これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

日光ニコニコハイキング(3)

2015年09月10日 20時14分38秒 | エッセイ
 湯元温泉でバスを下りる。「日帰り温泉」の旗がヒラヒラ揺れて誘ってくるが、私たちは温泉寺に行きたいのだ。
「ああ、温泉寺でしたら、そこの石灯籠の先です。すぐですよ」
 案内所で道を教わり、寺を目指す。
「あったあった」



 ここはお詣りもできるし、温泉にも入れるという、全国でも珍しい寺である。素通りするわけにはいかない。まずは本堂に向かった。
 カラカラと鈴を鳴らし、欲張ってあれこれお願いする。お賽銭は5円しか入れていないのに、図々しい。
「あっ、おみくじがある」
 2種類のおみくじがあった。ひとつは血液型別のおみくじで、「本気ですか?」と言いたくなった。うさん臭くて、当たる気がしない。もうひとつは、天然貴石入り開運みくじ。お守りになりそうだからと、こちらを選んだ。



「よかった、吉だよ!」
「あら、アタシも~」
 姉妹がケンカしないように、仏様が気をつかってくれたのかもしれない。天然石はアラゴナイト(霰石)で、学業成就、社交良好に導いてくれるようだ。早速財布に入れ、物覚えの悪い頭が少しでもよくなるように祈る。



「じゃあ、お風呂お風呂」
「混んでいるかな」
 他人様のブログを拝読すると、混雑していてイモ洗いのようだったと書いてあった。おそらく、運が悪かったのだろう。



 呼び鈴を押し、500円払うと、浴室に案内してくれる。温泉施設と違い、バスタオルは自分で用意しなければならないし、貴重品を入れるロッカーもない。小さな袋に財布を入れ、風呂場に持ち込んだ。
 悪天候が幸いしてか、先客は1名である。しかも、ちょうど上がるところであった。
「貸し切りだ~」
「よかったね」
 気兼ねなく、乳白色の浴槽に身を沈めた。湯温は44度とかなり熱いが、ここは我慢。浸かったところの血管がブワッと広がって、血液がタッタッタッと走り出す。サニブラウン・ハキーム君くらいの速さだ。指先から肩や腰まで、ぐるぐるぐるぐる駆けめぐる。
「うーん、いい湯」
「気持ちいいね~」
 熱い風呂は苦手な私でも、ここの湯には入れた。肌にピリピリした刺激がないからだろうか。サニブラウン君が何周も走ってくれたので、体の芯まで温まった。
 しかし、バスの時間が迫っており、ゆっくりできない。ほどほどのところで上がり、着替えはじめる。脱衣所を出るところで、また次のグループがやってきた。仏様の時間調整は巧みだ。誰もいなければ、彼女たちも喜んで入れるだろう。
 石燈籠の道を戻り、バス停に着いた。
「楽しかったね」
「また来ようね」
 わずか7時間の滞在だったが、思い出は2泊3日分。
 熱い風呂も悪くない。
 
(追記)9月9日から10日にかけて、この日光市では50年に一度の記録的大雨が観測され、栃木県・茨城県に特別警報が発令された。また、鬼怒川沿いでは堤防が決壊し、家屋や工場が流されるなどの大惨事が起きている。
 助けを待つ方が、一刻も早く、無事救助されますように。
 また、一日も早く、元通りの生活ができるようになりますように。


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 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
 「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
コメント (6)
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