これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

2014 父の日

2014年06月15日 21時24分16秒 | エッセイ
「今年の父の日、何あげる?」
 3日ほど前に、高3の娘が小声で相談してきた。
「何もあげなくていいんじゃない。母の日、もらってないもん」
「え? そういうもんじゃないでしょ」
「あ、そういえば、父の日カステラだけは買ってある」
「じゃ、それで。あと、小銭入れなんてどう? 今使ってるやつ、ボロボロだよ」
 三者面談のついでに、娘とデパートで品定めすることになった。
「ボックス型の、口が広いやつにするんでしょ」
「そうそう」
 女の子は観察力がある。こちらが言わなくても、相手が喜びそうなプレゼントを選ぶのだ。
「ねえ、これでいいんじゃない? 安いし」
「……」
 ついでに、財布のひもも堅い。
 担任をしているクラスの女の子たちは、父の日にサプライズを用意しているのか、気になった。
「もう下校の時間だよ。早く帰りなさい」
「はーい」
 その日、教室に残っていたのは、化粧の濃いマキとスカートの短いナナミだった。帰り支度をしているところで、さきほどの疑問をぶつけてみる。
「父の日には、何か用意してるの?」
「うん。今年は、コロンとパスケースにしたよ」
「ナナミはね、入浴剤にした。パパはお風呂しか楽しみがないから」
「へー、えらいね」
 見た目が派手な女子高生も、ちゃんと親への感謝の気持ちがある。いい子に育ってくれてよかった。
 そして、いよいよ父の日がやってきた。
 夕食にステーキとケーキを食べたあとは、プレゼントタイムだ。
「お父さん、これ」



 娘が包みを渡すと、夫はパッと顔を上げ、大きな声で「ありがとう!」と答えていた。ひょっとすると、一年間で一番うれしい日なのかもしれない。
「開けていい?」
「いいよ」



 きゅうくつな箱を飛び出して、真新しい小銭入れが「こんにちは」と挨拶してきた。結構いい感じだ。
 ふと、那須の父を思い出した。
 考えてみると、いつも夫ばかりに目が向いて、父に何年もプレゼントをあげていない。親不孝を後悔し、急いで電話をかけてみる。
「あ、お父さん、久しぶり。父の日だから、電話してみた」
「何だ、わざわざ悪いな」
「今日は何もないんだけど、誕生日にはまたお菓子を贈るね」
「楽しみだ」
 残念なことに、子どものときから、父とは会話が続かない。すぐ娘にバトンタッチして、孫との会話を楽しんでもらった。
「じゃあ、じいちゃん、また9月に会おうね」
「うん」
「バイバイ」
 時間にして1、2分である。それでも、かけないよりはいい。
 来年は、夫だけでなく父にも、プレゼントを贈らねば。
 安いのでいっか~。


    ↑
クリックしてくださるとウレシイです♪

※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
 「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
コメント (10)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする