これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

巨大モンシロチョウ

2013年03月21日 21時36分23秒 | エッセイ
 先月から化粧品を替えた。
 新しいものは、口座引き落としで支払いができない。コンビニでできるからと、私は郵便振替を指定した。
 ところが。
 うっかり支払いを忘れ、ひと月経った先日、ようやく払込用紙に気がついた。
 おそるおそる、記載事項を確認する。
「支払期限  3月4日」

 やばッ!!

 あわてて、問い合わせ先に電話をかけた。
「用紙はまだ使えますので、今から振り込んでいただければ結構です。」
 受話器の向こうのお姉さんが、慣れた口調で答えてくれた。支払期限を守らない客は、私を始めとして、かなりの数に上るのではないか。ひとまず、現金片手に、コンビニに急いだ。
 そこから一番近いのは、サークルKサンクスだった。私は払込用紙を取り出し、裏面の「利用可能なコンビニ」に入っているかを見ようとした。
 しかし。
 裏返した瞬間、正面からの突風に見舞われ、用紙を吹き飛ばされた。
「ああっ!」
 用紙は風に乗り、私の体にぶつかったあとで、真上にひらひらと浮かんだ。まるで、巨大なモンシロチョウだ。らせんを描くように、時計回りに回りながら空へと近づいていく。
 万事休す。
 ブロ友さんが、上野の、とある展示に並んでいたとき、強風にチケットの半券をもぎ取られたと書いていた。「そんなことがあるのか」と驚いたが、それは甘かった。何しろ、こちらは丸ごと奪われてしまったのだから。
 羽化したばかりの蝶が、初めて得た自由に酔い、どんどん遠くへ飛んでいく。これは困った。また電話をし、「風に飛ばされたので、新しい払込用紙を送ってください」などと言ったら、「ホントかよ」と呆れられそうだ。
 ポカンと口を開けて、風と戯れるモンシロチョウの行方を見届けていたら、急に動きが止まった。糸の切れた凧のように、プツリと失速し、今度は下に落ちてくる。真下ではなく、カーブを描いて、私の胸元に飛び込んできた。
「ありり」と思わずのけぞった。払込用紙は、手元から天高く舞い上がったあと、ブーメランのように戻ってきたのだ。風のいたずら、としか言いようがない。わけがわからなかったが、大変幸運だった。
 おかげで、予定通り払い込みを完了することができた。
 読者の方から、「そんな展開、信じられない。創作ですか?」と尋ねられることがある。私のエッセイは事実のみだ。多少の誇張はあっても、フィクションではない。
 これも、まぎれもない真実。
 執念が、念力を生んだのかもしれない。


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 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
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コメント (16)
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