これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

鳩さん怖い

2013年04月21日 20時05分59秒 | エッセイ
 その日、私は娘の保護者会に参加するため駅にいた。
 手早くお昼をすませて、電車に乗らねばならない。昼食時はどこも混んでいるが、ミスタードーナツは空いていたので、「肉そばにしよっかな~」と考えながらドアをくぐった。
 好物のエビグラタンパイを半分食べたところで、注文した肉そばが運ばれてくる。この手早さがありがたい。早速、「いっただきま~す」と箸をつけた。男性には少々物足りないだろうが、細い麺と控えめな量が気に入っている。
 しかし、そこからがいけない。
 入口近くの家族連れが、大きな声で店員を呼んだ。
「すみませーん、鳩が入ってきたんですけどー!」



 見ると、一羽の土鳩が、店内の端を歩いている。「あれっ、変なとこに入ってきちゃったぞ」と気づいたようで、かなり焦り気味だ。
 カウンターから、若い男性店員が歩いてきた。が、「俺に任せろ!」という様子はみじんもなく、目はオドオドとせわしなく動き、足取りも重い。いかにも頼りない雰囲気である。
 鳩は危険を察知したようで、羽を広げるやいなや、バサバサバサと飛び始めた。
「ああっ!」
 食べ物の上を、鳩が飛び回っている……。
 何とも、非衛生的な光景である。だが、私は急いでいたので、「こっちに来るなよ」と念じながら、ひたすら食べ続けていた。
 店員は、バックヤードに戻り、段ボールを持ってきた。さきほどよりは、やる気が感じられる。しかし、狼狽した鳩はやみくもに飛び回り、段ボールに収まる気配はない。
「怖いよ~!!」
 小学生低学年とおぼしき少女が、母親にすがって泣き叫んでいる。これには驚いた。
 男性店員もこの少女も、なぜか鳩を恐れているのだ。もし、私の子どもだったら、「鳩ごときで泣くなッ!!」と一喝するところだが、そうではなかった。この母親は、「○○ちゃん、大丈夫よ」などと背中をさすっている。
 イライラする……。
 若者の弱さに、日本の将来を悲観した。
 鳩は疲れ、だんだん飛べなくなってきた。ゼイゼイと肩で息をしている。今がチャンスだ。しかし、手づかみという発想はないようで、店員は段ボールを離さない。ようやく鳩の上からかぶせ、そのままドアまでひきずって、何とか外に出すことができた。
 これにて一件落着。
 あとは店員が、鳩が飛び回っていた間、食べられなかったドーナツや麺類の交換を申し出ていた。まあ、妥当な判断だろう。
 そんなこんなで、タッチの差で電車に乗り遅れ、保護者会に遅刻したことが悔しい……。


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