これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

遠いボトル

2016年04月14日 21時41分42秒 | エッセイ
 20代の頃は白ワインが好きだった。
 30代半ばから、赤ワインのポリフェノールに惹かれて鞍替えしたが、40代後半の今はシャンパンやスパークリングワインなどの泡ものにはまっている。
「ねえ、ワインテイスティングの会があるって。招待状もらったから一緒に行かない?」
 だから、姉からの誘いは実に魅力的で、何を置いても行かねばという気持ちにさせられた。

「いらっしゃいませ。本日、テイスティングできるワインのリストです」」
 担当者のゴツゴツした指から差し出された紙片には、ドイツ、フランスはもちろん、アメリカ、チリ、オーストラリア、南アフリカ、イタリア、ハンガリーなど、多数の国名が載っている。これは楽しめそうだ。
 リストには50種類ものワインが書かれていたが、強力な動物的嗅覚が働き、一瞬にして欲しい商品を見つけた。
「泡ものがあるわよ」
 すかさず姉に耳打ちする。
「どこどこ? あっ、本当だ。飲みたいわねぇ」
 この会にはつまみが出る。担当者はプレートとワインのボトルを準備し始めた。
「じゃあ、まず白からでいいですか」
「あのう、泡ものからがいいです♪」
 姉と2人で、ハモるように頼んでみる。あとから知ったことだが、テイスティングなどでは泡ものは最後に出すのが定番らしい。濃度が高いので、万一酔ってしまうと、そのあとの味見ができなくなるからだ。
「……じゃあ、泡ものから行きましょうか」
 ゴリ押ししたわけではないけれど、売り上げに関わらないと判断されたようで、私たちのささやかな要望は受け入れられた。
 カヴァとシャンパン2種を飲み、ノクターンという商品を買う。ほどよい甘味と舌の上で踊る口あたりが気に入った。ロゼのスパークリングワインはおまけらしい。



 今度こそ白。8種類飲んだ中で、イタリアの「I Frati」という読めない名前のワインは、酸味と甘味のバランスがよくピカイチだった。迷わず注文する。



 最後に赤。姉はガバガバ飲んで何やら買ったようだが、13種類試しても、私には欲しいものがなかった。好みは年々変わっていくのだろう。還暦を迎えたら、焼酎命になっていたりして。
 この会のいいところは、ひたすらワインの味見ができるところである。好きなら買えばいいし、イヤならスルーできる。
「もう一度飲みたいものがあればご遠慮なくどうぞ」
 つまり、おかわりも可というわけだ。
「他に飲んでみたいものはございますか?」
 リクエストもできる。私はドイツワインが好きなのだ。これを買わずして帰れるはずもない。
「この甘口の白は、まだ飲んでいませんよね」
「そういえば、甘口がお好きでしたね。じゃあ、ドイツ2種とハンガリー2種をお試しください」
 また飲む。ボトルがオシャレで、ほどほどに甘くてしつこくない、ピーロート・ブルー・アウスレーゼというドイツワインを買った。



 結局、私と姉が飲んだワインは27種類で、グラス2杯半ほど。一度に、こんなに何種類もの酒を飲むことはないから、お酒だけでなく、非日常感にも酔いしれる。
 テイスティングに使ったグラスはおみやげ。ウシシシ。



 今月早々に届いたが、実はまだ飲んでいない。
 年度始めとあって仕事が忙しく、猫の手も借りたいほど。



 涼しい場所に保管してあるボトルが、遠く遠く霞んで見える……。
 早く飲みたいよー!


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コメント (8)
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