これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

気まずいコメント

2013年09月05日 19時53分39秒 | エッセイ
 夏休みが終わり、2学期が始まった。
「通知票を持ってきた人は出しなさ~い」
 1学期の終わりに渡した通知票は、親の印とひと言をもらって学校に提出することになっている。
「忘れました」
「じゃあ明日」
 9月5日になっても、全員分はなかなか揃わない。
 中には、親に見せないまま2学期を迎える生徒もいる。ほとんど親子で話をすることがないから、「通知票を見せなさい」とも言われないらしい。そんなことでいいはずがない。



 同僚は、ある女子生徒から、怪しい通知票を受け取った。
「先生、このコメント、パパが書いてくれたんだよ~」
「へー、お父さんが?」
 彼女から通知票を受け取り、中を開けてみると、子どものような字が見える。読んでみたら、目が点になった。
「予想以上に成績がよかったので安心しましたwww  これからもがんばってもらいたいです!」
 エクスクラメーションマークがひときわ大きく書かれているばかりか、wwwまで通知票に書く親がいるだろうか……。思わず、ポロリと言葉がこぼれ落ちた。
「これ、本当にお父さんが書いたの?」
「えっ、そうだよ~!」
「……ふーん」
 まさか、この子は通知票を見せていないのでは。
 だいいち、「パパが書いてくれた」と断るあたりがわざとらしい。自分で書いて、もしくは友達に書いてもらって、それを提出したのかもしれない。
 しかし、決めつけはよくないと考え直し、それ以上は言わなかった。言わずとも、背後には思いっきり「疑り」オーラが出ていたようだ。教室を出て、職員室に向かったところで、さきほどの女子に呼び止められた。
「先生、今パパに電話してるの。ちょっと待って」
「えっ、電話?」
「あ、パパ? 先生がね、本当に通知票にコメント書いたのかって聞きたがってるよ。はい、先生」
 いきなり彼女からスマホを渡され、同僚は動揺した。
「あ、あの、担任の○○です。どうも、は、はじめまして」
「いつもお世話になっております! アヤナの父親です。はじめまして」
「いえあの、その、通知票に、ずいぶんお若い文が書かれているなって思ったものですから」
「ははは、ボク、若いんです。まだ30代ですから」
「ああ、そうだったんですか。失礼しました」
「いえいえ」
「ははは。じゃあ、アヤナさんに代わりますね」
「はい、今後ともよろしくお願いします」
「ははは、こちらこそ」
「ははは」
 同僚は、ひきつった笑いを浮かべたまま、彼女にスマホを返した。

 同僚は私と同年代だ。今の親の世代とは、大きな隔たりがある。
 なにやら、自分がひどく年老いた気がしてきた……。


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 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
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コメント (14)
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