これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

クリスマスパーティー(1)

2014年12月21日 20時40分15秒 | エッセイ
 キリスト教徒の友人に招かれて、教会のクリスマスパーティーに参加した。
「会費は2000円で、それ以外に500円以上のクリスマスプレゼントを持ってくることになっているんだけど、いいかしら」
「えっ、ディナー込みで2000円なんですか? お得だわ~」
 私は信者ではないが、参加者の中には議員や医師、大学教授などもいるそうだ。日頃、私は学校という狭い社会しか知らないので、異業種交流のチャンスである。渡りに舟とばかりにお願いした。
 小学生の頃、日曜学校に通っていたので聖書は持っている。讃美歌も歌える。でも、高学年になるにつれ友達は来なくなり、私も行かなくなってしまった。神社でお祓いしてもらうこともあるし、お寺を巡るのも好きだから、キリスト教に縛られたくないという気持ちがあったのかもしれない。
 クリスマスパーティーは2時から開始であった。まずは、信者である弁護士が「神に救われた」話をする。彼は、何十年も前に土地の売買に関する訴訟を抱えていた。しかし、結果は敗訴。依頼人の元には売れない土地が残り、にっちもさっちも行かない状況に陥る。神に祈り、救いを求めると、妙な噂が聞こえてきた。どうやら、問題の土地のあたりに地下鉄が延びるらしい。そこで、解決の糸口を求めて地下鉄と交渉したところ、すでに、かの土地が駅の出入口となっていることがわかり、高値で売れたそうだ。
「アーメン」
「ハレルヤ」
 信者たちから感嘆の声が上がる。依頼人が大損する寸前で、起死回生の売却劇が起きたのだ。まさに神がかり的な大逆転。私も奇跡だと思う。
 スペシャルゲストとして、Dr.チャールズ・ムリガンデ駐日ルワンダ共和国大使も登場した。クリスチャンの人脈は幅ひろい。
 大使は1958年生まれというから、56歳なのだろうか。品のよい茶のスーツを着こなし、若々しく見えた。また、動作の一つひとつが洗練されており、足を組むという仕草だけでも絵になった。大使もご夫人も、スラリとして背が高く、8頭身である。エグゼクティブのオーラを身にまとい、講演が始まる前から聴衆の視線を釘付けにした。
 ルワンダという国はフランス語圏のようだが、大使は英語でスピーチをした。私のように、英語ができない者のために通訳がつく。幼少時代に内戦が起こり、ブルンジ共和国に逃れたこと、ヨーロッパで数学の博士号を取得し、アメリカの大学で学生の指導にあたっていたこと、1994年に祖国で大虐殺が起きたことなどを静かな声で話す。それまで、アメリカでご夫人と何不自由のない暮らしをしていたのに、大虐殺を機にすべてを投げ打ち、ルワンダ再建を目指して活動されたそうだ。
 最初は、キリスト教徒ではなかったという。学生時代の友人たちが信仰している様子を見て、「頭がおかしい」と思ったらしいが、徐々に関心を持ち信者になった。駐日大使となり、この場にいることも「神のおぼし召し」であると締めくくった。同行した夫人の、民族衣装がエキゾチックで目を引いた。
「みなさん、お食事の準備が整いました」
 講演のあとはディナーが待っている。サンドイッチにチキン、パスタ、コロッケ、サラダ、ビーフにポテトなどなど、温かい料理が並んでいた。食べながら、銀行勤務の女性や牧師、議員、大学生などと話をした。「ぜひ教会のほうにもいらしてくださいね」と声をかけてもらうと、一度は行ってみようという気になる。気さくで、飾らない人ばかりだった。
 食事のあとは、キャンドルに点火し、明かりを消して「きよしこの夜」の合唱だ。
「きーよし」
 なかはた、と続ける元同僚がいたことを思い出す。若い人にはわからないだろうが。
 キャンドルを消したら、ケーキとクリームブリュレが登場した。デザートタイムは、プレゼント交換の時間でもある。自分のプレゼントの番号札を誰かと交換し、交換した番号をまた誰かと交換するのだ。換えるときには挨拶をして、コミュニケーションを深めることになっている。私は4人と交換し、おしゃべりもすることができた。いいアイデアだ。
「では、お帰りのさいに、出口で番号札のついたプレゼントをお持ち帰りください」
 開始から7時間ほど、聞いて見て、祈って食べて話してと、充実したクリスマスパーティーだった。
「少しは楽しかった?」
 帰り道で、友人が気をつかって尋ねてきた。
「ええ、とっても楽しかったですよ。いい人ばかりですね」
 彼女はホッとしたように続けた。
「そうなの、みんないい人よ。あとは、砂希さんはもの書きだから、ネタになればいいと思って」
 ちまちまとエッセイを書いているだけの私を「もの書き」と言ってくれるのは彼女くらいだろう。その言葉が私にとっては、一番のクリスマスプレゼントだった。
 家に着き、プレゼントの包みを開けてみる。
「わあ、マグカップだ~!」



 メリークリスマス!


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コメント (14)
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