これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

風のいたずら

2013年04月14日 20時18分28秒 | エッセイ
 風の強い日が多い。
 ゴミのポリバケツが飛ばされ、フタが見当たらなかったり、コンビニの買い物袋が宙を舞ったりするから、いいことはほとんどない。
 一方で、ミニスカートの女性や、制服の女子高生のスカートが強風にあおられ、チラッと中が見えてしまったときには、「今日はいい日だ」と思う男性がいるかもしれない。
 強風とセットで思い出すものがある。
 小学6年の社会科見学だ。春だったのか、冬だったのか。よくおぼえていないが、その日は日傘が壊れそうなほどの強い風が吹いていた。
「国会議事堂に着きました。バスから降りなさい」
 担任は、30代後半から40代前半くらいの男性だったが、いつも髪を九一分けにしていた。
「七三分けならわかるけど、何であんなに極端なのかなぁ」
「ハゲてるんじゃない?」
「髪の下はどうなっているんだろうね」
 口の達者な女子たちは、よくそんなことを言っていたものだ。
 生徒が全員下車し、担任も降りてきた。国会前の、キレイに整備された歩道は、入口まで結構な距離がある。



 先頭を行く担任のあとをついていったら、ひときわ強い風が吹いてきた。おそらく、背の高い建物が多いからだろう。
「ねえ……見て」
 隣の友達が、担任の頭を指さしている。指の先に目をやると、いつもガッチリ固められている九一分けのてっぺんが、風の力で揺らぎ始めていた。もしやもしやと期待していたら、少女たちの願いを叶えるように、ビュウッと大きな音がした。
「ああっ!!」
 一陣の風が、特攻隊のごとく担任の頭上に襲いかかる。刹那、ポットのフタのように、髪がパカッと持ち上がった。
「キャーッ」
 女の子たちの悲鳴と、けたたましい笑い声が同時に起きる。フタの下は、思った通り髪がなかった。しかも、地肌が見えることを恐れてか、てっぺんが黒く塗られていた。まさか、靴墨ではないと思うけれども、何を使っていたのだろう。
 まもなく風のいたずらが終わり、パタンとフタが閉じられる。担任は、頭上の問題にまったく気づかなかったのか、終始、涼しい顔をしていた。加齢とともに、髪が後退するのは仕方ないのだから、隠す必要はないと感じるのだが。
 以来、強い風が吹くと、私は国会議事堂を思い出してしまうのだ。
 昨日は、スライスしたゴボウを天日に干していた。夕方、取り込みに行くと、半分ほどに減っている。乾燥し、軽くなったゴボウが、強風に飛ばされたらしい。
 まったく、風が強いとろくなことがない。


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コメント (16)
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