これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

クリスタルで祝う新年会

2016年01月03日 15時44分06秒 | エッセイ
 新年あけましておめでとうございます。
 今年もよろしくお願いいたします。



 毎年、元日は親族との新年会である。
 料理は、姉や妹、母とダブらないよう事前に相談し、それぞれが作ったり買ったりして持ち寄るが、今年はニューフェイスが加わった。
「ミキも作りたい!」
 大学1年の娘も名乗りを上げ、「玉子豆腐」で参戦することになったのだ。少し手伝ってあげたけれど、ほとんど一人で完成させた。



 表面のツブツブは、インスタントのだしを使った証拠である。



 母が手抜きなので、それがスタンダードになっているのだと反省した。
「こんばんは~」
 妹の家に着くと、義弟が一生懸命牛肉を焼いていた。今日は休みが取れたようだ。
「あけましておめでとうございます」
「あけましておめでとうございます」
 身内といっても、こういう場での挨拶はきちんとするのが習わしだ。両親や姉夫婦はすでに来ていたので、これで全員集合となる。準備ができたところで、シャンパン係の姉が立ち上がった。
「今年は、クリスタルってシャンパンのロゼにしたわ。ロシア皇帝の愛したシャンパーニュって言われているのよ」
「わあ、すごーい! きれいなラベルねぇ」



 姉がボトルを掲げると、いっせいに歓声があがった。コルクを抜けば、宴会の始まりだ。
 クリスタルは、甘味と酸味のバランスがとれていて、絶妙の口あたりである。ゴクンと飲みこめば、フルーティーな風味が喉から立ち上ってくる。後味スッキリで実に美味しい。ロシア皇帝でなくても虜になりそうだ。
「玉子豆腐いただきまーす」



 73歳の母が、さっそく娘の料理に箸をつけた。
「うん、美味しいよ!」
 様子を見ていた義弟も、玉子豆腐の器を取り上げる。
「ミキちゃん、美味しくできてる」
 口々に褒められて、本人は少々照れているようだった。実は、切り分けたあと、型から取り出すのが大変だったのだ。フライ返しを借りて、四苦八苦した舞台裏をチラリ。



 誰もが絶賛したクリスタルがなくなったあと、私はバッグに忍ばせてきた「ゆずとジンジャーの梅酒」というボトルを開けた。やたらと甘くてドロドロしているところが好きなのだ。
「あっ、この梅酒、南高梅を使っているぞ。もったいないなぁ」
 ラベルを目にした義兄が驚きの声を上げた。彼は、南高梅は梅干しにするのが一番だと思っているようで、妙な梅酒に加工されるのが気に入らないらしい。
「南高梅か、道理で美味しいと思った」
 原材料には無頓着だった私も、まじまじと眺めてみた。そこに妹が、したり顔で割り込んでくる。
「ちょっとちょっと。なんこうばい、じゃなくて、なんこううめ、が正しいんだって」
「えっ、本当?」
「音読みが続いたあとに訓読み? おかしいでしょ」
「あはは、変~」
 いわゆる、重箱読みというヤツか。ひとつ利口になったかも。こんなことでも盛り上がるわが親族……。
 姉はチーズを何種類か持ってきてくれた。
「この白いチーズ、マイルドでいいね!」
「それはパルミジャーノ。粉状にするとパルメザンだよ」
「あれか! 道理で馴染みのある味だと思った」
 義弟の焼いたステーキは、適度に脂がのっていて軟らかく、何度も箸を往復させた。ステーキソースもあったが、粗塩におろしたての山葵を添えていただくのが最高!
 妹は、ペコロスとよばれる小玉ネギを使った料理を用意していた。やわらかく煮たペコロスに、肉みそをかけていただくと、体が温まる。これはかなり好評だった。
「うわあ、この料理、初めて食べた。美味しいね」
「玉ねぎが軟らかいし、肉みそもいい味」
 たぶん、妹が作った唯一の料理と思われるが、これは大ヒット。私も真似しなくては。
「奈津、ご飯は炊いてあるの?」
 母が疑惑のまなざしを妹に向けた。クリスマス会では、おにぎりを作ろうとしたとき、お釜がからっぽだったことを心配しているのだ。奈津は、思い出し笑いをこらえながら答える。
「今日は大丈夫。もう炊いてあるから」
「そう? ならよかった」
 母は、おあずけを食らう破目にならないとわかり、ホッとしたようだ。
「じゃあ、次はグリューワインね。温めるから鍋貸して」
 話題が途切れることなく、新年会は続いていく。23時半を回った頃、ようやくお開きとなった。
「ごちそうさまでした。おやすみ~」
 帰りの車の中で、新年の抱負が浮かんできた。
 今年は、昆布とかつおぶしから、だしがとれるようになるぞ~!


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コメント (12)
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