これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

初めてのマラーホフ

2013年05月26日 21時27分16秒 | エッセイ
 上野・東京文化会館で、「マラーホフの贈り物 ファイナル!」を観てきた。



 プロのバレエ鑑賞は初めてだ。大ホールは5階席まであり、大きさにびっくりした。
 私が座ったのは、1階席である。チケットをくれた友人は、「一応、オペラグラスを持って行ってね」と教えてくれたのだが、どこにしまったのかわからない。見つかったのは、バードウォッチング用の双眼鏡だけだ。「これではちょっと」と気兼ねして、結局手ぶらで行った。肉眼だけで、十分に見える席でラッキーだった。
 周りを見渡すと、やたらと細くて姿勢のいい人ばかりだ。バレエの経験者なのかもしれない。年配の女性も目立っていた。私の隣にいたのも、お年を召した女性の方だったが、マスクにストール、ひざ掛けが手放せない様子だった。たしかに、空調が効きすぎており、私もジャケットを着たままで席についた。
 まずは、「シンデレラ」からだ。いつも不思議に思うのだが、彼らはどんなに高く跳んでも、着地の音が聞こえない。ステージからは、トゥ・シューズと床のこすれる「キュッ」という音が、かすかに聞こえるのみだ。普通の人だったら、「ドスドス」「ズシン」と騒々しいに違いない。簡単そうに見えて、決して真似できないだろう。きっと、マラーホフは、踏み台昇降をしても、一人だけ「ドンドンドン」と言わなかったと思われる。
 相手役の、ヤーナ・サレンコという女性も印象的だった。ネコ科を思わせる柔軟性と、しなやかな動きが美しい。きっと、400mハードルをやっても、ひらりひらりと優雅に飛び越え、汗ひとつ見せずにゴールするのではないか。
 第一部の最後、「ライト・レイン」もよかった。バレエという種目には、手足の長い人が向いていると聞くが、これに出ていたルシア・ラカッラという女性が、まさにそんなタイプだったのだ。伝統的なチュチュではなく、東南アジアを思わせるエキゾチックなコスチュームが、彼女の手足の長さを引き立てていた。
 たとえるならば、ナナフシといったところだろうか。華奢な手足がクネクネと動き、足など頭の横にペタリとついてしまう。体中から妖しい色香を放ち、すっかり魅了されたところで、第一部が終了した。
 休憩を挟んで、第二部が始まる。ここでは、東京バレエ団が登場し、また違った雰囲気が楽しめる。
 しかし、40分ぶっ続けは長い。初心者の私は、途中で眠くなってしまい、不覚にも意識を失ってしまった。ラストは何とか持ち直し、他の観客と一緒に拍手をすることができた。

 いかん……。

 せっかくチケットをいただいたのに、寝てしまっては申し訳ない。二度目の休憩では、眠気覚ましにコーヒーを飲むことにした。コーヒーは1杯400円。価格の割には、結構おいしかった。ワインなどのアルコールもあったが、飲んだらさらに眠くなる。遠慮して正解だった。
 第三部が一番よかった。ロマンティックな「ロミオとジュリエット」、元気いっぱいで爽やかな「タランテラ」、「椿姫」と続いている。
 圧巻は、「白鳥の湖」より“黒鳥のパ・ド・ドゥ”である。昔、バレエ漫画で読んだことのある、「グラン・フェッテ」という技を見ることができた。軸足だけを支えに、駒のように何回転もするなんて、まったく驚きである。会場からは、地鳴りのような大きな拍手が起きた。
 ラスト、マラーホフの「ヴォヤージュ」はよくわからなかったが、周りから「ブラボー」などと声が上がっていたので、きっとすごいのだろう。
 と、いい加減な批評をするしかない。
 すごいといえば、観客の去り方も半端ではない。まだ、マラーホフたちが舞台であいさつをしているのに、席を立つ客が何人もいる。「あれあれ、いいの?」と目を丸くしてしまった。シビアというか何というか。
「見るもの見たし、もういいわ」という感じで、振り返りもせず去っていくのだ。
 一方で、フロアに残っている人たちは熱い。拍手だけでなく、一人二人、十人二十人と立ち上がり、両手を上げて出演者に拍手を送っている。
「み、見えない……」
 舞台が人の背中で埋め尽くされた瞬間、私も席を立って出口に向かうことにした。
 いやあ、初のマラーホフ、堪能させていただきました!
 でも、ファイナルってことは、最後なの?


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コメント (12)
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