これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

人間国宝展

2014年02月20日 21時18分31秒 | エッセイ
 人間国宝展のチケットをもらった。
 2枚あったので、同じ職場の素子さんを誘う。あれこれ忙しくて、終了間際になってしまったが、先日ようやく見ることができた。



 平日だったけれども、予想以上の人出である。
「人気なのねぇ」
「ですね」
 素子さんは同い年だが、タイプが全然違う。私は読書を好む文化系、素子さんはバドミントンをきわめた体育系だ。おそらく、異性の好みもかぶらないと思われる。
「壺に花器ですって」
「すてきね」
 しかし、芸術品へのあこがれは共通していた。銅鑼や印箱などを見ては、それぞれのコメントを口にする。彼女の感想は、的を射ているものばかりだった。
 すぐに、日本刀が並んでいる一角にたどり着く。
「わあ、かっこいい!」
 素子さんが、目を大きく見開いて、ガラスケースに突進した。
「日本刀って、魅力的ですよね」
「そうですね」
 刃にライトが当たり、人工的な輝きを放っている刀たち。殺気なのか、妖気なのかわからないけれど、人を惹きつける何かがあることは間違いない。彼女ほど熱心ではないが、私も細身の刀身から、目が離せなかった。
 刀の次は、あでやかな振袖が待っていた。
「あっ、キレイ!」
 今度は私が突進する番だ。
 特に気に入ったのが、「一越縮緬地鳳凰桐文振袖」と書いてある、この衣装である。大胆な図柄とまばゆい色彩に魅かれて、ポストカードも購入した。



 形から、アジの開きを連想したとあっては、作者に失礼だろうか……。
「こっちもいいです。白縮緬地衝立鷹模様ですって」
 こちらもポストカードをゲット。白と赤を背景に、鷹がいきいきと描かれている。



「……」
 素子さんは、やたらと口数が少なくなっていた。私のはしゃぎように、少々引いていたようだ。
 好みが違うのだから仕方ない。
「私はもっと素朴な柄の方がいいかな……」
 そうでしたか。
 陶芸や染織などが続いたが、どれも魂が入っているかのような仕上がりである。渾身の作とは、このようなものを差すのだろうか。
 リーフレットの写真からは伝えきれない、作者の熱い想いを受け止めた気がした。



「何だ、お前、どけ!」
 いきなり、年配男性のものと思われる、下品な大声が聞こえてきた。
 すぐさま、これまた高齢らしき女性の声が応戦する。
「どけとは何です。私が先にいたんです。どきませんよ!」
「俺が先だ」
「いーえ、私が先です!」
 どうやら、小さな展示品をめぐって、場所の取り合いをしているようだ。一刻を争うものでもないのに、いい年こいて、一体何をしているのかと呆れた。
「みっともない」
「やめてほしいですね」
 私も素子さんも、警備員に止められる二人に、冷たい視線を浴びせかけた。
 
 作品の中には、「80歳のときの作品」などと書かれたものもあった。好きなことをしていると、いつまでも若々しくいられるのかもしれない。「生涯現役」は、私の目標のひとつである。見習いたいものだ。
「いい展示でしたね」
「ホント、満足満足」
 上野動物園わきの店に入り、ピザとビールで乾杯した。とろけたチーズがやけに美味しい。

 人間国宝にはなれないけれど、文化財くらいにはなりたいな……。

 この先の人生は、目標を高く持って生きたい。


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 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
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コメント (8)
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