これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

ホコリ高き部屋

2013年02月07日 21時33分57秒 | エッセイ
 私が勤務している高校では、学級担任が自分のクラス、担任外は特別教室や階段の掃除監督となる。教員全員が、自分の役割をきっちり果たせば、学校はピカピカだ。
「うっ、汚い!」
 しかし、今年、私が割り当てられたパソコン室は、何年掃除をしていないのかと思うくらい汚れていた。カーペットには髪が散乱し、積もり積もったホコリが苦しそうによじれ、踏み入れた足を引っ込めたくなる。
 さて、どうやって掃除をさせよう。掃除機を使うと、はめ込み式のカーペットが剥がれてしまった。これではダメだ。
「コロコロがあればいいのに」
 生徒がアイデアを出してきた。なるほど、それはよさそうだ。しかし学校にはない。事務室に購入を頼むことになるが、公費を使う立場上、事前に申請していない物品は難しい。
「どうしても必要なら検討しますけど、ひとまず、あるものでやってみて下さい」
 担当から突き放され、ガムテープを一巻与えられる。「何とみみっちい……」と私は苦笑した。20cmほどに切って床に触れると、髪の毛や綿ぼこりがゴッソリくっつき、ウールのセーターのようだ。2、3回繰り返せば、ウールがさらに育ち、もはや粘着力は残らない。
「なにこれ、すごいゴミ。こんな教室で授業やってたんだ」
 生徒も、あまりの惨状に仰天し、まずは自分の席からきれいにしようと考える。掃除をさぼりがちな者でも、かなり真剣になり、ジャンジャンガムテープが減っていく。2巻使い切ったところで、再度事務室にお伺いを立てると、いい返事が返ってきた。
「じゃあ、買いましょう。柄の長いタイプを6個でいいですか?」
「はい、よろしくお願いしま~す!」
 二日後、待ちに待ったコロコロが届けられた。これで、ようやくパソコン室がきれいになるに違いない。
「あれ? 短い……」
 だが、それは、柄の長いものではなかった。担当者が、言い訳がましく付け加える。
「しゃがんだほうが、床がよく見えて掃除しやすいでしょう?」

 ……絶対、値段の安いほうにしたんだ!

 相変わらずのセコさにムッとしたが、贅沢は言えない。買ってもらえただけでも、ありがたく思わなければ。
「わあ、コロコロだ!」
 生徒は喜び、並んで順番に手を伸ばす。ほうきや雑巾は嫌がるのに、遊び感覚で掃除できるものなら受け入れるらしい。転がしながら走り回り、楽しそうに体を動かしていた。
 遊べたのは一瞬で、また問題が発生する。
「先生、髪の毛が邪魔でシートが剥がせない」
 長い髪が何本も取れたはいいが、粘着シートの切れ目を塞ぐように貼りついている。



「えいっ」と無理に剥がしたら、ビリビリになってしまった。
 八方ふさがりとはこのことか。時間をかけた割に、ゴミの量は減っていない。こうして毎年、汚れが蓄積されていくのだろう。
 そして、来年の担当教員が叫ぶのだ。
「わあ、汚い! 何年掃除していないのかしら!?」と。


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 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
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コメント (14)
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