川端康成、内田百聞といった文豪も滞在されていたので、原稿用紙となっております。よろしければどうぞ」



「あっ、本当だ! すご~い」
 人間の性で、つい枠の中に収めようとして文字を書くかもしれない……。
 椅子に腰かけたり、トイレや流しをのぞいたりと、かなりの時間を過ごしたような気がする。バスルームやベッドルームは見られなかったが、この部屋の空気を吸うだけでリッチな気分になれた。
「ちなみに、こちらは1泊83万円でございます」
「うわぁ~」
 ツアー客から悲鳴が上がる。8万3千円だったら泊まりたいのに残念だ。
 ロイヤルスイートルームのあとは、北側のドームを見学してアトリウムに戻る。いよいよディナーの始まりだ。ちょうどお腹もすいてきた。
 前菜。パテがイチ押し。



 スープ。コクのある味。



 甘鯛のポワレ。皮がカリカリで身はふんわり。



 黒毛和牛のローストビーフと牛タンのシチュー。ソースが絶品。



 しかし、一番気に入ったのはデザートだ。
 ヴァニラ香るマフィンココット焼 ストロベリーソース
  キャラメル風味のアイスクリーム添え



 しっとりふんわりのマフィンが、適度に甘くフルーティーで、アイスクリームとの相性も抜群にいい。
 ラストまで手を抜かない構成に脱帽である。
 美味しかった、楽しかった。
 また来よう。


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コメント (10)
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