これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

3世代女子会墓参り

2016年05月22日 21時45分59秒 | エッセイ
 母方の祖母が亡くなったのは、昭和49年の今日だった。
 祖母の墓は高尾の某霊園にあるが、夫の父もたまたま同じ墓地で眠っている。一度に2件の墓参りをすませようと考え、母と一緒に出かけることにした。
「え、墓参り? ミキも行ってみようかなぁ」
 義父の納骨の際、娘もかの霊園に同行したが、幼かったため記憶がないそうだ。義母が認知症になって以来、義父の墓参りは滞っている。ランチを餌に誘ったら、娘も来ることになった。
「でも、明日の1限に提出する課題ができてない……」
「帰ってきてからやったら?」
「結構難しいよ。問題が変だし。休講になればいいのに」
「そう上手くいかないでしょ」
「まあいいや」
 今日は天気もよくてラッキーだった。
 中央線に揺られながら、祖母の記憶をたぐりよせる。祖母が亡くなってすぐに、父の弟から電話がかかってきたという。
「今、靴ひもが急に切れて、胸騒ぎがしたんだけど、何かあった?」
 いわゆる「虫の知らせ」である。なぜ娘や息子ではなく、娘の夫の弟などという縁の薄い相手なのかは不明だが、父は背中に氷を入れられたようなゾクゾク感を味わったらしい。祖母を看取った母が病院から帰ってくると、誰も通っていないはずの門や玄関が開けっ放し。理屈では説明のつかないことが、いくつか起きていた。
 生前の祖母は、笑った顔しか見せない人だった。孫に甘くて、母がダメということも祖母ならOKになる。お菓子も買ってくれるし、いつでも公園に連れて行ってくれる。私にとっては、願いを叶えてくれる魔法使いのような存在だった。
「高尾、高尾。終点です」
 高尾駅には花と線香の販売所があり、とても便利だ。母と落ち合い、まずは義父の墓へ行く。3人で墓石をピカピカに磨き上げ、娘は満足そうだった。
 次に、祖母の墓に向かう。この墓には祖母だけでなく祖父、夭折した母の姉も眠っているので、お供えは3人分用意しておいた。
「ひいおばあちゃん、はじめまして」
 こちらもキレイに掃除してから手を合わせる。ひ孫が来たから、祖母は喜んでくれたかもしれない。結婚して家を出てから長い間、ろくに墓参りをせずに申し訳なかったと詫びた。母も年々老いてくるので、これからは命日や彼岸のたびに同行するつもりだ。
「じゃあ、お昼にしよう」
 新宿まで戻り、小田急百貨店の14階へ行く。初めて行く店だが、ネットで見た雰囲気がよかったので予約を入れた。
「ライスとパンのどちらになさいますか」
 私と娘は「パン」と即決したが、母はなかなか決められない。年とともに優柔不断になったようだ。
「じゃあ、最初はパンで、お肉料理のときは少な目のライスということでいかがですか」
「ああ、それいいわね」
 店員さんが、とっさに機転を利かせた。両方食べられるということと、気をつかってもらえたということで、母は大いに満足したようだ。こういう店ばかりだとありがたい。



「じゃあ、今度は9月ね。また連絡するよ」
「はいよ。じゃあまたね」
 手を振って母と別れた。次は姉も誘ってみよう。
「ああ、課題やらなきゃ……」
 家に着くと、娘がブーブー言いながらパソコンを開いていた。ついでに休講情報などもチェックしたらしい。すぐにドタドタと音を立て、台所に駆け込んできた。
「お母さん、明日の1限が休講って書いてある!」
「マジ!?」
 なるほど、願い事があったら、墓参りをするのがいいかも……。


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 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
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