これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

富士山をキレイに

2014年07月20日 22時00分45秒 | エッセイ
 先日、富士山清掃ツアーに参加してきた。
 途中、談合坂ではぶ厚い雲が空から見下ろしていたが、掃除という目的に配慮したようだ。ポツポツと雨粒を感じたものの、すぐにやんでくれた。



 スペシャルゲストに、アルピニストの野口健さんがいて、地元の環境NPO「富士山クラブ」とともに、作業前の事前学習をしてくれた。
 野口さんは、2000年頃から富士山の清掃活動を始めたそうだ。当時は、産業廃棄物から粗大ゴミ、飲食物の容器などがあふれていたという。樹海には、タイヤ1800本が捨てられ、挙句の果てには自動車までが置き去りにされていた。写真から、予想を超える惨状を知り、驚くばかりである。
「これは、今年の写真です」
 そこには、道路に転がったペットボトルが写っていた。容器のラベルは水であるが、中には黄色の液体が見える。本来は、トイレに流すべきものが入っているのだ。ペットボトルで用を足すのは個人の自由だけれど、それを道端に捨てていくのは問題である。こんなボトルが20本も30本もあると聞き、眉間にシワが寄った。
 富士山は、世界遺産に登録された際、同時に宿題を課せられている。これが果たせないと、登録が取り消される可能性もあるというから、簡単な話ではない。提出期限は2016年2月1日。何とか解決できるとよいのだが。
「では、作業現場に出発します」
 私はてっきり、ハイカーが残した飲食物の容器や、タバコの吸い殻などを拾って歩くのかと思っていた。黄色いペットボトルがあったらどうしようと心配していたが、富士山クラブの方の説明は想定外であった。
「この土の下にはゴミが埋まっています。悪質な業者が、細かく砕いたゴミを捨て、それを隠すために上から土をかぶせています。すでに逮捕されていますが、ゴミはそのままなので、掘り出す作業をお願いします」
 うへえ。なかなか大変そうだ。
 スコップを借りたが、地面は硬い。捨てられてから、かなりの時間が経過しているようで、結構な力が必要だった。どうにか地面に穴が開くと、ガラス片、割れた瓦、陶器の欠片などが出てきた。これを分別して、集積場まで持っていく。
「これはプラスチックだから、燃えるゴミでいいんだよね」
「これはコンクリみたい」
 同行した2歳上の姉と相談しながら、慎重にゴミを分けていく。タイル、変形したカーテンレールなども地面から出てきた。雨どいと思われるものも埋まっている。



 ゴミの種類から、家を取り壊した際の廃棄物なのではと感じた。相当な量がありそうだ。
「おや?」
 スコップが、大き目の白い陶器片を掘り当てた。緩いカーブを描く形状から、洋式便器の一部とわかる。
「…………」
 これは、ちょっとしたショックだった。軍手の上からとはいえ、できれば触りたくない。しかし、神聖な富士山の麓にあるのはもっと悪い。まったくもって、不法投棄はけしからん。
「30分経ちました。休憩してください」
 適宜水分補給をしたら、また続きをやる。徐々に慣れてきて、掘り出すコツや、分別の基準がわかってきた。宝探しのように、大きなゴミが出てくることを期待して、スコップを動かす余裕ができる。
 現場には数十人ほどいたが、和気あいあいとして雰囲気がいい。「富士山をキレイにしたい」という共通の想いがあるからかもしれない。90分ほど作業をしたら、これだけのゴミが回収できた。







「みなさん、お疲れ様でした。今日はどうもありがとうございました」
 残念なことに時間が来てしまった。
 作業は決して楽ではなかったが、もう少し続けたい気持ちがあった。地面の下には、まだまだたくさんのゴミが埋まっているのだろうから。早く元通りになってほしい。
「いい経験ができたね」
「ホントだね」
 姉と言葉を交わし合う。知らない参加者たちも「来てよかった」と話していた。
 ほんのわずかでも、大好きな富士山の役に立てれば幸せだ。


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 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
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