これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

左目ゴロゴロ

2013年08月01日 18時53分33秒 | エッセイ
 何日か前から、左目の異物感を感じていた。ゴロゴロした感じが、どうにも不快である。

 どうしようかな……。

 その日は土曜日だった。用事があり、昼過ぎには出かけなければならない。でも、午前中なら空いている。
今、眼科に行かなければ、月曜まで治らないのだ。重い腰を無理やり引っ張り上げ、私は駅前に向かった。
「あのう、初めてなんですけれど」
「じゃあ、問診票の記入をお願いします」
 痛みはない。視界も悪くない。異物感と少々の充血があるだけだ。
 ただ、徐々に耐え難いレベルに近づいているから、何とかしてほしい。
 
 また、あれかな……。

 思い当たる節はあった。私は結膜結石ができやすい体質らしい。あかんべえをすると、白くて小さなできものがあり、これが悪さをするのだという。



 子どものときから、ときどき眼科で除去してもらっていたが、ここ何年かは放置している。
 おそらく、また復活したのだろう。
「笹木さん」
 ようやく順番が来たようで、名前が呼ばれた。
 医師は若い女医であった。問診票を片手に、予習をしている。
「今日は、目がゴロゴロするんですね」
「はい。結膜結石ができやすいと言われたことがあるので、それかもしれません」
「では拝見しましょう」
 まずは、下まぶたからだ。
「ああ……。いっぱいありますね」
「でも、ゴロゴロするのは上なんです」
「上?」
 医師は、下まぶたから手を離し、上まぶたをひっくり返した。
「……こりゃ、ゴロゴロするはずだわ」
 自分では、上まぶたの奥が見えない。どのくらいの結石ができているのかわからないが、相当な数に上るようだ。
「全部は取り切れませんけど、やってみましょう」
 彼女は点眼麻酔を私の目に注すと、メスを持って結石を取り始めた。
「これが気になるなぁ」
「もうちょっとなのに……」
 診察は孤独な仕事なのだろうか。彼女は独り言を連発し、結石と格闘している。
 5分後、ようやく結石退治にめどがついたらしい。医師は疲れた顔をして、椅子に座り込んだ。
「これでゴロゴロしなくなると思いますが、まだいくつも残っていますから、気になったら来てください」
「はい」
「右目はどうかしら」
 医師は、右目のまぶたを裏返し、結石ができているかを確認した。
「こっちは何もないです」
「へ?」
 なぜか、私の結膜結石は、左だけと決まっているらしい。
 実に不思議だ……。
 子どものとき、和田慎二さんの『左の眼の悪霊』という漫画を読んだことがある。
 私の場合は、「左の眼の治療」だなと、つまらないことを考え、あやうく滑りそうになった。



    ↑
クリックしてくださるとウレシイです♪

※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
 「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
コメント (12)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする