これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

クラス替え攻防戦

2014年04月13日 21時07分04秒 | エッセイ
 私の高校では、1年から2年に進級するとき、クラス替えをする。
「まず、選択別に成績順にして、機械的に分けましょう」
「あとは、クラスで偏りがないように修正すればいいわね」
「オーケー」
 クラス替えの作業は、3月末に担任団で実施する。遅刻や欠席の多い生徒、ハメを外しやすい生徒などが、特定クラスに集中しないよう全員で確認していく。
 生徒同士の相性もあるので、数人集まると騒がしくなるメンバーは解体し、バラバラにすると不登校になりそうなグループは一緒にする。
 問題は、どの生徒からも煙たがれるやんちゃ坊主の扱いである。クラス替えの前に何人もの生徒から、この問題児を何とかしてくれという直訴があった。
「絶対、アイツと同じクラスにしないで。大事な画像消されて、チョームカついた」
「俺なんか、パズドラのデータ消されたんだよ。しばらく立ち直れなかった」
「アタシも、デブってバカにされて傷ついた」
「俺もやだ。飯食いにいくと、必ずおごれって言うし」
 教員の目の届くところでも、授業中立ち歩く、私語が多いなどの問題行動があり、いくら注意しても直らない。まさか、金品の絡むトラブルまであったとは。
「アイツ、調子に乗りすぎ。ユウヤと同じクラスにすればいいよ」
 被害生徒の一人が、思わぬことを口にする。3組のユウヤという男子は、どちらかといえば小柄で、模範生ではないが目立つ生徒でもない。どうも納得がいかなかった。
「何で、ユウヤなの?」
「ユウヤは、区で一番ケンカが強いんだよ。だから、アイツも、ユウヤにだけはペコペコするもん」
「へえ……」
「アイツ、前にユウヤから『うるせえよ!』って怒鳴られたことあるから、ビビってるんだ」
「そうなの」
 クラス替えのとき、そんな話をしたら、誰もが「本当ですか?」と怪しんでいた。教員には、ユウヤよりも問題児のほうが強そうに見えたからだ。自信はなかったが、他にいい方法もない。まあ、ためしにやってみるか、と見切り発車してみた。
 もし、これがガセネタだったら、学級崩壊は目に見えている。言いだしっぺとしては、他の先生に怒られるのが怖い……。
 そして、いよいよ、クラス替えの初日を迎えた。
「静かでした」と新担任の20代青年が、問題児の様子を口にする。ユウヤとは口をきくこともなく、ひとりで席に座っていたそうだ。
 その翌日も「おとなしかったです」、そのまた翌日も「別人のようです」とのことである。
 週末には授業が始まり、他の先生からも、「ひと言もしゃべりませんでした」と驚かれた。
 担任団もビックリである。ひとまず、「ユウヤ作戦」は成功した模様だ。
「すご~い! こんなにうまくいくなんて」
「ユウヤ様々ですね」
 てか、教員はいらない!?


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 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
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コメント (12)
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