私は埼玉県出身である。
郷土愛が手伝って、埼玉県のイベントには参加したくなる。
「次の土曜日は、鴻巣の花火がありますよ。今年は四尺玉も上がるので、すごいですよ」
同僚からそう聞き、行ってみたくなった。
しかし、鴻巣は熊谷の手前だから、都内からだとかなり遠い。どうせならと、埼玉に住んでいる高校時代の友達2人に声を掛けてみた。
「えっ、鴻巣で花火大会やるの? 知らなかった」
「アタシも知らなかった」
さほど有名ではないようだが、四尺玉に惹かれ、彼女たちも来るという。現地で落ち合うことにした。
10月12日。打ち上げ開始は6時半からだ。観覧場所までは駅から20分ほどだが、改札の大混雑で足止めを食らい、トイレの行列に並び、すっかり遅くなった。
ドーン、ドドーン、バリバリバリバリ……
轟音がとどろき、すでに始まったようだ。
角を曲がり、民家が切れたところで、花火が大きく見えた。
「おおーっ!」
どこにでもついてくる高2の娘が、歓声を上げる。打ち上げ場所から近いのか、隅田川より大きく見える気がした。
「もう疲れた。その辺で座って見ちゃおうよ」
「それもそうね」
民家に阻まれ、低い位置の花火は見えないが、河川敷まで行く気力がない。私たちは、駅から5分ほどの路地で立ち止まり、花火を眺めた。
「へー、すごいじゃん」
今年の隅田川は30分で終わったから、穴埋めする気持ちで見ていたのだが、こちらもなかなかのものである。
人魂のような光が、ふらふらふらーっと天に昇っていく。これが上空にたどり着くと、大きな花を咲かせるのだ。
同じことを考える人も多く、路地にはたくさん人が集まってきた。
誰もが空とにらめっこし、人魂が上がるとカメラを構えていた。
彩の国さいたま、を代表するように、鴻巣の花火は色鮮やかだ。
人魂が4つも5つも同時に上がり、花の競演も見事である。
1時間ほどして、友人2人が合流した。
「鴻巣の花火って初めてだけど、いいねこれ」
「写真撮らなきゃ」
彼女たちもスマホを取り出し、熱心に撮影し始めた。
半分ほど見たら帰る人もいるようで、会場から駅に戻る人波ができている。これからが本番なのにと、不思議に思った。
8時15分あたりから、いよいよクライマックスだ。
無数の人魂が上がっては開き、上がっては開きを繰り返す。
「うわぁ~!!」
百花繚乱、豪華絢爛、などの四字熟語が浮かんでくる。これでもか、これでもかと連発されたお花畑で、空は昼間のように明るい。これは、隅田川も真っ青の迫力である。
最後に、ひときわ大きな花火が、尋常ではない輝きを放ち、力強い軌跡を描いていった。
放送は聞こえないが、これがきっと四尺玉なのだろう。
花火大会のラストを飾るのにふさわしい、大物の登場であった。
「はー」
「はー」
友人も娘も、しばらく言葉が出てこない。
圧巻の幕切れに、私の魂まで上がってしまったようだった。
「……よかったね」
「うん、よかった」
ようやく口がきけるようになり、4人で駅に向かう。
来年は、荒川まで行かねばと誓った。
埼玉県出身でよかったなぁ。
↑
クリックしてくださるとウレシイです♪
※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
郷土愛が手伝って、埼玉県のイベントには参加したくなる。
「次の土曜日は、鴻巣の花火がありますよ。今年は四尺玉も上がるので、すごいですよ」
同僚からそう聞き、行ってみたくなった。
しかし、鴻巣は熊谷の手前だから、都内からだとかなり遠い。どうせならと、埼玉に住んでいる高校時代の友達2人に声を掛けてみた。
「えっ、鴻巣で花火大会やるの? 知らなかった」
「アタシも知らなかった」
さほど有名ではないようだが、四尺玉に惹かれ、彼女たちも来るという。現地で落ち合うことにした。
10月12日。打ち上げ開始は6時半からだ。観覧場所までは駅から20分ほどだが、改札の大混雑で足止めを食らい、トイレの行列に並び、すっかり遅くなった。
ドーン、ドドーン、バリバリバリバリ……
轟音がとどろき、すでに始まったようだ。
角を曲がり、民家が切れたところで、花火が大きく見えた。
「おおーっ!」
どこにでもついてくる高2の娘が、歓声を上げる。打ち上げ場所から近いのか、隅田川より大きく見える気がした。
「もう疲れた。その辺で座って見ちゃおうよ」
「それもそうね」
民家に阻まれ、低い位置の花火は見えないが、河川敷まで行く気力がない。私たちは、駅から5分ほどの路地で立ち止まり、花火を眺めた。
「へー、すごいじゃん」
今年の隅田川は30分で終わったから、穴埋めする気持ちで見ていたのだが、こちらもなかなかのものである。
人魂のような光が、ふらふらふらーっと天に昇っていく。これが上空にたどり着くと、大きな花を咲かせるのだ。
同じことを考える人も多く、路地にはたくさん人が集まってきた。
誰もが空とにらめっこし、人魂が上がるとカメラを構えていた。
彩の国さいたま、を代表するように、鴻巣の花火は色鮮やかだ。
人魂が4つも5つも同時に上がり、花の競演も見事である。
1時間ほどして、友人2人が合流した。
「鴻巣の花火って初めてだけど、いいねこれ」
「写真撮らなきゃ」
彼女たちもスマホを取り出し、熱心に撮影し始めた。
半分ほど見たら帰る人もいるようで、会場から駅に戻る人波ができている。これからが本番なのにと、不思議に思った。
8時15分あたりから、いよいよクライマックスだ。
無数の人魂が上がっては開き、上がっては開きを繰り返す。
「うわぁ~!!」
百花繚乱、豪華絢爛、などの四字熟語が浮かんでくる。これでもか、これでもかと連発されたお花畑で、空は昼間のように明るい。これは、隅田川も真っ青の迫力である。
最後に、ひときわ大きな花火が、尋常ではない輝きを放ち、力強い軌跡を描いていった。
放送は聞こえないが、これがきっと四尺玉なのだろう。
花火大会のラストを飾るのにふさわしい、大物の登場であった。
「はー」
「はー」
友人も娘も、しばらく言葉が出てこない。
圧巻の幕切れに、私の魂まで上がってしまったようだった。
「……よかったね」
「うん、よかった」
ようやく口がきけるようになり、4人で駅に向かう。
来年は、荒川まで行かねばと誓った。
埼玉県出身でよかったなぁ。
↑
クリックしてくださるとウレシイです♪
※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)