これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

煎餅愛

2015年04月09日 21時10分59秒 | エッセイ
 オーブントースターの扉を開けると、つられるように、焼き網が体を伸ばした。思ったより、幅が広いことを確認し安堵する。
 昨年、どこぞの学園祭でアツアツの焼き立て煎餅をいただき、でき立ての香ばしさから煎餅愛が芽生えている。たまたま生協のカタログに、「オーブントースターで3分焼いてできあがり」という煎餅生地が載っており、勢いで買ってみた。



 ところが、落としぶたのようにバカでかい生地が届き、「大きいけど入るかしら」と困惑していたところである。でも、これなら何とかなりそうだ。
 袋を開けて生地を出す。5mmほどの厚さがあり、やたらと硬くておしろいを塗ったように白い。舞妓さんのように、赤い口紅が似合いそうだ。中心部には空気抜きと思われる穴が、6か所開いていた。



 焼き網に生地を載せ、扉を閉める。そそくさと、網が奥に引っ込んだ。あとはツマミを3分にセットして待つだけだ。ほんわかと、餅の焼けるようないい匂いが漂ってきた。
 チ~ン。
 もう一度、扉を開けて驚いた。先ほどの色白な舞妓さんは、日焼けサロンで小麦色に変身しているではないか。平板な生地が膨らみクレーターに似た凹凸が出現すると、まん丸のお月様に見えてきた。



 刷毛で醤油を塗ると、月はジュッと声を上げた。「もっと優しく塗りなさいよ」と叱るみたいに。それではと丁寧に重ね塗りをして、褐色のお月様に変身させる。



「ねえ、焼き立て煎餅食べる?」
 夫と娘に勧めてみたが、「いらない」と冷たく断られた。煎餅愛を抱いているのは私だけなのだろうか。醤油を塗って塗って塗りまくっても、パリパリした歯ごたえがたまらないのに。
 月のウサギが餅をつく、という伝説は嘘だ。
 本当は、うるち米をついていて、煎餅を作っているに違いない。


    ↑
クリックしてくださるとウレシイです♪

※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
 「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
コメント (16)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする